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世界の食を訪ねて

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飲食店泣かせのカンボジア、物価は安いが、原価は高い

もりぞおの『サムライカレー、世界を喰らう!』[第5回]


「カンボジアって生活費が安いんでしょ?」

という質問をよく受けます。

それに対する答えは、「生活パターンによります」。


どんなところで生活していてもそうですが、何でも安いということはありません。

では、カンボジアの飲食店ではどんなものが安くて、どんなものが高いのか。

ちょっとみてみましょう。


カンボジア・プノンペンで外食をすると価格帯はだいたい以下のような感じです。


●カンボジア人が普通に食べる屋台やそれに準ずる飲食店でのカンボジア料理

0.75ドル~2ドル

バーイ・サッチュル(バーイ=ごはん、サッチュル=豚)。現地の人がよく朝ご飯に食べます
店構えはこんな感じ。

●カンボジア人が記念日とかに食べるカンボジア風焼き肉など高級カンボジア料理

5~6ドル


●日本食を含む普通の外国料理

5~8ドル



●日本で言うところのいい居酒屋や焼き肉屋レベルの外国料理

10~20ドル


この国は、お酒、特にビールが安く、スーパーで買うと350ml缶が0.5ドル程度、レストランでも1-2ドルで飲めます。なので、お酒を飲んだときの料金は日本と比べ格段に安く、20ドルを超えると「高っ!」と驚いてしまうレベルです。

それに比べて、普通のランチで食べるラーメンなどは、5~8ドルと、日本と変わらないか、ちょっと高いくらいです。家賃も人件費も安いこの国で、なんでこんな値段になってしまうのか? 日本料理だからといって、ぼったくってるのではないか?

ということで、カンボジアのラーメン店でマネジャーをしている方からお話しを聞いてみました。

こちらは、かつてサムライカレーでちょこっとだけ出したラーメンです

マネジャー氏は言います。

「カンボジア、高いんですよ。ラーメンの原料費、合計すると日本よりも高いですからね。日本と同じ値段で売っても、カツカツです。」


具体的になにが高いのかというと、まず、畜産物全体です。

「肉の値段は、1.5倍くらいしますね。豚骨(トンコツ)は日本の2倍くらいするんですよ。国によっては豚骨は廃棄物で、ただ同然で買えるところもあるのですが、カンボジアでは現地料理でも豚骨を使って作るスープがあるんです。だからカンボジア人と取り合いになり、値段も高くなるのです」


たしかに肉はスーパーでも高いイメージがあります。しかし、豚骨の値段が暴騰しているとは……。


「あと、各種調味料も1.5倍。これは日本から輸入しているからしょうがないですね。煮干しなんかはもっと高いです。どこかから煮干しを安く運んでくるビジネスをやれば、もうかりますよ。」


目に見えないもののコストが、意外と高いようです。


「地味にキツイのがガス代ですね。この国はまだ都市ガスがなくて、プロパンなんです。だから、スープを温めるガス代も日本の1.5~2倍はします。いかにしてスープを冷まさないか、いろいろ工夫をしています。ちなみに、電気代も日本より高いんです。」


インフラが整っていない国にはこんな落とし穴もあるのです。


総合してみると……

●高いもの

肉、豚骨、調味料、煮干し、ガス、電気

●変わらないもの

●安いもの

家賃、人件費、水、野菜

「ただ、家賃が安いといっても、その分、店の前を通る人の数も少ないんですよね。さらに、その人たちの財布に入っているお金の額も」

確かに人通りが少ないですね……


カンボジアでは、日本人を含む外国人も、あまりお金を持っていない(もしくは使わない)のです。


「夜中でも人通りがあり、道行く人のほとんどが数千円単位で使えるお金を持っている東京の繁華街と比べると雲泥の差です」


こうなってくると、日本より割安なのは水と野菜と人件費だけなのか……。

そう思っていたら、さらに追撃がきました。


「現地の人たちに日本人と同じ仕事をできるかというと、そうでもないんですよ。


日本でラーメン屋をしている時は、一つの店を2~5人で回してました。でも、カンボジアではその人数では回せない。日本人も含め5~15人は必要なんです。カンボジア人の給料は月額100~200ドルと、日本の1/10レベルなのですが、日本人マネージャに加えて、日本の3~5倍の人数を雇うから、割安感がない。しかも、すぐ辞めちゃうから、教育も大変だし」


結論として、安いのは、水と野菜だけということになりました。


「なかなかしんどいんです。カンボジアのラーメン屋。まだラーメン屋の数が少ないので、今のうちに『カンボジアラーメンの第一人者』というブランドを築ければと思ってやっていますが、大手チェーン店が出店したら……。その時、考えます」



以前、私が、カンボジア人の大学生の子たちに「食べたことのある日本料理はなんですか?」と聞いたとき、堂々の1位はラーメンでした。カンボジア人にも受ける日本料理として、ラーメンの普及、がんばって欲しいです!


(次号に続く)



【筆者紹介】



森山たつを


早稲田大学理工学部、日本オラクル、日産自動車、ビジネスクラスで世界一周旅行などを経て、日本人が海外で働く方法を研究する「海外就職研究家」となる。


海外就職に関する書籍、記事などを執筆する傍ら、日本人が苦手としている「外国人とのコミュニケーション」「失敗前提でのチャレンジ」「リアルなビジネス」を体験する研修プログラム「サムライカレープロジェクト」(http://samuraicurry.com)を運営。カンボジア・プノンペンにあるカレー屋を使っての研修プログラムは、既に120人以上の卒業生を輩出している。


主な著書に「セカ就!世界で就職するという選択肢」(朝日出版)、「普通のサラリーマンのためのグローバル転職ガイド」(東洋経済新報社)などがある。


連載:もりぞおの『サムライカレー、世界を喰らう』

 第1回:カンボジアでカレー屋を作ったら、カンボジア人がカレーが嫌いだということがわかりました

 第2回:カンボジア人に「カレーを美味しくしてくれ」と頼んだら、彼女は練乳に手を伸ばした

 第3回:カンボジア人が好きなカレーを作るために、カンボジア人の家に突入してみた

 第4回:「当店の『たこやき』はイカを使用しております」―カンボジア水産事情

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