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なぜ幼児教育か

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「成長思考」育てる遊び方とほめ方 マシュマロテストの保育園で

サンフランシスコ・ビング保育園

広々した屋外でボランティアのミュージシャンが子どもたちを集めて演奏会を開いていた
photo:Nakamura Yutaka

目の前のおやつを食べずに我慢できた子どものその後を調べたら、良い結果が出た――。いわゆる「マシュマロテスト」のきっかけとなった子どもの自制心を調べる比較実験は、米サンフランシスコにあるビング保育園が舞台となった。この育園は、スタンフォード大学の発達心理の調査研究に協力することを目的の一つとして1966年に創立。その後、数多くの研究を支えるとともに、保育の質の向上に取り組むことでベイエリアでは名門保育園の地位を築いている。スクールディレクターのジェニファー・ウィンタースに話を聞いた。




私たちの園では、2歳児から4歳児まで各年齢の男女をひとりずつ選び、計6人で1グループをつくってもらいます。異なる年齢の子どもが一緒に過ごすことでお互いに良い刺激が得られると期待しているからです。


たとえば4歳の子どもが木工細工で家をつくりました。見よう見まねで年下の子が同じようにつくろうとするのですが、選んだ材料の大きさがばらばらでうまく組み立てられない。そこで教師はお兄さんお姉さんから教わることを提案します。


その場合、教わる子どもだけでなく、教える側の子どもも、わかりやすく説明するためにはどんな言葉を使えばいいのか考えることになり、表現力をみがくことにつながります。リーダーシップを備える経験にもなりますね。


子どもは成長するうえで、自分一人の力でできる水準を少し超えた、他者の助けがあればできるようになる水準に挑むことが大切です。その場合、手をさしのべる他者は教師に限りません。


かつては家庭の中にきょうだいがたくさんいて、近所にも同じ年頃の子どもたちがたくさんいたものです。園の環境はまさにそれでしょう。そうした環境の中で色んな経験を積むことで子どもたちは社会性が伸びるのだと考えています。その場合、教師の役割はファシリテーター(調整役、促進者)ですね。

ジェニファー・ウィンタース
photo:Nakamura Yutaka

この園で過去に行われた研究結果が実践で生かされることもありますよ。


スタンフォード大学教授のキャロル・ドウェックは、自分の能力は変わらないと考える「固定思考」の人と、人は変われると考える「成長思考」の人を比べ、後者の方がよい結果を生む傾向にあること、そして、その「成長思考」は子どもの頃の褒められ方で育つと指摘しました。私たちはたとえばお絵かきをしている子がいたら、完成した絵の出来をほめるのではなく、熱心に絵を描いた姿勢やプロセスをほめるようにしています。


読み書きの能力や数的な能力もこの時期から身につけるべきだと思っていますが、座学で一斉にお勉強するというスタイルはとりません。たとえば、積み木遊びをしているとき、「あといくつ積み木があればいまつくろうとしているものは完成するの?」と問いかけるとか。「積み木を崩さないで」と注意書きを残したらどうかと提案して、読み書きへの関心を促したりとか。子どもひとりひとりを注意深く観察して、その子の発達に応じた声がけをし、親にも保育園での子どもの過ごし方を伝えて家庭でその続きができるようにお願いしています。



photo:Nakamura Yutaka

園の基本方針はとてもシンプルです。子どもたちに自由に思い切り遊んでもらう。1日のうち少なくとも2時間は、大人にさえぎられることなく遊び続けられるようにしています。そして、私たちは子どもたちに何が足りないのかではなく、何ができるかという観点から見守るのです。


良い教師とは、子どもがいまどこにいるのかよく観察し、理解している教師のことだと思っています。


(構成:中村裕)


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