RSS

豊かさのニューノーマル

ICT立国 ルワンダの飛躍

支援通じビジネスチャンス狙う日本

80万人以上が犠牲になった1994年の大量虐殺から23年。アフリカの小国ルワンダが情報通信技術(ICT)を基盤に急速な発展を遂げている。2000年以降の経済成長率は平均で8%近くに達し、成長を続けるアフリカの国々の中でも「奇跡」と称される勢いだ。日本も支援しており、ビジネスチャンスにつなげようという動きが出てきた。(GLOBE記者 宋光祐、敬称略)

ルワンダの首都キガリで、ストリート・チルドレンのためのコンピューター教室を訪れた国際通貨基金(IMF)専務理事のラガルド(中央、ロイター)

四国ほどの面積に約1200万人が暮らす東アフリカのルワンダは、タンザニアやコンゴに挟まれ、周りには海がない。目立った資源はなく、農業を中心産業としてきた。それが今ではICTを経済成長の起爆剤として活用する国のモデルとして、アフリカだけでなく世界中から視線を集めている。


大統領のポール・カガメは00年の就任後、「ビジョン2020」をつくった。5年ごとの国家戦略をもとに、ICTを中心としたテクノロジー政策を進め、国の中心的な産業を農業から知識基盤型経済に移すことで、20年までに中進国になることを目標に掲げた。世界銀行が公表した報告書「ビジネス環境ランキング2017」で、ルワンダは、アフリカの国々のなかで最もビジネスのしやすい国の一つとしてランク付けされている。


米国ニューヨーク在住の山中敦之(47)は、国際協力機構(JICA)の専門家として、09年からルワンダのICTを活用した経済開発の支援を始めた。10年にはルワンダ政府の第3次国家ICT戦略の策定にもかかわった。

山中敦之

山中がルワンダの成長のカギの一つとして口にするのが「0グラム・エクスポート」だ。ルワンダは内陸国で地理的な制約が大きく、輸出できる資源もない。しかし、ICTを使ってデータを加工したり、アプリケーションを制作したりして海外に売り込めば、輸送費がかからない。ハンデを乗り越えられる。


11年には民間企業の育成を目的に、山中もアドバイザーとして協力したICT商工会議所の設立が実現した。政府主導で始まったICTの産業育成は、ここ数年の間に少しずつ民間企業が引っ張り始めている。若い起業家も相次いで登場しており、人材育成の動きも活発になってきた。そのうえで、山中がこれからの課題として挙げるのは、ICTとほかの産業をいかに組み合わせるかだ。


「ICTは、いわばただのツールに過ぎない。大切なのは『ICT×○○』のアイデア。基盤となるテクノロジーをほかの産業と組み合わせることで、新しい形の成長産業が生まれてくる。例えば、丘の多いルワンダでは農業の生産性を上げるのは難しいが、ドローンで効率的に農薬を使うなどICTを導入すれば、生産性を飛躍的に上げることができるはずだ」


ルワンダには実験的なビジネスをやりやすい環境があり、山中が言うような取り組みは一部ですでに始まっている。米国カリフォルニア発のスタートアップ・ジップラインは昨年、GPSで自動制御したドローンを使って、病院に血液を届ける世界初の事業をスタートさせた。

ジップラインは2016年、ドローンを使って病院に血液を届ける事業を世界で初めて始めた(ロイター)

これは「ICT×医療」として一つのモデルになる事業だろう。「ルワンダの人たちには、ジェノサイドを乗り越えてみんなが一つになる、悲劇を繰り返さないためには前例のないことでも何でもやる、という思いがある」と山中は言う。ここ数年、アフリカの国々からルワンダへの視察が急増しており、ICTの「ショーケース」として、ルワンダは一つのブランドになりつつある。


ルワンダのICT人材の育成は、日本国内でも取り組まれている。神戸情報大学院大学(KIC)は、2012年からこれまでに約40人の留学生をルワンダから受け入れてきた。13年からは5年間でアフリカからの留学生を1000人受け入れる国のプログラムを活用し、より積極的にアフリカの留学生に扉を開いてきた。


受け入れ開始からすでに5年以上が経った今、KICで学び、ルワンダで活躍する元留学生も多い。副学長の福岡賢二(50)は「個別のスキルを教えるだけでなく、まず社会的な課題を自分で見つけ、ICTを活用してその課題を解決する力を身につけてもらうことを目指している」と話す。

神戸情報大学院大学の副学長、福岡賢二

留学生たちは自分の国の社会状況を想定して課題を設定し、安価なデバイスを使って解決する方法を模索する。「お金持ちになるというよりも、社会に貢献するというモチベーションが強い」。起業家の卵とも言えるルワンダ人学生たちと接しながら、福岡はそう感じるという。


昨年8月には、KICと神戸市が共同で進めるプログラム「ルワンダにおけるICT教育人材育成事業」がJICAの草の根技術協力事業に選ばれた。今後はルワンダの首都キガリで、企業で求められるレベルの技術を持ったICT関連の人材を育てるプログラムを行う。


ルワンダ企業と日本企業の提携を促すことなどを通じて、2020年までに現地でICT分野を中心に1000人の雇用を生むことが目標だ。福岡は、この人材育成プログラムを成功させることは、ルワンダにとって支援になるだけでなく、日本にとっても大きな意味があると考えている。


「プロジェクトをきっかけに、日本企業がルワンダで事業を成功させることができれば、同じ事業モデルをアフリカ大陸全土に広げられる。経済発展の早い段階から現地に飛び込むことで、将来のビジネスチャンスが生まれてくる」

この記事をすすめる 編集部へのご意見ご感想

  
ソーシャルブックマーク
このエントリーをはてなブックマークに追加
Facabookでのコメント

朝日新聞ご購読のお申し込みはこちら

Information | 履歴・総合ガイド・購読のお申込み

Editor's Note | 編集長から

PC版表示 | スマホ版表示