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世界の食を訪ねて

ご飯の国の人だから。 おにぎりを買ってくれないカンボジア人

もりぞおの『サムライカレー、世界を喰らう!』[第22回]


カンボジア人が一番好きな食べ物。それは、ご飯です。


1年に2回も3回も収穫するほど、稲作が盛んな「米どころ」。主食は当然、ご飯。そして、彼らがご飯を食べる量は、我々のそれとはレベルが違います。


どう違うかというと、ご飯とおかずの割合。

我々が考えるバランスの1.5倍くらいご飯の量が多いのです。


ちなみに、みんなで取り分けて食べるようなレストランの場合、ふつう、ご飯は食べ放題です。一人1ドルくらい払うと、でっかいご飯が盛られたお椀が出てきて何度でもおかわりをすることができます。


カンボジアでは、お米の値段が肉などに比べて格段に安いため、生活の知恵としてこうした配分になっているのかな、などと思うのですが、彼らは「勝手に貧しいイメージつけて、同情するな」といった感じで、みんなガツガツご飯を食べています。


こういう状況なので、日本の小学校とかがたまにやっている「貧しいカンボジアの人たちに、僕たちが作ったお米を送ろう」といったプロジェクトは、実はあまり歓迎されていないように思います。日本からお米を送るのにかかる送料を現金で送ってくれたら、そのお金で肉を買い、それをおかずに地元の米を何杯も食べることができるのです。


さて、そんなごはん大好きカンボジアですので、我々もご飯を売ってみようということになりました。先週ご紹介した唐揚げとのセットでご飯。唐揚げは歩きながら食べられるので、ご飯も歩きながら食べられた方がいいのでは? ということで、日本の伝統文化、おにぎりを提供してみます。



この、おにぎりですが……不評!

一番の不評ポイントが値段。1000リエル(25円)で売ろうとしたのですが「高い!」と言われてしまいました。どうやら彼らにとって、ご飯というのは無料でついてきて当たり前という感覚があるようです。


ただ、あまり安くできない理由もあります。

カンボジアのお米はぱさぱさで、おにぎりのように握るのが難しいのです。そのため、高価な日本米を使う必要がありコストがかさんでしまうのです。そもそも、25円で高いと言われるものを無理に売る必要があるのかという問題があります。


実は、サムライカレーでも、おにぎりは何度も挑戦して、失敗しています。

こんなお洒落なおにぎりを作っても、なかなか食べてくれません。

おしゃれおにぎり


カンボジア人のお客さんが好きだと分かっているのに、ジャストミートなものを提供できないジレンマ。

これに対して、他の店は、どんな対応をしているのか?

いろいろな店をリサーチしてみると、興味深いことがわかります。


まず、ケンタッキーフライドチキン。

ここでは、フライドチキンとご飯がセットになっています。店舗で食べるときにはワンプレートになっているのですが、お持ち帰りの時はどうするのか?こたえは「ハンバーガーの様に紙に包まれて提供される」です。

ハンバーガー風ご飯


セットになっているので、値段はあまり意識されない。家に帰って、お皿に載せて食べるもよし、おにぎりのようにかじるもよしとなかなか便利です。カンボジア人スタッフに聞いたところ、「ふつう、お皿に載せて食べるよね」とのことでしたが。



それでは、歩きながら食べることはしないのか? そう思っていろいろ探したところ、ついに見つけました。


カンボジア人大好き、豚肉を甘辛いたれに浸して、串に刺して焼いたもの。


この屋台は、ご飯をこんな風にして売っているのです。

パックご飯


まさかの、ビニール袋入りご飯。

このご飯は、餅米が混ざっており、適度に粘りけがあり、おにぎりのように固まっています。そして、このご飯を、チューブに入ったアイスのように、ビニール袋からちょっとずつ出して、かじるのです。


ちなみに、こことは別の場所で売っている、日本式おにぎりは1ドル。


このビニール式ご飯は、0.45ドル。

ちゃんと、外国人(主に日本人)向けのおにぎりと、カンボジア人向けのご飯を、価格、提供方法で分けているのでがさすがです。

外国人向けおにぎり


こんな風に、同じ「お米の国の人」でも、その好みは大きく変わってくるのです。


(次号に続く)



【筆者紹介】


森山たつを


早稲田大学理工学部、日本オラクル、日産自動車、ビジネスクラスで世界一周旅行などを経て、日本人が海外で働く方法を研究する「海外就職研究家」となる。


海外就職に関する書籍、記事などを執筆する傍ら、日本人が苦手としている「外国人とのコミュニケーション」「失敗前提でのチャレンジ」「リアルなビジネス」を体験する研修プログラム「サムライカレープロジェクト」(http://samuraicurry.com)を運営。カンボジア・プノンペンにあるカレー屋を使っての研修プログラムは、既に120人以上の卒業生を輩出している。


主な著書に「セカ就!世界で就職するという選択肢」(朝日出版)、「普通のサラリーマンのためのグローバル転職ガイド」(東洋経済新報社)などがある。


連載:もりぞおの『サムライカレー、世界を喰らう』

第1回:カンボジアでカレー屋を作ったら、カンボジア人がカレーが嫌いだということがわかりました

第2回:カンボジア人に「カレーを美味しくしてくれ」と頼んだら、彼女は練乳に手を伸ばした

第3回:カンボジア人が好きなカレーを作るために、カンボジア人の家に突入してみた

第4回:「当店の『たこやき』はイカを使用しております」―カンボジア水産事情

第5回:飲食店泣かせのカンボジア、物価は安いが、原価は高い」

第6回:1日10時間野外労働、時給は115円――カンボジアの屋台店主は生活できるのか?

第7回:アクエリアスは炭酸入り、スプライトは3倍甘い。そして、サムライドリンク!――カンボジア飲料事情

第8回:カンボジア人にモチは売れるのか?スイーツ突撃実態調査!

第9回:シーフードヌードルは、フィリピン人のおふくろの味?

第10回:マニュアル人間は希少人材!?創意工夫が店を滅ぼす!

第11回:世界最大のラーメンチェーン店は、熊本発のとんこつラーメンです

第12回:プノンペンのイオンモールで大人気なのは、回転しゃぶしゃぶ屋です

第13回:アジアの新興都市プノンペンで繰り広げられるチキンレース

第14回:インド人はナンを食べない!?―インドカレー事情

第15回:「草食系」の南インドではカレーも葉っぱにのってくる

第16回:「ファストフードが1時間半待ち!北京オリンピック会場食料事情」

第17回:ブラジルのファーストフード「YAKISOBA」は日系移民の歴史の足跡

第18回:「派手なのがお好き? カラフル過ぎるカンボジア色彩事情」

第19回:「カンボジアでマーケティング調査!プノンペンでわたあめは売れるのか?」

第20回:「カンボジアでわたあめ100本売る方法―モノを売るな、体験を売れ!」

第21回:「50円はOKでも75円はNG? プノンペンから揚げマーケティング講座」

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