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世界の食を訪ねて

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プノンペンのイオンモールで大人気なのは、回転しゃぶしゃぶ屋です

もりぞおの『サムライカレー、世界を喰らう!』[第12回]



昭和の日本の街並みが建ち並ぶカンボジアの首都・プノンペンに、突如2010年代モデルのショッピングモールがあらわれた!それが、2014年に開店した「イオンモール・プノンペン」の印象でした。


衝撃の開業から約2年。その存在は、カンボジア国民、プノンペン市民にしっかり認知され、開店数ヶ月後と比べると、ずいぶんたくさんの人が、イオンモールを訪れるようになりました。


イオンモールには大小さまざまなレストランが入っています。日本食はもちろん、中華、韓流、カンボジア料理、インドやタイやベトナム、イタリアン、バーガーキングやピザハットなど世界各国の料理が食べられるのです。


そんなイオンモールで、いつ行ってもお客さんがたくさん入っている店があります。それが、回転しゃぶしゃぶ屋「Shabu Shaubu and Sushi buffett」です。


「回転」「スシ」というのはつながると思いますが、しゃぶしゃぶとは……と思う方が多いと思うのですが、写真一枚で説明すると、こういうことです。


ベルトコンベアに乗って、肉や野菜、海産物が流れてきて、お客さんはそのお皿をとり、手元にある鍋で煮て、食べるのです。

回転しゃぶしゃぶを食べる筆者

ちなみに、店名の通りスシもあるのですが、これは店のすみっこにあるお皿に盛られているだけで、回ってはきません。


実に「回転しゃぶしゃぶ」です。


さて、実際に回ってくるものはどんなものでしょう?例えば私が6月に訪れた時は、こんなラインナップでした。


まず、定番は肉です。


牛、豚、鳥、いろんな肉が流れてきます。


それ以外にも、野菜、貝、麺、餃子など、バラエティーに富んだ食べ物が次々と流れ来ます。


鍋のスープやつけだれも数種類から選べて、バラエティーに富んだ食事が食べられるのがいいところです。


ただ問題は、肉が硬かったこと。

豚や鳥はいいのですが、牛肉は、ガムとゴムの中間くらいの堅さのものが出てきました。

カンボジア人の人に聞くと、「硬い肉でないと食べた気がしません。日本の肉は軟らかすぎます」とのこと。カンボジア人の味覚にあうものを提供しているようです。


ちなみに、スシに関してもなかなか極彩色で、日本のそれとは隔世の感があります。



やけに赤い何かや、やたらマヨネーズが目立つところもそうですが、最大の違いはシャリの酢の味がやたら薄いこと。1年前に来たときはまったく酢が入っておらず、「これはスシじゃない!おにぎりだ!」と激怒したものですが、2016年6月現在、当時よりは少し日本の方向に近づいてきたようです。しかし、日本人感覚で言えば、まだまだスシというよりおにぎりです。


ちなみに、しゃぶしゃぶ&スシの店なのですが、カンボジア人のお客さん向け、カンボジア風チャーハン、焼きそば、春巻きのみんな大好き3点セットをはじめ、各種カンボジア料理およびフライドポテトも用意してあります。



外国料理が嫌いなカンボジア人の人も安心しては入れるようになっているのが素晴らしいです。


これに、ソフトドリンク、果物、アイスクリームまで食べ放題でお値段9.8ドル(約1000円)。日本の感覚ならリーズナブルですね。 でも普段の食事(そして、イオンモール1階のフードコート)が1食1~2.5ドルのプノンペンにしては、かなり思い切ったお値段です。


それでも、午後4時頃という、夕食にはちょっと早すぎる時間帯でもこれだけのお客さん。



休日の食事時などは、150席以上あるにもかかわらず、行列ができていたりもします。


なんでこんなに人気なのか。

もちろん、回転するしゃぶしゃぶというギミックもあるのですが、硬い肉、酢の少ないスシなど、日本人が激怒するようなアレンジを大胆に加え、カンボジア人のお客さんの喜ぶ料理になっているのが一番だと思います。


そして、みんなでご飯を食べるときに「外国料理はイヤ~」という人がいても安心のカンボジア料理コーナーまで作るイタレリツクセリぶり。この徹底した「顧客目線」が、この店の成功要因ではないでしょうか。


さて日本人的にはものすごくおいしかったというわけではないのですが、だいぶ腹も膨れてきたので締めにしましょうかということで、麺を煮ることに。そこで、とんでもないものが流れてきます。


袋入りのインスタントラーメン



普通にスーパーで20円くらいで売っているものです。

これを鍋で煮ると、チキンラーメンみたいで結構美味い!


これも、日本人的にはかなりNGの食材なのですが、カンボジア人(そして東南アジア全般)ではまったくOK。




「現地化」とはなにかを学びたい人は、ぜひこの「Shabu Shabu and Sushi Buffett」を訪れることを勧めます。(まあ、日本的な味覚の人が素直においしいものを食べたいときには他の店がいいかとも思いますが……)


日本で日本風の中華料理、たとえば甘辛いエビチリやとんこつラーメンが生まれたように、東南アジア各地では、このような現地風にアレンジされた日本料理が次々と生まれていることがよくわかるレストランです。


(次号に続く)



【筆者紹介】


森山たつを


早稲田大学理工学部、日本オラクル、日産自動車、ビジネスクラスで世界一周旅行などを経て、日本人が海外で働く方法を研究する「海外就職研究家」となる。


海外就職に関する書籍、記事などを執筆する傍ら、日本人が苦手としている「外国人とのコミュニケーション」「失敗前提でのチャレンジ」「リアルなビジネス」を体験する研修プログラム「サムライカレープロジェクト」(http://samuraicurry.com)を運営。カンボジア・プノンペンにあるカレー屋を使っての研修プログラムは、既に120人以上の卒業生を輩出している。


主な著書に「セカ就!世界で就職するという選択肢」(朝日出版)、「普通のサラリーマンのためのグローバル転職ガイド」(東洋経済新報社)などがある。


連載:もりぞおの『サムライカレー、世界を喰らう』

第1回:カンボジアでカレー屋を作ったら、カンボジア人がカレーが嫌いだということがわかりました

第2回:カンボジア人に「カレーを美味しくしてくれ」と頼んだら、彼女は練乳に手を伸ばした

第3回:カンボジア人が好きなカレーを作るために、カンボジア人の家に突入してみた

第4回:「当店の『たこやき』はイカを使用しております」―カンボジア水産事情

第5回:「飲食店泣かせのカンボジア、物価は安いが、原価は高い」

第6回:「1日10時間野外労働、時給は115円――カンボジアの屋台店主は生活できるのか?」

第7回:「アクエリアスは炭酸入り、スプライトは3倍甘い。そして、サムライドリンク!――カンボジア飲料事情」

第8回:「カンボジア人にモチは売れるのか?スイーツ突撃実態調査!」

第9回:「シーフードヌードルは、フィリピン人のおふくろの味?」

第10回:「マニュアル人間は希少人材!?創意工夫が店を滅ぼす!」

第11回「世界最大のラーメンチェーン店は、熊本発のとんこつラーメンです」

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