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太平洋波高し

米軍「パシフィック・パートナーシップ2017」でベトナムへ

南シナ海に面した軍事要衝・カムラン湾拠点に演習


5月下旬、ベトナムのカインホア省にある養護施設をアメリカ軍の軍人たちが訪れた。毎年、米太平洋艦隊が中心となって主催する人道支援・救援活動の多国間演習「パシフィック・パートナーシップ」の一環として、ベトナムに寄港した太平洋艦隊の第7艦隊音楽隊のメンバーたちだ。アメリカはこのような演習にどんな意義を見いだしているのだろうか。取材した一部を写真で紹介する。(文と写真・梶原みずほ)



「パシフィック・パートナーシップ」は米太平洋軍の担当地域内で年1回実施されている多国間演習で、寄港先を毎年変え、今年はベトナムとマレーシアへの訪問となった。米海軍の高速輸送艦「フォール・リバー」(写真中央)が南シナ海に面するカムラン湾に寄港し、数週間にわたり停泊した。海上自衛隊のヘリ搭載型護衛艦「いずも」(写真右)も合流した。



ベトナムは人工島を建造するなど南シナ海で実効支配を強めている中国との間に領有権問題を抱えている国の一つ。またカムラン湾は、間口が狭い入り江になっており、大型船も停泊できる深い水深がある軍事的要衝だ。アメリカは昨年、1975年のベトナム戦争終結後初めて、ベトナム政府に入港を許されている。この軍港でアメリカがプレゼンスを示すことは、中国を牽制する狙いがある。



演習内容は兵器を使用した軍事演習などとは違い、人道、救援に関わる分野や文化交流を通して二国間、多国間関係を強化することに重点が置かれている。「フォール・リバー」にはイギリスやオーストラリアの軍人も乗艦していた。また現地では海上自衛隊とともに現地のライフガードへの指導をしたり、地元住民に対して外科手術や歯科治療を行ったりした。


取材した養護施設は年間100万人が訪れるビーチリゾートのカインホア省・ニャチャン市。年齢は小学生から高校生まで、様々な障害をもつ子どもたちが一つの施設で学んでいた。


第7艦隊音楽隊による音楽が始まると、耳の聞こえない男の子は直接、楽器を手で触ってリズムを感じていた。ほかの子どもたちも、音楽にあわせて立とうするが、職員が行儀よく聴くよう諭しているようだった。



後半に入り、歌手のエミリー・カシャーウ(27)が登場し、ディズニー映画「アナと雪の女王」の主題歌「Let it Go」などを英語で歌い始めた。すると、制止を振り切って子どもたちは次々と前へ飛び出した。



そして、ある歌が始まると、今度は職員たちががまんできないという様子で立ち上がった。手拍子をしながら、ステージにでてきて、一緒に歌い始めた。この曲はカシャーウが数週間でベトナム語で特訓したという「noi vong tay lon」。手をつないで一つの輪になろうという内容の歌で、南北統一や平和への思いが込められているという。子どもたちも職員やアメリカ軍人と手をつなぎ、輪になって踊り始めた。



1時半ほどのショーが終わり、カシャーウに感想をたずねた。「アメリカ人に接するのも、アメリカ軍人に接するのも初めての子どもたちが多かったが、音楽に言語はいらないのだと改めて思った。軍にとっては文化交流はソフトパワー。そのなかでもとくに音楽は個人的な体験として共感を呼ぶものだと思う」。音楽隊は前夜も、ニャチャン市のビーチの特設会場で音楽を披露し、大勢の観光客や地元の人たちが押し寄せていた。










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