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「ミニマリスト」になりたいわけじゃない

世界初! 北欧にできた中古品だけのショッピングモール

モノを売る側に現れる変化の兆し


「持たない暮らし」が先進国を中心に流行するなか、モノを売る側にも変化の兆しが現れている。「買って捨てる」というこれまでの消費スタイルとは異なる「循環型経済」と呼ばれる取り組みだ。(宋光祐、敬称略)


15年8月にオープンしたショッピングモール「レトゥーナ」

スウェーデン南部の工業都市エスキルストゥーナに2015年8月、新しいショッピングモールがオープンした。「レトゥーナ」と名付けられたこのモールに入るのは、洋服や家具、食器、電化製品などを扱う9店舗。ただしいずれも取り扱うのは、リサイクルやアップサイクルの製品だけだ。アップサイクルは、中古品を加工して価値を高めた製品のことで、欧米を中心に市場が広がっている。モールのマネジャーを務めるアンナ・ベルストロム(43)は「ただ気晴らしにモノを買うのではなく、なにをどう消費するのか。どうしてモノを買うのか。このモールを訪れることが、持続可能な暮らしについて考えるきっかけになって欲しい」と話す。


スウェーデンなど欧州には、チャリティーやNPOを中心に運営されるフリーマーケットなどで中古品を売り買いする文化が以前から根付いているが、レトゥーナはあくまでも利益を上げるための商業施設。環境保護やサステナビリティー(持続可能性)のために中古品などのリサイクル製品しか売らないというスタイルでも、お金を稼いでビジネスとして成立させることが可能だと証明することを目指している。1日の平均来場者数は600~700人で、昨年1年間の売上高は810万スウェーデンクローナ(約1.1億円)に上った。来場者数は当初想定した数の2倍以上だという。

エントランスホール中央には処分された椅子などを加工してつくった円形のベンチが据えられている

レトゥーナの敷地にはリサイクルセンターが併設され、住民は要らなくなった持ち物を無料で廃棄物として持ち込める。モール側は引き取った処分品のうち、まだ使えるモノを家電や家具などテナントごとに選別。テナント側は修理やアップサイクル用の加工など、必要な仕事を加えてから商品として店頭に並べる。「新品を扱わないショッピングモールは世界でもここにしか存在しません」とアンナ。オープン後は世界各国から視察や取材が相次ぐなど、注目が集まっているという。

バックヤードではテナントやモールのスタッフが持ち込まれた処分品を選り分ける

2階には、アップサイクルの技術を学ぶことができる教育センターもある。木や生地などを使ったこれまでの中古品の加工技術に加えて、プラスチックや廃品をどう加工すれば価値の高い製品にできるかを学ぶことができる。ほかにも期間限定のポップアップストアの出店スペースもあり、起業を目指す人たちに多くの機会を与える仕組みもある。モールを訪れた人の中には、コーヒーカップ用のソーサーをインテリア用品に改造した製品などを見て、商品を買わずに家に帰って、自分でアップサイクルに挑戦する人が現れているという。

ソファから小物などの生活雑貨まで何でもそろう。どの商品もリサイクルやアップサイクル製品

レトゥーナができた背景には、エスキルストゥーナ市の事情もある。同市はスウェーデン国内でも、有数のリサイクル都市だとされる。一方で、失業率がほかの都市と比べて高く、雇用の創出が課題になってきた。そうした中で、約10年前から未来のビジネスの形として、モノを買っては捨てる従来型の消費システムとは違う循環型経済の仕組みを学べると同時に雇用の創出や利益を生み出せる施設を作ろうというアイデアが地元の住民や政治家の間で議論になり、レトゥーナの開設が決まったという。

モールのマネジャーを務めるアンナ・ベルストロム(右)

モールを運営するのは、電力販売やリサイクルセンターの運営などを主な事業としてきたエスキルストゥーナ市の公営企業。レトゥーナにもリサイクル事業の一環として市から補助金が支給され、テナント料が安く抑えられている。しかし、補助金は段階的な削減が決まっており、来年からは周辺の相場に合わせた価格に改定される見込みのため、売り上げを増やすことが当面の課題になっている。アンナは「世界中のショッピングモールは、企業がモノを作ることや消費者がモノを買うことの態度を変えるために力を尽くすべきだ。私たちはレトゥーナをその良い例にしたい」と話す。


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