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世界の食を訪ねて

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カンボジア人に「カレーを美味しくしてくれ」と頼んだら、彼女は練乳に手を伸ばした

もりぞおの『サムライカレー、世界を喰らう!』[第2回]


サムライカレーは、カンボジア在住者向けの飲食店ですが、それと同時に、日本から来た研修生に海外で働くという経験を積んでもらう研修施設でもあります。


1週間から4週間コースがあり、多くの研修生が4週間、カンボジアプノンペンの小さなカレー屋「サムライカレー」で出される‘ミッション’をこなしながら、海外で働く体験をしてもらっています。


2014年1月当時、実績も店舗もWebページすらないこのプログラムに参加してくれた研修生は4名。


「将来、飲食店をやりたいから」「フィリピン英語留学のあとの腕試し」「おもしろそうなので世界一周卒業旅行を短縮して参加した」などなど、さまざまな目的を持って参加してくれた大学生4人が、手探りでカレー屋運営をしています。



プログラムで重要視するのは、「失敗を恐れずに行動すること」であり、「失敗を成功の母にすること」です。だから、カンボジアにカレー屋を作ってから、カンボジア人がカレーが嫌いということが判明してもOKなのです。(かなりダメージは受けましたが)


さて、そんなわけで、カンボジア人が好きなカレーを作るなら、カンボジア人に聞け!――ということで、日本語ができて、料理もできるカンボジア人の娘を連れてきて、聞いてみることにしました。


まずは、オリジナルのサムライカレーを食べてもらう。


「ちょっと臭いです。これは、カンボジア人、嫌いです」とのこと。


前回の記事でもお話ししたとおり、カンボジア人にとって、インド風のカレーのスパイスの香りは「くさい。すっぱい」と感じてしまうのです。

日本食にある程度なじみのある彼女でもこの状態なのですから、改善するしかありません。


「どうやったら美味しくなると思いますか?」

様々な調味料を並べたテーブルの上を眺め、彼女が手に取ったのは、練乳でした。


「きたか・・・」


カンボジアの人たちは甘い物が大好きです。

コーヒーを頼むと、途方もない量の練乳が入った、凄まじい甘さのコーヒーがでてきます。

コンビニで緑茶を買っても、当然のごとく砂糖入りです。(午後の紅茶のミルクティーの3倍くらい甘いです)


さらにいうと、現地の清涼飲料は甘さマシマシで、スプライトなども、日本のモノと比べて素人でも分かるくらい甘さがアップされています。

ちなみに、練乳の缶にストローを挿して飲んでいる人もよくみかけます。


糖尿病になりますよ・・・。


「できました。だいぶ美味しくなりました」


上が練乳なし。下が練乳あり。見た目はまったく変わりません・・・。


ということで、おそるおそる食べてみると・・・カレーに練乳を混ぜた味がします。

カレーにチョコレートを入れるとコクがでるなどという話をきいたことがあるので、あわよくばとんでもない化学反応が起こるのかとおもったのですが、どうやら普通に足し算した感じです。辛さと甘さが混じり合わないカレー・・・。


まずは、日本人側で協議。

「これは・・・美味しいのか?」

「まあ、カンボジア人専用メニューなら、我々が美味しいと思わなくてもいいのでは」

「まずは、カンボジア人に聞いてみるか」


と、いうことで、市場調査をしてみることにします。


カンボジアの人たちは、非常に愛想がいい人が多いです。それ故に、手厳しい指摘はあまりしてくれません。それどころか、なにを食べても笑顔で「美味しい」と言ってくれます。

だから、アンケートのポイントは、口に入れたときの一瞬の反応。

道ばたで声をかけ、その一瞬を見逃さないように凝視します。



が、その必要はありませんでした。

スプーンを顔に近づけた段階で、「くさい」という表情をするのです。それ以前に、カレーの皿を持っている人を避けて通ったりもします。


「まあ、練乳を入れても、匂いはかわらないよね」

一堂納得したところで、全ては振り出しにもどりました。


「そういえば、カンボジアには、カンボジアのカレーがありますよ!」


「最初にそれを言えよ!」と心の中でツッコミながら、食文化の奥深さに頭を痛めるのでした。


さて、カンボジアのカレーとはどういうものなのか?

そのお話しは、また次回……。



*******


【筆者紹介】



森山たつを


早稲田大学理工学部、日本オラクル、日産自動車、ビジネスクラスで世界一周旅行などを経て、日本人が海外で働く方法を研究する「海外就職研究家」となる。

海外就職に関する書籍、記事などを執筆する傍ら、日本人が苦手としている「外国人とのコミュニケーション」「失敗前提でのチャレンジ」「リアルなビジネス」を体験する研修プログラム「サムライカレープロジェクト」(http://samuraicurry.com)を運営。

カンボジア・プノンペンにあるカレー屋を使っての研修プログラムは、既に120人以上の卒業生を輩出している。


主な著書に「セカ就!世界で就職するという選択肢」(朝日出版)、「普通のサラリーマンのためのグローバル転職ガイド」(東洋経済新報社)などがある。

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