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壁がつくる世界

「壁の向こう側」には行かせない! 「人間の壁」で連帯

壁の世界の住人たち③

由緒ある礼拝堂やバードウォッチャー憧れの地が、「壁の向こう側」に行ってしまう--。「トランプの壁」をめぐってそんな懸念が浮上し、米南部の建設予定地で反発が広がっています。「壁には壁を」。地元住民たちが思いを伝える方法に選んだのも、「壁」でした。(GLOBE記者 村山祐介)


「Abema x GLOBE」壁特集より



「ノー・ボーダー・ウォール!」

米テキサス州南部の国境の町ミッションで8月中旬、トランプの壁に反対する約900人がシュプレヒコールを叫んで行進した。陣頭に立ったのは白衣の神父たち。白煙を上げる香炉を揺らして歩き、聖母像を屋根にのせた車で先導した。




向かったのは、国境を区切るリオグランデ川のそばにある小さな礼拝堂だった。19世紀に建てられた地域最古のものの一つで、町のシンボル的存在だったが、壁計画で危機にひんしているのだという。




いったいどういうことなのか。

やや複雑だが、因果関係を整理すると、


トランプ政権は、まだ壁がほとんどないリオグランデ川に壁建設計画の大半を集中させた

         ↓

ただ、メキシコとの条約で河川には建てられない。川辺の大半は私有地で用地確保も大変

         ↓

そこで、国境から数百メートル米国側にある国有地の「土手」に白羽の矢が立った


という流れだ。

川から離れた土手に壁ができると、川から土手の間は「壁の向こう側」になってしまい、簡単には行けなくなってしまう。そこに礼拝堂や自然保護区も含まれており、建設計画が表面化すると、怒りの声がわき上がった。



「礼拝堂を守れ」を合言葉に開かれたこの日のイベントにも、環境保護や教員組合など52もの団体が主催者として名を連ねた。行進後の集会では、登壇者は英語とスペイン語で聴衆に語りかけ、イスラム教の地元指導者もマイクを握って、神父とがっちり握手。壁による分断を非難し、多様性の尊さや共生の大切さを口々に訴えた。




ひときわ大きな声で壁反対を叫んでいた地元高校2年のマリア・ランデロス(16、下の写真中央)は「壁は国境の両側のコミュニティーが支え合う機会を奪ってしまう。私たちはもっと結びついているべきだと訴えたかったんです」と話した。




その翌日、礼拝堂の約20キロ東にあるサンタアナ国立野生保護区に約700人が集まった。




400種以上の鳥がいるバードウォッチャーの憧れの地で、チョウも北米にいる種の半分が生息するなど、全米有数の生物多様性を誇る。だが、当局は保護区内にある土手にもコンクリートの土台を築き、高さ5・5メートルの鉄製フェンスを建てる考えだ。米国野鳥協会長のジェフリー・ゴードン(53)は「全米でも3本の指に入る野鳥観察地が壊滅しかねない」と憤る。



参加者は、壁が計画されている土手の上で、保護区を背にして横一列に整列。つないだ両手を無言で高く掲げた。コンクリートの壁に対抗する「人間の壁」だった。

トランプの壁への反対を象徴する場面として、写真が地元紙の一面を飾るなど多くのメディアが取り上げ、ソーシャルメディアで拡散した。




反対派は、壁建設に反対する議会決議の「ひな型」も配り、地元議員らへの説得も本格化させた。川の流域にある十数もの議会で、壁建設に反対する決議が次々と採択された。


     ◇


反対派を取材していて、私ははっと気づいた。壁の賛成派はいったいどこにいるのだろう。(続く)



(敬称略)


GLOBE10月号と「Abema x GLOBE」の壁特集の全編はこちらから

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