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豊かさのニューノーマル

大阪からアフリカへ。関西ペイントが考える「最後のフロンティア」とは

石野博社長に聞きました

アフリカと聞けば、どんな連想をするだろうか。紛争? 貧困や飢餓に感染症? 「遠い場所」「未開の地」? 今のアフリカは、そんなイメージをよそに劇的に変わっている。企業からみれば、経済成長と人口増が続く「最後のフロンティア」だ。アフリカ進出を続ける塗料大手、関西ペイントの石野博社長(66)に聞いた。(聞き手:GLOBE記者 宋光祐)

関西ペイントの石野博社長=宋光祐撮影

大阪市を本社とする関西ペイントは2011年、アフリカで塗料シェア首位の南アフリカの企業を買収し、南部アフリカを中心に建築用塗料の事業を広げてきた。今年は、東アフリカ地域の足がかりとしてウガンダやケニア、タンザニアにまたがる現地のメーカーを買収。西アフリカのナイジェリアでも現地メーカーと合弁会社を設立し、アフリカ全土を市場として見すえている。


――アフリカ進出を決めたのは、そもそもどうしてだったのでしょう?

関西ペイントは自動車塗料の分野が強い。日本の自動車の2台に1台はうちの塗料が使われていると言われるくらいです。しかし、建築や工業用などすべての塗料の売り上げからみると、自動車用塗料の占める割合は日本だと15%以上だが、世界的には6%ほどしかない。約半分は、建築とインフラに使われる塗料が占めている。つまりここでシェアを取らないと、世界企業にはなれない。ではどこで取るか。市場がこれから伸びるところでないといけない。そういう視点でこれまで東南アジアや中国、インド、中東と順番に事業を広げてきたが、次はどこかとなった時に、残されていたのがアフリカだった。


アフリカが本当の意味でマーケットに成長するのは、まだ10~20年先だと思っている。しかし、10年後にマーケットができてから進出したのでは遅い。だから、南アの塗料シェア首位の企業を買収した。ここをベースに10年間がんばって、アフリカ全土をカバーしたい。


――アフリカではどんな事業を展開しているのですか。

戦略的にはまず、ボリュームゾーンになる住宅など建築用の塗料で事業を拡大させたい。自動車用塗料と違って、建築用塗料は製品での差別化が難しい。一般の消費者にとっても、どこが優れているかがわかりにくい。だからこそ、ブランドを浸透させることが重要だ。私たちには、差別化がはかれる建築用塗料がある。蚊を寄せ付けない効果のある塗料や、ウイルスを不活性化させる効果のある塗料で、この2つの塗料も投入しながらブランドとして名を知らしめるには、現地で長く事業を続けて安心感と信頼を得る必要がある。

関西ペイントの塗料施工の研修を受けるザンビアの人たち=関西ペイント提供

こうした塗料は今年4月から2年間かけて、国際協力機構(JICA)の普及事業に採択された。これをきっかけにザンビアで、公共施設や一般住宅、病院施設の施工に使われることが決まった。


――アフリカではどのぐらい事業を広げられそうですか。

アフリカはこの先も人口が伸びていく。もっと正しく言えば、1人当たりの所得が伸びて中間層が増えていく。その結果、アフリカの購買層は10億~20億人になっていくだろうと見込んでいる。建築用塗料の需要が急激に拡大するのは1人当たりGDPが1千ドルに到達した段階とされ、1人当たりGDPが3千ドルにならないと需要が広がらないと言われる自動車よりも、早く成長期がやってくる。


建築用塗料の1人当たり使用量で見ると、日本は内装が壁紙中心なため、12キロリットルとなっている。内装にも外装にも塗料を使う米国は25キロリットルと約2倍だが、アフリカはというと、1キロリットルしかない。ただ、アフリカも米国のように内外装に塗料を多く使う傾向があり、将来的には20キロリットルくらいまで伸びる可能性がある。しかも所得が増えれば使う人の数もどんどん増えていく。アフリカの潜在需要は、足し算ではなくかけ算で大きくなっていく。

研修を終え、表彰されるザンビアの人たち=関西ペイント提供

――日本企業のなかには、地理的な遠さやイメージの難しさなどからアフリカ進出をためらう声もあります。

確かに、全然わからない土地だし、場所も遠い。そんなに簡単にはいかない。しかしリスクをマネージしながら、ネバーギブアップで絶対に外すことのないよう、南アの子会社が現地ビジネスを監査する体制を整えている。日本人には現地の本質的なビジネス習慣がわからない分、チェックが難しいだけに、現地の人たちの力が大切になる。


アフリカは最後のフロンティア。成長のスピードは中国のようにはいかなくても、必ず伸びていく。人がいるところは必ず伸びるから。紆余曲折があるのは覚悟の上だ。


――アフリカはどのくらいの間、「最後のフロンティア」でいられるのでしょうか?

フロンティアとは何かというと、市場をカバーできていない、塗料を売るためのビジネスモデルが確立できていないということ。我々がアフリカに進出したといっても、カバーできているのはまだ13カ国。50カ国以上あるなかでの13カ国だ。フロンティアはまだまだ残っている。

南アフリカのヨハネスブルクにあるホームセンター。住宅用塗料の販売スペースが広く割かれている=関西ペイント提供

――人口が増え、高成長が見込まれるアフリカに対して、低成長が続く日本をどう見ていますか。

もっとグローバルにプレーする感覚でやればいいと思う。なぜ日本だけにこだわるのか。誤解を恐れずに言うと、いまだに東京だ大阪だとか、「関西は東京に負けない」といった対抗意識がある。でも、大阪はグローバルの中の大阪。企業のグローバル化はまだまだ進んでいない。本当のグローバル企業としてやれること、やらなきゃいけないことは、周回遅れになっていると思っている。


もっと活気をもって、チャンスを探してチャレンジしていく。それを良しとするべきだ。良しとされているようで、現実は必ずしもそうなっていない。フィールドは世界にあるんだから、チャレンジ精神がある企業はやればいい。スタートアップで自己実現を目指すような環境も整ってきている。

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