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世界の食を訪ねて

アジア新興都市、プノンペンで繰り広げられるチキンレース

もりぞおの『サムライカレー、世界を喰らう!』[第13回]



カンボジアの首都・プノンペンは、日本に住んでいるみなさんが思っているよりも結構都会です。


本稿で何度も紹介しているイオンモールを始め、最新型の建物もたくさんありますし、高い所から見ると、たくさんの高層ビルが建っています。



我々がやっている、サムライカレーはこのプノンペンの街の南方にあります。

北の方を見てみると、この写真のようにたくさんのビルが建ち並んでいますが、南の方を見てみると、遠くに緑地が広がっているのがわかります。




ある日、我々のところにこんなお誘いがありました。

「プノンペンから少しはなれたところにある村に、トランポリンを持っていって子供たちと交流するのですが、サムライカレーのみなさんも一緒にいきませんか?」


彼女らは、Fly Highというユニットとして世界各国でこのようなことをしているのですが、今はカンボジアを中心に活動しています。


ちょうどこの頃、カンボジア人にモチは受けるのか?という調査をしていたサムライカレーの面々。喜んでついていき、そこでもカレーやモチを振る舞い、アンケートをとることにしました。


サムライカレーの店舗から車で20分くらい移動したところにある村へ向かうと、しばらくの間は普通に街だったのですが、ちょっと小道に入るといきなり、緑地が広がっていて焦ります。



繰り返しますが、これ、首都の街中からたったの20分くらいいったところです。

その辺にある小道にちょっとはいると入ると、一気に都会とはかけ離れた、自然豊かな生活が待っているのです。


そんな村のとある家族が住む民家にトランポリンを置いて、子供たちを呼びました。

トランポリンのいいところは、どんな子供でも、なんの練習もなくても楽しめること。ここの子供たちも、初めてのトランポリンをエンジョイしていました。


その隣の家では、我らがサムライカレー部隊が、カレーとモチの準備。さあ、彼らにカレーは受けるのか?


実は、この家を提供してくれたカンボジア人のご家族は日本に住んだことがあり、日本食に慣れています。そんな彼らは我々が提供した日本風カレーをおいしそうに食べてくれます。


「カンボジア人はカレーが嫌い」というのは、DNAに刻み込まれているなにかではなく、慣れれば好きになってくれるのです。


つまり、カンボジアでカレー屋をやりたければ、方法は二つ。一つ目は、カンボジア人に合ったカレーを作っていく方法。二つ目は、徹底的にかたくなに日本のカレーを作り、ちょっとずつカンボジアの人たちに好きになってもらうという方法ですがあるのです。




ただ、いつ好きになってくれるのか、いつお金を払って食べにきてくれるのかが全くわからない中で、長い時間をかけてのチャレンジです。根気と資本力の勝負です。海外で日本の大手チェーン店が、お客さんが入らなくても踏ふんば張り続けているのはこのような戦略からなのでしょう。


さて、話を村に戻します。

この村の名所に子供たちが案内してくれました。それがこの廃墟です。



プノンペン市内から近い緑地。都会の喧噪を忘れたい人たちにとって憩いの場になるのではないかということで、開発されたホテルなのですが、見事に途中でお金がなくなり、廃墟になりました。


この屋上から見る風景が素晴らしい。


おそらく、開発がちょっと早すぎたのでしょう。もうちょっと時期を考えていたら、もうちょっと資金があれば、このホテルも完成し、この村も化けていたかもしれません。

カンボジアのビジネスのおいしさと厳しさは、こういうところにあります。



まだ二束三文の値しかつかない、こういう緑地が都会化するタイミングで、自分の土地にホテルやマンションを建てたり、建てようとしている人に土地を売ったりすることで、巨万の富を得る。そんなチャンスがカンボジア人にはあります。とはいえ、時期を見誤ると、このように廃墟になってしまいます。このタイミングの見極めが天国と地獄の境目なのです。


飲食店でも、カンボジアの人たちが好きになるかならないかの潮目を読み取り、うまくブームに乗ることができれば、一気にカンボジアじゅうで認知され、市場をとることができます。そのために、在住の人たちは、日々、彼らの好みを探るべく、必死にマーケティングをしています。客単価の低さや、保守的な好みに四苦八苦しながらも、歯を食いしばって続ける事で、いつか、自分たちの料理を多くのカンボジア人に食べてもらえるようになる日を夢見て。


ちなみに、我々サムライカレーは、2年半カレー屋をやってきましたが、その方針を見直すことにしました。そして、「カレー」にこだわらない、ゼロベースの店作りをこの夏からスタートします。(詳しくはサムライカレープロジェクトのサイトで説明しています)

ご存じサムライカレー(日本風)
クメールカレー


いったいどんなものが受けるのか、いっそレストランではなくゲームセンターを開いた方がいいのか?といったレベルから考え直します。最終的にひとまわりしてカレーに帰ってくる可能性もあります。



そんな、日々のカンボジアマーケティングの結果を、こちらの連載でもお伝えしていきますので、お楽しみに!




(次号に続く)



【筆者紹介】


森山たつを


早稲田大学理工学部、日本オラクル、日産自動車、ビジネスクラスで世界一周旅行などを経て、日本人が海外で働く方法を研究する「海外就職研究家」となる。


海外就職に関する書籍、記事などを執筆する傍ら、日本人が苦手としている「外国人とのコミュニケーション」「失敗前提でのチャレンジ」「リアルなビジネス」を体験する研修プログラム「サムライカレープロジェクト」(http://samuraicurry.com)を運営。カンボジア・プノンペンにあるカレー屋を使っての研修プログラムは、既に120人以上の卒業生を輩出している。


主な著書に「セカ就!世界で就職するという選択肢」(朝日出版)、「普通のサラリーマンのためのグローバル転職ガイド」(東洋経済新報社)などがある。


連載:もりぞおの『サムライカレー、世界を喰らう』

第1回:カンボジアでカレー屋を作ったら、カンボジア人がカレーが嫌いだということがわかりました

第2回:カンボジア人に「カレーを美味しくしてくれ」と頼んだら、彼女は練乳に手を伸ばした

第3回:カンボジア人が好きなカレーを作るために、カンボジア人の家に突入してみた

第4回:「当店の『たこやき』はイカを使用しております」―カンボジア水産事情

第5回:「飲食店泣かせのカンボジア、物価は安いが、原価は高い」

第6回:「1日10時間野外労働、時給は115円――カンボジアの屋台店主は生活できるのか?」

第7回:「アクエリアスは炭酸入り、スプライトは3倍甘い。そして、サムライドリンク!――カンボジア飲料事情」

第8回:「カンボジア人にモチは売れるのか?スイーツ突撃実態調査!」

第9回:「シーフードヌードルは、フィリピン人のおふくろの味?」

第10回:「マニュアル人間は希少人材!?創意工夫が店を滅ぼす!」

第11回「世界最大のラーメンチェーン店は、熊本発のとんこつラーメンです」

第12回:「プノンペンのイオンモールで大人気なのは、回転しゃぶしゃぶ屋です

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