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100歳までの人生設計

100歳まで生きたい? 就活中の大学生が「終活」を考えた

私たちは朝日新聞GLOBEのインターンに参加する上智大新聞学科の3年生。「100歳までの人生設計」という特集テーマを聞いた時は正直、「シューカツ(就活)もままならない大学生に『終活』について聞かれても……」と思った。だけど、選択必修科目「キャリア」の講義で、世界的ベストセラー「ライフ・シフト 100年時代の人生戦略」が題材になり「私たちの世代は75歳まで働く前提でキャリアを考えるべきだ」と聞かされて、目が覚めた。世紀末に生まれ、少子高齢化の中で育った私たちの「就活」は、どうやら終活も視野に考えなければならないらしい。「100歳」を見つめるべく、クラスメートと考えてみることにした。(GLOBEインターン 髙野夏穂、渡邉結衣)


2060年 高齢化率4割の国で64歳になる私たち

なごやかにインタビューするインターン生(渡邊、左)とアカネさん=上智大学内で

厚労省の統計によれば、いま21歳の私たちが64歳になる2060年、日本の高齢化率は40%近くになっている。年金制度については受給年齢などをめぐる議論があり、その時の私たちが、現在と同じように「65歳」から年金をもらえる可能性は低そうだ。起業の定年はどうなっているだろうか。仮に100歳まで生きるとすれば、60歳で退職後40年も働かずに生きるわけにもいかないだろう。


一方で、日本の労働人口の半分がAIやロボットに代替するという試算もあるし、終身雇用が崩れていくため同じ仕事を続けられているとも限らない。さらに、結婚や出産など、仕事以外の要素も大きい。1年後の就職先もわからない私たちが、これらすべてを踏まえたうえで、残り80年の人生設計を立てられるのだろうか。お金が足りるのか、仕事はあるのか、孤独にならないだろうかと不安にもかられた。一方で、海外移住や子育て、趣味の時間など長い人生への夢や希望もある。どうしたらいいのか。


同世代の意見を聞いてみようと、昨年12月、それぞれのゼミに通う学生を中心に大学生20~22歳の大学生30人(女性20人、男性10人)にアンケートして、それぞれの人生設計を聞いた。

人生100年、不安が7割

「あなたは何歳まで生きたいと思いますか」という問いに、100歳以上まで生きたい答えたのは30人中6人。最も短い人生を望む人が「60歳」、最も長く生きたい人は「120歳」と、その差は2倍に及んだ。平均すると84歳と、現在の平均寿命(女性87.14歳、男性80.98歳)と大きく変わらない数字だ。男女別にみると、男性が平均92歳なのに対し、女性が平均80.4歳と、女性が男性を大きく上回る実際の平均寿命とは逆の結果になった。



「もし100歳まで生きるとしたら、不安な気持ちと楽しみな気持ちのどちらが大きいですか」という問いには、30人中23人が「不安な気持ちが大きい」と回答した。男女別にみると、男性は「不安」と「楽しみ」が半数ずつだったが、女性は20人中18人が「不安」。「年金が支払われるのか不安」「時代についていけなさそう」と、金銭面や孤独を心配する人が多いようだ。



何歳まで働きたいかについても質問した。回答は、平均で59歳。現在の一般的な定年の「60歳」がライフプランに色濃く反映されていて、もっと長く働くことが求められる「100歳時代」を見据えている人は少なかった。とはいえ、最も高齢だと「80歳」、最も若い年齢では「30歳」と、こちらも個人差は大きい。この「差の大きさ」にヒントがあるような気がして、対照的な答えをした2人に話を聞きに行った。



「年金やばそう 貯金もつ自信ない」

アカネさん

「何歳まで生きたいか」との質問に、現在の女性の平均年齢(歳)を下回る「75歳まで」と答えたアカネさん(仮名、21)。 理由を聞くと「思うように階段に上れないとか、手が届かないとかそういうのがちょっとずつ生じて、いずれ働けなくなった先が想像つかず、怖い。自分で自分の世話ができるうちに死にたい」という。


「小学生の時は、100歳まで生きたら楽しそうだなと思ったけど、現実的には、年金もそろそろやばいって言われていますし。私たちが高齢になっても年金もらえないとか、退職金がないとか……。自分の貯蓄で老後生きるとすると、100歳まで貯金が持つか自信がない」と話した。


どういう状況なら不安が解消されるのか聞くと「年金問題が解決し、老後自力で生きていけるシステムがあれば……」。アカネさんは池上彰さんの番組をきっかけに公的年金の現状を知り、ツイッターで年金問題に詳しいジャーナリストをフォローしている。「私たちがもらうときまでは年金のシステム自体は終わることはないと思う。ただ、額が減ったり、もらい始める年齢が引き上げられたり。制度を維持するために税負担が増えたりするのが不安ですね」

アカネさんに書いてもらった「人生設計」

そんなアカネさんは「体が動くうちは働き続けたい」という考えだ。山口県の実家が鉄鋼業を営み、75歳を超えた祖父が「現役」で働く姿を見てきたから「それが、ふつう」。今はメディアやIT関係を中心に就活中だが、「60歳まで仕事して、お店を出す」のが夢。「どこの業界でもバリバリ働くのが新卒の理想像だけと思うけれど、仕事は楽しくても仕事とは別のやりがいや趣味を持ち続けていきたい。その延長線上にお店を出せたらいいと思っています」


22世紀まで、3世紀見てみたい

コウダイさん

もうひとりは、「105歳まで生きたい」というコウダイさん(仮名、22)。なぜ「105歳」なのか聞くと「1995年生まれなので、2101年まで生きて3世紀見てみたい」という。確かに3世紀生きられる人は珍しいが、世紀末生まれの私たちには可能性がある。「もっと移動時間が短くなって世界中好きなところに行けるようになっているのかな、とか、それが地球規模でなく宇宙規模になるのかな、と楽しみ」という。105歳を超えても元気だった曽祖父の姿も影響しているようだ。


一方で、始めたばかりの就職活動については、決して楽観的ではないコウダイさん。「昔は終身雇用があったけど今はなくなってきているし、自分がスキルアップしていかないとだめって社会になっている。生活保護を受けている人のドキュメンタリーなどを見て最悪のことも考えたほうがいいなと思う」という。メディアのほか自動車業界などに関心があるが、目指すは「大企業」。「福利厚生や賃金もですが、大企業という組織の中で学んでスキルを高めていけば転職する場合も活かせる」と話した。

コウダイさんに書いてもらった「人生設計」

コウダイさんの「人生設計」で印象的だったのは、働き方を「40歳までは会社で働く」「その後、独立して働く」「60歳から70歳まではゆるやかに仕事」と「働き方」を3段階に分けていたこと。「40歳くらいである程度形になるものを、自分の中で作っていきたい。そこで他に自分のやりたいことを見つけたら、独立して起業したり、他の会社に行ったりしてもいい」。70歳までは「年金受給まで収入がなくなるのは厳しいので、緩やかに働きながら老後を考えていけたらいい」という。


年金などの不安はないのか。「会社の積み立て制度もあると思う。ちゃんとした企業に勤めることが大前提で、やっていけるという根拠のない自信があります。悲観的にならない性格なんです」



記事を書いたGLOBEインターン生(ともに上智大3年)

髙野夏穂(21)

就活を前に、学びが終わることに不安を抱いていた。しかし、「100歳までの人生設計」に向き合ううちに人生の「学び」に終わりはないのだと考えるようになった。一生のキャリアを磨きながら私は70過ぎても働きたいし、あわよくば3桁まで生きられたらいいなあ、と考えている。



渡邉結衣(21)

アンケートを通じて、将来が不安という人は、人生設計が漠然としている場合が多いことに気づいた。「長生きしたい」と答えたコウダイさんは、将来への考え方が具体的で柔軟だった。何を大切に生きるのかを定めれば、長い人生、そんなに怖いものでもないのかも。


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