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世界の食を訪ねて

カンボジア人にモチは売れるのか? スイーツ突撃実態調査!

もりぞおの『サムライカレー、世界を喰らう!』[第8回]


前回、カンボジアの飲み物は、日本と比べて非常に甘いということをお伝えしました。


この特徴をお店の売り物にいかせないか?ということで、早速調査をしてみることにしました。名付けて、「カンボジア・スイーツ研究プロジェクト」。


本連載のタイトルになっている「サムライカレー」ですが、この「サムライカレー」というお店では、日本人向けの研修プログラム「サムライカレープロジェクト」が行われています。


海外で働く経験を積みたい日本の若者やビジネスパーソンが、カンボジアにやってきて、カレー屋事業を体験するという研修プログラムです。


事業といっても、そんな大それたものではありません。

例えば「カンボジアの飲み物は甘い」ということを体験したら、「甘いスイーツを発売すれば売れる」という仮説を立てて、実際にどんなスイーツが好まれるか調査をします。そして、その調査結果を踏まえて、新しいメニューを開発し、販売してみるのです。


今回、「甘いおやつを売ってみよう」ということで、選ばれたのが、モチです。

カンボジアでは、モチ米が普通に売っているので、素材に困ることはありません。

また、カンボジア料理にはおはぎみたいなものがあるので、あまり拒否反応が起こるとも思えません。

「これは、いけるでしょ」

まずは、身内で盛り上がります。


しかし「日本人がいいと思うものを、カンボジア人や欧米人がいいと思うとは限らない」というのが海外ビジネスの鉄則。カンボジア人はカレーが嫌いだったという悲劇を繰り返さないために、事前調査を開始します。


モチを売るにあたって、大切なのはなにをつけるか。

まずは、候補を考え、いろいろ試作品をつくってみます。

第1弾は、こちら!


日本代表

きなこ、あんこ


まずは、日本人的にはこれが「鉄板」ですね。

どちらも甘いですし、モチの食感が引き立つ最強の具材です。


そして、カンボジア人大好き部門は……

チョコレート、コンデンスミルク(練乳)


みんな大好き、チョコレート。ストローで直接飲むくらい、カンボジア人が大好きなコンデンスミルク。


糖尿病のもとのような気がしますが、カンボジアの人たちが、日常的に食べているスイーツといえばこれなのです。


ついでに、色モノ枠として、

チーズ、納豆


絶対嫌われると思うのですが、せっかくなのでやってみましょう。


この6種のうち、どれが好きかアンケートをとります。

なお、カンボジアの人たちは非常にいい人なので、「おいしい?」と聞くとなんでも「おいしい」と答えてくれます。なので、おいしいか、おいしくないかと聞いても、ほとんど意味がありません。

大切なことは、「選択式」にすることです。


つまり、アンケートでは「どれが一番おいしかった?」と聞くことになります。


一覧表を作り、おいしかったものにシールを貼ってもらうようにして、さっそく調査開始!


街の中を練り歩き、道行く人たちにモチを食べてもらいます。

日本代表のあんこときなこは、どこまでカンボジア人に受けるのか? そもそもコンデンスミルクや納豆は受けるのか?

半日かけて、カンボジア人 56人に調査をした結果が、これです!


1位 チョコレート 24票

2位 コンデンスミルク 14票

3位 きなこ 10票

4位 あんこ 6票

5位 チーズ 2票

論外 納豆 0票


まず、納豆は完全に論外でした。「Fxxk」など、ここには書けない言葉を発する人がいるくらい。あの味をカンボジアに広めには10年単位の時間がかかりそうです。



そして、チーズもイマイチでした。じつはカンボジアではチーズが嫌いな人が結構、多いです。以前、うちのスタッフにピザを買ってきてあげたら、ピザからチーズをはがして食べているのをみて衝撃を受けたことがあります。


きなこ&あんこの日本軍は、チョコレート&コンデンスミルクのカンボジア軍に全く太刀打ちできませんでした。

やはり、普段食べているモノがおいしいと思うカンボジアの人たち。日本人が好むものを押しつけようとしたら自爆する可能性が高いです。


意外だったのが、「甘ければ甘いほどいい」という予想が裏切られたこと。カンボジア軍では「チョコレート > コンデンスミルク」、日本軍では「きなこ > あんこ」となっており、意外と甘さが控えめのものが優勢だったことです。


実際、食べた人からは、コンデンスミルクよりはかなり甘さ控えめのミルクチョコレートでさえ、「このチョコレートはちょっと甘すぎる」という意見意見をもらったりもしました。やみくもに甘ければいい、というわけでもないようです。


このような結果を踏まえて調査は続きます。


1位のチョコレートでもビターなチョコレートがウケるのか、甘いチョコレートがウケるのか、チョコレートにコンデンスミルクを混ぜた超絶甘いチョコレートがウケるのか?


この辺りでウケてるスイーツのお店の味はどのようになっているのか?


嗜好に、男女差はあるのか?

現地在住の欧米人の嗜好はどうなのか?


一つのことを調べてみると、新たな疑問が見えてきます。そして、その疑問を解決するために、また新たな調査を行う。こうして少しずつ、現地マーケットの嗜好を知り、商品を開発していくわけです。


研修生たちは、自分で仮説→検証を繰り返すことによって、カンボジア人のリアルな嗜好を解き明かす方法を体験します。その情報の蓄積をもとに、リアルなビジネスを開発していくのです。


ちなみに、数回にわたる調査の結果、

・カンボジア人、欧米人共に、ちょっとビターなチョコレートが一番人気

・女性は甘いものとビターなもの、だいたい同じくらいの人気

・きなこは売れなそうだが、あんこに関してはチャンスあり


ということが見えてきました。


この内容を踏まえて商品開発がはじまります。

ちなみに、マーケティングには「4P」という必須調査項目があります。

Product(商品)、Price(価格)、Place(売る場所)、Promotion(売り方)


ここまで調査して、完了したのはまだProduct(商品)のみ。さらに残りの3Pに関する調査が必要になるのです。


このように、モチひとつ売るだけでも、簡単なことではありません。

みなさんも、飲食店のメニューをみるとき、このお店はなぜこのメニューにしたのか、この味付けにしたのか、この値段にしたのかを、想像してみてください。

そこには、たくさんの試行錯誤が埋まっているのです。


(次号に続く)


【筆者紹介】


森山たつを


早稲田大学理工学部、日本オラクル、日産自動車、ビジネスクラスで世界一周旅行などを経て、日本人が海外で働く方法を研究する「海外就職研究家」となる。


海外就職に関する書籍、記事などを執筆する傍ら、日本人が苦手としている「外国人とのコミュニケーション」「失敗前提でのチャレンジ」「リアルなビジネス」を体験する研修プログラム「サムライカレープロジェクト」(http://samuraicurry.com)を運営。カンボジア・プノンペンにあるカレー屋を使っての研修プログラムは、既に120人以上の卒業生を輩出している。


主な著書に「セカ就!世界で就職するという選択肢」(朝日出版)、「普通のサラリーマンのためのグローバル転職ガイド」(東洋経済新報社)などがある。


連載:もりぞおの『サムライカレー、世界を喰らう』

第1回:カンボジアでカレー屋を作ったら、カンボジア人がカレーが嫌いだということがわかりました

第2回:カンボジア人に「カレーを美味しくしてくれ」と頼んだら、彼女は練乳に手を伸ばした

第3回:カンボジア人が好きなカレーを作るために、カンボジア人の家に突入してみた

第4回:「当店の『たこやき』はイカを使用しております」―カンボジア水産事情

第5回:「飲食店泣かせのカンボジア、物価は安いが、原価は高い」

第6回:「1日10時間野外労働、時給は115円――カンボジアの屋台店主は生活できるのか?」

第7回:「アクエリアスは炭酸入り、スプライトは3倍甘い。そして、サムライドリンク!――カンボジア飲料事情」

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