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世界の食を訪ねて

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カンボジア人が好きなカレーを作るために、カンボジア人の家に突入してみた

もりぞおの『サムライカレー、世界を喰らう!』[第3回]




カンボジア人が好きなカレーを探求するため、カンボジア人助っ人を呼び、改善に着手した我々サムライカレー一行。


しかし、その結果は「練乳入りカレー」という、極めて微妙なものになってしまったため、現地のカレーを食べに行くことにしました。


まあ、普通はそういうリサーチをしてから出店をするのですが、そこは私たち、「失敗しながら学ぶ」海外体験型研修プログラムなので。

失敗を成功の母にするため、壁にぶちあたりながら進んでいきます。


連れていってもらったのは、プノンペン市内でもめずらしい、カンボジアのカレー専門店。もともと人が賑わう場所にあるお店なのですが、店内もそれなりに賑わっていました。


そして、出てきたカレーを食べてみると……甘い!


この「クメールカレー」と呼ばれるカンボジア風カレーは、ココナツミルクベースの甘いカレーです。タイのレッドカレーやイエローカレーから、辛さを根こそぎ奪った感じと言えばわかりやすいかもしれません。


カンボジア料理屋ではアモックという、この様なカレー風味の煮物があるのですが、クメールカレーがほぼ同じ味だとは思いませんでした。


「これが、カンボジアのカレーなんですね」

「はい。私はカレーと言われるとこれを思い出します」


さて、このカレーをどうやって作るか。

サムライカレーは、「海外体験型研修プログラム」なので、作り方をただ教わるだけでは面白くありません。


「カレーを家で作って食べることはあるんですか?」

「正月とかにお母さんが作ってくれます」


――それだ!!

プノンペン・おふくろの味、サムライカレー。

名前があっちこっち飛び回っているのが面白いということで、その方向で考えてみることにしました。つまり、プノンペンのおふくろさんにカレーの作り方を習うのです。


ちょうどそのころ、サムライカレーの向かいの家族と仲良くなったところでした。そのおばちゃんは、料理がうまいことで近所でも有名です。そのおばちゃんに習って、レシピを作ろう!ということで、早速交渉。交渉の際に、今後の方針を決める必要があります。


プランA. おばちゃんを雇って、料理人になってもらう

プランB. おばちゃんに週1~2回パートタイムで働いてもらう

プランC. おばちゃんに外注して、鍋1杯いくらで納入してもらう

プランD. 作り方を教わって自分たちで作る


「カンボジア版・おふくろの味」ってことで、おばちゃんの手作りというところに付加価値を見いだそうとしたため、こんなプランを考え、それぞれの提示額まで考えて交渉にのぞみました。


「カレーの作り方? オッケー! いつでもおしえてあげるよ! でも、本業の裁縫が忙しいから、手伝うのは無理ね」


あっさり、プランA~Cがなくなりました。

プランDの大変なところはレシピ作りです。


サムライカレーでは、料理を作るカンボジア人スタッフがいるのですが、彼に作り方を教えなくてはなりません。また、口頭で伝えただけでは、そのスタッフが辞めてしまったら(そして、おばちゃんがいなくなってしまったら)作り方が分からなくなってしまいます。

そこで、レシピを作る必要があるのです。


そして、実際にカレー作りの日がやってきました。


この時点でサムライカレーは3カ月目に入っており、研修生も3チーム目です。

春休み期間が終わり、大学生中心だった参加者が、社会人中心になっています。


一人はフィリピン留学後海外就職を目指して腕試しをしに来た30代男性。

一人は同じく海外就職を検討するためにやってきた20代男性。

そして、もう一人は、英語まったく駄目、初めての海外旅行。というより、東京都以外に連続1週間以上宿泊したことがないという40代男性!


学生らしい若さがないところに、社会人の貫禄を感じます。

こんなサムライカレー研修生に加えて、カンボジア人スタッフ1名(クメール語ネイティブ。英語なんとか)がついてきます。


おばちゃん側からは

おばちゃん(クメール語ネイティブ。英語まるで駄目)

娘(クメール語ネイティブ。英語まあまあ)

その他野次馬大勢。


ここから、カレー作り、レシピ作りがはじまります。

おばちゃんは、当然全て目分量で作りますので、我々が逐次チェックする必要があります。


野菜を投入しようとしたら、手を止めてもらい、重さを量る。

見たこともない野菜があったら、野菜の名前をクメール語で書いてもらう。

複雑な工程があったら、スマホの動画で録画する。


こんなことをしながら3時間ほどかけてできたクメールカレー!


野菜のコクがたっぷりでおいしいです!


うむ。これはすばらしいかもしれない。

おばちゃんも満足そうです。


そして、翌日。

作ったレシピ通りに作ってみると、うまい!


こうやって、サムライクメールカレーは生まれたわけです。

野菜中心なので原価も安く、御飯にもパンにもノムバンチョップ(カンボジアのうどん)にも合います。ただ、冷凍すると鮮度が落ちてしまうため、保存が利かないのが弱点です。

これをどうやって売っていくかは考えどころ。

でも、言葉が通じなくても、食の好みがちがっても、こうやって意思と文化を伝達することはできるのです。


こうやって、地元の人たちに近づくことができるのが、現地でカレー屋をやっていて一番面白いところなのです。(次号に続く)



【筆者紹介】


森山たつを


早稲田大学理工学部、日本オラクル、日産自動車、ビジネスクラスで世界一周旅行などを経て、日本人が海外で働く方法を研究する「海外就職研究家」となる。


海外就職に関する書籍、記事などを執筆する傍ら、日本人が苦手としている「外国人とのコミュニケーション」「失敗前提でのチャレンジ」「リアルなビジネス」を体験する研修プログラム「サムライカレープロジェクト」(http://samuraicurry.com)を運営。カンボジア・プノンペンにあるカレー屋を使っての研修プログラムは、既に120人以上の卒業生を輩出している。


主な著書に「セカ就!世界で就職するという選択肢」(朝日出版)、「普通のサラリーマンのためのグローバル転職ガイド」(東洋経済新報社)などがある。


連載:もりぞおの『サムライカレー、世界を喰らう』

 第1回:カンボジアでカレー屋を作ったら、カンボジア人がカレーが嫌いだということがわかりました

 第2回:カンボジア人に「カレーを美味しくしてくれ」と頼んだら、彼女は練乳に手を伸ばした


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