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世界の食を訪ねて

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世界最大のラーメンチェーン店は、熊本発のとんこつラーメンです

もりぞおの『サムライカレー、世界を喰らう!』[第11回]


今や、世界中で人気を博している日本のラーメン。

ニューヨークに行ったら大きなバーのような一風堂があり、台北にも市内のキラキラしたところに一風堂がありと、とんこつラーメンを中心に世界各国に進出しているのがわかります。

「一風堂」台北店です


このようなチェーン店でなくても、ドイツやフランスでも個人がやっているようなラーメン屋が人気で、夜中に行列ができているのを見ました。日本のラーメン、偉大です。


このラーメン、皆さんお忘れかもしれませんが、中国から伝わってきたものです。しかし、本場中国に行くと、中国の拉麺(ラーメン)ではなく「日式拉麺」という名前がついて、拉麺とは別の食べ物として人気を博しています。

日本で、カレーライスとインドカレーが別の食べ物として扱われているのに似たような事情ですね。


そんな中国のラーメン屋ですが、日式拉麺を探していると必ず目につくチェーン店があります。

「味千ラーメン」です。



この味千ラーメン、首都圏の人にはなじみがないかもしれませんが、実は、世界最大のラーメンチェーン店です。


関東には茨城県土浦市に1店あるのみ。九州でも、熊本県に50店舗ほどある以外は各県0~2店と、熊本のローカルチェーン店のように見えます。


しかし、世界に目を向けると大変なことになっています。

アメリカ、カナダ、オーストラリア、シンガポールやタイ、カンボジアなどアジアの各地、そして中国にも店舗があります。

これだけの国・地域に進出しているというのもすごいのですが、なかでも中国には500店舗以上あるというのが圧倒的です。

ちなみに、写真は味千ラーメン台北店の写真ですが、ここの2階は、熊本のゆるキャラ「くまモン」をフューチャーしたカフェ「KUMA cafe」。さすが、熊本ラーメン。


味千ラーメン、なぜこれほどまでに世界に展開できたのか?

その謎を探るために、我らがカンボジアにできた味千ラーメンに行ってみることにしました。



王立プノンペン大学のそばにある、味千ラーメンのプノンペン1号店。

かなり大きなお店です。


そして、ドアを開けると、この日一番の驚き。


スーツとネクタイの店長がお出迎えしてくれます。


ラーメン屋といえば、店主が作務衣とかTシャツとかでお出迎えしてくれるのが我々の常識。しかし、ここの店長は、一流レストランのようなスーツとネクタイなのです。


日式拉麺発祥の地、日本出身の我々からしてみれば非常に不自然なこのお出迎えも、カンボジアのラーメンの状況をみると分からなくもありません。





味千ラーメンのラーメンは一番安いもので4.95ドル(約500円)。だいたいお客さん一人あたり7~8ドル前後(約700~800円)のお勘定になります。東京のラーメン屋と変わりませんね。


つまり、最低月収140ドル(※ただこれは縫製工場の労働者のもので飲食業には適用されません)のカンボジア人にとっては結構な高級料理です。以前、王立プノンペン大学(カンボジアで一番難しい大学)の学生たちに話を聞いたときには、月に一回、何かの記念で食べに行くお店のお勘定が5ドルくらいと言っていました。


そんな、普段食べる料理の何倍もする外国料理、つまり日本人にとってのフランス料理のような位置づけに、味千ラーメンは自分の店を置こうとしているのではないかと思うのです。


ちなみに、スーツなのは3人くらいのマネジャーのみで、残りは普通の味千ラーメンオリジナルTシャツ姿です。


味千ラーメンは、中国で食べたときは正直あまりおいしく感じなかった(おそらく中国人向けにアレンジされている)のですが、カンボジアではおいしい!


とんこつがちょっと薄めかなとか、ニンニク強めかなとか思ったのですが、家の目の前にあったら定期的に通うくらいおいしいです。ギョーザも美味!


日曜日の昼頃に行ったのですが、店内は8割くらいの入り。カンボジア人の裕福そうな若者が車で乗り付けてきています。

帰りに店の前をみてみると、BMWが止まっています。


このように、車を止めるスペースをしっかりとってあるなど、富裕層を顧客にすることを目指しており、それがきちんと実現されているのが素晴らしい。


ちなみにニューヨークの一風堂も、暗めでスタイリッシュなおしゃれなバーのようになっており、値段も日本の倍以上します。日本では大衆食の典型であるラーメンですが、外国では「おしゃれな高級食」とブランディングされているところもあるのです。


外国で日本料理を売るときに、味を現地人好みにカスタマイズすることが大切ですが、このように、店構えやスタイルを日本の固定観念から外して、ブランドを日本とは違う位置づけにしてしまうというのもひとつの方法です。


ちなみに、中国に500店以上ある味千ラーメンは、日本のラーメン屋と同じような大衆食堂スタイル。進出する国の状況によって、きちんとカスタマイズしているところが、さすがであり、だてに世界最大のラーメンチェーン店ではないなと感心させられました。

(次号に続く)



【筆者紹介】


森山たつを


早稲田大学理工学部、日本オラクル、日産自動車、ビジネスクラスで世界一周旅行などを経て、日本人が海外で働く方法を研究する「海外就職研究家」となる。


海外就職に関する書籍、記事などを執筆する傍ら、日本人が苦手としている「外国人とのコミュニケーション」「失敗前提でのチャレンジ」「リアルなビジネス」を体験する研修プログラム「サムライカレープロジェクト」(http://samuraicurry.com)を運営。カンボジア・プノンペンにあるカレー屋を使っての研修プログラムは、既に120人以上の卒業生を輩出している。


主な著書に「セカ就!世界で就職するという選択肢」(朝日出版)、「普通のサラリーマンのためのグローバル転職ガイド」(東洋経済新報社)などがある。


連載:もりぞおの『サムライカレー、世界を喰らう』

第1回:カンボジアでカレー屋を作ったら、カンボジア人がカレーが嫌いだということがわかりました

第2回:カンボジア人に「カレーを美味しくしてくれ」と頼んだら、彼女は練乳に手を伸ばした

第3回:カンボジア人が好きなカレーを作るために、カンボジア人の家に突入してみた

第4回:「当店の『たこやき』はイカを使用しております」―カンボジア水産事情

第5回:「飲食店泣かせのカンボジア、物価は安いが、原価は高い」

第6回:「1日10時間野外労働、時給は115円――カンボジアの屋台店主は生活できるのか?」

第7回:「アクエリアスは炭酸入り、スプライトは3倍甘い。そして、サムライドリンク!――カンボジア飲料事情」

第8回:「カンボジア人にモチは売れるのか?スイーツ突撃実態調査!」

第9回:「シーフードヌードルは、フィリピン人のおふくろの味?」

第10回:「マニュアル人間は希少人材!?創意工夫が店を滅ぼす!」

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