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なぜ幼児教育か

なぜ英国王室はモンテッソーリ教育を選んだのか

ジョージ王子
photo:Reuters



イギリスのウィリアム王子とキャサリン妃の長男ジョージ王子が通い始めたことで脚光を浴びたモンテッソーリ教育を掲げる幼稚園。半世紀以上前、イタリアの女性医師マリア・モンテッソーリが考案した教育プログラムは自立した子どもを育てることを目指すもので、世界中の幼児教育で採用されている。なぜモンテッソーリ教育なのか。日本で普及に取り組む日本モンテッソーリ教育総合研究所の主任研究員で、付属の「子どもの家」副園長として日々、子どもたちと接している櫻井美砂に話を聞いた。(文中敬称略)



モンテッソーリ教育は英才教育ではありません。子どもにもともと備わっている「自分で育つ力」を引き出すための環境を整えること、子どもの自立を援助することが教師の主な役割となります。


ですから一斉指導というスタイルはとりません。何かを教え込むのではなく、教室にある様々な教具を使ってやりたいことを子どもたち自身が選び、取り組むようにします。教師が提案することもありますが、やるかやらないか決めるのは本人次第です。自分でやると決めたことだから、課題を解決するための方法を工夫したり、時間がかかってもやり抜くものだという意識を持たせたりすることができる。また、そうした経験を積み重ねることで、幼稚園の年中や年長に相当する年齢になったとき、ちょっと難しい課題を見つけたり、これまで興味のなかった課題を示されたりしてもやってみようと挑戦する力が育つのです。


以前は一斉指導型の幼稚園に勤めていました。カリキュラムがあって一日をどう過ごすのかあらかじめ決めているのです。それだと先生の力量にもよりますが個々の発達課題に柔軟に対応するのは難しいと思いましたね。子どもたちも自主性を促される環境で育つと、何をすればいいのか自分で考えたり、逆に先生に対してこうして欲しいと提案したりできるようにもなりますよ。


たとえばクリスマス会で劇をやることになり、その練習をするとします。預かっている2歳半から年長相当の子どもたちまで一緒に練習するのですが、2歳児でも演じられるように年上の子どもが援助したり、「先生のピアノがもう少しゆっくりだと小さい子も歌えるよ」とアイデアを出してくれたり。一斉指導型の幼稚園教諭をしていたときには、そういう意見がこどもたちから出ることはありませんでした。



大人に管理されることに慣れてしまうと・・・

「子どもの家」副園長の櫻井美砂

先生が前に立って指導するスタイルだと、先生のいうことをちゃんと聞いていた子どもでも先生が代わった途端に言うことを聞かなくなっちゃうということもありました。「自由にしていいよ」と言うと逆に不安になる子どももいましたね。大人に管理されることに慣れてきた子どもは、どうふるまっていいかわからず戸惑うみたいです。


いっぽうのモンテッソーリ教育は、先生の力量が非常に試されることにもなります。こどもの観察の結果で援助の内容が異なってくる。適切に観察できなければ、ただの放任になりかねません。その子の成長に貢献できるような関わりができるようになるために、教師は常に質の向上に努めなければならないのです。


一概にはいえませんが、ちょっと前までは、幼稚園や保育園の教育的な役割を保護者はそれほど期待していなかったと思うんです。幼児の段階は遊んでいればいい、預かってくれるだけでいいと。それがいまは、父親も含めて教育に熱心ですよね。ネットを通じて海外の教育法を勉強している親も多い。そうした親の期待にこたえられるようにしたいと思うのです。幸いモンテッソーリ教育を学んでいる現役の先生方を見ていると、幼児教育に携わっていることへの責任感と問題意識をもって勉強される方が増えていますね。そう考えると、待機児童の問題は解決しなければいけないけませんが、保育者の数をいたずらに増やすだけでなく、保育の質が落ちないように取り組む必要があると思いますね。

(構成:中村裕)

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