RSS

豊かさのニューノーマル(紙面)

中国企業、次に挑むは「空飛ぶマシン」

深圳的世界④

ドラえもんのタケコプターで一気に空を飛ぶことができたらなぁ、と子どもの頃にあこがれたことがある。とはいえどんなに科学が発達しても、手軽に空を飛べる道具なんてつくれない――。そう思っていたら、中国は予想の斜め前を進んでいた。「1人乗りの飛行マシン」の実現に向け、もう手が届きそうなところまで開発が進んでいるのだ。(朝日新聞広州支局長 益満雄一郎)

中国ハイテクフェアに出展された1人乗り飛行マシン=11月17日、深圳、益満雄一郎撮影

飛行マシンを開発しているのは、中国南部・深圳に本社がある「KUANG-CHI(光啓)」。「深圳的世界③」で紹介した「中国ハイテクフェア」にも出展、ブースには多くの来場者が集まっていた。飛行マシンが空を滑るように飛ぶ映像に、「すごいなあ」と歓声が上がった。


飛行マシンは、操縦士が立ったまま乗るよう設計されている。両サイドにプロペラが一つずつついており、プロペラが回転して風を下に噴き出すことで浮力を得る仕組みだ。飛行速度は時速74キロ、飛行時間は最長30分。高度は1500メートルまで飛べる。2015年に初飛行に成功した。


「空を飛ぶのは、私たちの創業者の夢でした」


同社のブランド担当、楊婧如さんは開発のきっかけを語った。もとは素材メーカーだが、素材開発で培った技術を生かした製品を考えるうちに、高度な最新のテクノロジーが求められる飛行マシンに目をつけた。

深圳の「KUANG-CHI(光啓)」のショールームにある1人乗り飛行マシンに試乗する楊婧如さん=11月22日、益満雄一郎撮影

米国や英国で博士号などを取得した6人が設立、2010年に登記した若い企業だ。2014年には、飛行マシンの研究開発を30年続けてきたニュージーランドの企業を買収。2017年には英国の企業を事実上傘下に収め、課題だった安定飛行技術の確立にメドをつけた。矢継ぎ早の展開は、勢いのある深圳の企業ならではだ。


気になる飛行マシンのお値段は1台460万人民元(約7800万円)。個人ではまず買えない値段だが、災害救助などでの活用が見込まれている。すでに技術的な課題は克服しているとのことで、早ければ来年にも発売できるという。楊さんは「課題は多いけど、個人でも使える日は来るはずだと信じています」と言う。

深圳の「KUANG-CHI(光啓)」のショールームにある1人乗り飛行マシンのエンジン=11月22日、益満雄一郎撮影

習近平・国家主席は2012年に中国共産党総書記に就任後、改革開放路線の継続アピールのため、中国初の経済特区・深圳を最初の視察先に選んだが、その際に同社も訪れている。つまり中国では「航空」や、その上空にある「宇宙」は、科学技術の発展を宣伝する格好の舞台になる側面がある。


習指導部は米ロに匹敵する「宇宙強国」への仲間入りを掲げており、2022年には独自の宇宙ステーションの建設をめざしている。旅客機の分野では、中国の国産機C919が今年5月、初の試験飛行を実施した。


ただ、とりわけ中国の宇宙開発は、軍事技術への転用が懸念されている。中国では、宇宙開発に関する予算や組織の詳しい情報はほとんど公開されておらず、透明性を求める声が国際社会で高まっているが、中国にその気はなさそうだ。


鳥のように大空を飛びたいという空へのあこがれは、古代から科学技術を飛躍させる原動力となってきたが、一方で、国威発揚や軍事技術への転用にも使われかねない。とりわけ中国では、民間レベルの技術発展といった明るい話だけでは済まないように思う。そうした二面性とどう向き合うべきか。1人乗り飛行マシンが「離陸」寸前の深圳で、考えさせられた。



深圳的世界③ 「深圳以外に選択肢はなかった」~電子産業が深圳に集まるワケ

深圳的世界② 深圳の無人コンビニ、いずれはスマホなしの手ぶら決済も?

深圳的世界② 小学生もキャッシュレス。深圳で進む現実

この記事をすすめる 編集部へのご意見ご感想

  
ソーシャルブックマーク
このエントリーをはてなブックマークに追加
Facabookでのコメント

朝日新聞ご購読のお申し込みはこちら

Information | 履歴・総合ガイド・購読のお申込み

Editor's Note | 編集長から

PC版表示 | スマホ版表示