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壁がつくる世界

壁に穴550カ所/トンネルに線路 麻薬密輸の攻防戦

米国境警備隊 vs メキシコ・マフィア

米国とメキシコを分かつ壁は、麻薬密輸の最前線だ。米サンディエゴのフェンスは、米当局とメキシコ・マフィアの激しいせめぎ合いで、傷だらけになっていた。(GLOBE記者 村山祐介)


「Abema x GLOBE」壁特集より




米国境警備隊の車両でフェンス沿いを走った。メキシコとの国境に波板の第1フェンス(高さ約3メートル、上の写真奥)が建ち、その十数メートルほど米国側に第2フェンス(高さ約5メートル、写真手前)がある2重構造だ。その間の砂利道を警備隊の車両が巡回し、侵入者を拘束する仕組みになっている。




強固な守りかと思いきや、予想外の光景にあぜんとした。第2フェンスの足元近くに、直径50センチほどの穴をふさいだ跡がほぼ1メートルおきに、点々と続いているのだ。広報担当ティーケイ・マイケル(35)は「この穴はおのでたたき切ったんだろう。昨年だけで550カ所も見つかっている」と話した。




マイケルによると、侵入者は第1フェンスを飛び越え、30~45秒で第2フェンスに丸ノコやおので穴を開けたうえで、いったん退却して様子をうかがう。察知されていないことを確認してから、仲間を引き連れて穴を通り抜けるのだという。



それでも、フェンスの効果は折り紙付き、というのが警備隊の立場だ。「1980~90年代は強盗や強姦が多発し、危険すぎてパトロールできないほどだった。フェンスができて、安全と統制を取り戻せた」とマイケル。実際、管内の不法入国の検挙者数は激減した。



フェンスの構造も実戦を踏まえて、試行錯誤が繰り返されてきた。



第1フェンスの建設が始まったのは1990年。車両を阻む目的で、ベトナム戦争で水田への緊急着陸用につくられた軍の余剰物資が転用された。その後、人も阻止しようと97年、より高さのあるメッシュ状の第2フェンスができた。



当初は人が上れないように先端部分を内側に反らせていたが、逆に反った部分に腰を下ろして上から隊員を襲う事件が相次いだ。先端を蛇腹型の鉄条網に変えると、今度は鉄条網にマットや毛布をかけて、縄やはしごで上り下りするようになったという。



いたちごっこを有利に運ぼうと、先端技術が続々と投じられた。今では遠隔ビデオ監視システムや振動センサー、赤外線カメラ、暗視装置を備え、スタジアム用の大型照明が周囲を照らす。



一方、マフィア側も技術を駆使して抜け道を探る。



フェンスから約200メートルほど離れたところで、マイケルは大型倉庫を指さした。内部でメキシコ側から続くトンネルが見つかったのだという。



最近のトンネルは高度化が進み、横幅は最大1・8メートル、換気や照明設備、運搬に使う荷車用の線路などが設けられ、工事に1年ほどかかる本格的なつくりだ。幅を半分程度に抑えて、工期を短縮する動きもあるという。



こうしたトンネルは「99・99%、麻薬専用」とマイケル。なぜか。「巨額の投資だからだ。麻薬はどこから来たかしゃべらないが、不法入国者は口を割る」


(敬称略)


GLOBE10月号と「Abema x GLOBE」の壁特集の全編はこちらから




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