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京都へおこしやす

「簡単に入り込めない」イメージは、京都のブランド戦略?

移住プロジェクトの代表に聞く、「住む京都」の魅力

 GLOBEの特集「京都へおこしやす」では、外国人を迎える京都人の複雑な感情を描いた。「京都ぎらい」の著者、井上章一さんのインタビューでは、その内面も解説してもらった。そのためか、読者からは「京都って怖いところですね」という声も。でも、そんな京都ではいま、日本の20~30代の移住が目立ってきている。観光ではなく、「住む京都」の魅力とは。移住応援プロジェクト「京都移住計画」の代表、田村篤史さん(32)に聞いてみた。(GLOBE編集部・西村宏治)


田村篤史さん

――「京都移住計画」を始めたきっかけと、取り組みについて教えてください。

もともと私は、京都市周辺の長岡京市の出身です。2007年に大学を卒業して東京に出ました。やはり東京は一度見てみたかった。地元を出て行く方が、エネルギッシュで魅力的に見えたんです。でも、一生住むところじゃないなと、5年ほどで京都に戻るつもりでいました。


東京ではシェアハウスの運営などもしていたのですが、友人の輪が広がっていくうちに、同じように「いつかは京都に戻りたい」と思っている人たちが多いことに気づいたんです。そこで、2011年、SNSに京都へのUターン情報を交換するサイトを立ち上げました。求人情報が中心でした。これが広がり、私が京都に戻った後の2013年に本格的な企業紹介のウェブサイトを立ち上げ、2014年には不動産に詳しいメンバーが加わって、不動産の紹介も始めました。いまは移住希望者の相談に乗ったり、仕事や住まいを紹介したりしています。京都市だけでなく、京都府内への移住もお手伝いしています。


――移住の希望者と、移住者との交流会も重ねていますね。

京都に戻るにしても、仕事や住まいの不安は大きい。そこで、実際に移住者どうしのコミュニティーをつくろうと、交流会「移住茶論」を始めました。2012年の冬です。もともとは、移住者の集まりだったのですが、こうした場所に出てきてくれるのは、自分からつながりを求めている積極的な人たち。そこで、新たな人の輪が生まれ、広がり、移住希望者との交流会も始まっていきました。これまでに30回ほど開いています。


――Uターンが多いんですか。

そういうつもりで始めたのですが、実際には(出身が京都以外の)Iターンが多いです。私たちが、なんらかの形で移住にかかわった人はこれまでに300人ぐらいですが、うちUターンは3割弱です。7割強がIターンですね。私たちに連絡してくる人たちは、外から来た人どうしのつながり、安心感を求めている面があると思います。もともと完全に地元にアクセスできる人は、Uターンするなら自分でいろいろ探せますから。

京都移住計画などが、3月下旬に東京で開いた移住希望者の交流会。移住者たちが体験を語り、意見を交わした=千代田区

――観光地ではなく、移住先としての京都の魅力はなんなんでしょう

移住者の話で多いのは、ひとつはハード面です。大きすぎず、田舎過ぎないサイズ感ですとか、自転車でどこでも移動できるとか、すぐ近くに自然があるとか、そういうところが人気です。もうひとつは、文化です。伝統文化が身近にあるところですので、お茶、お花、工芸とかそういうことに関心のある人たち。それから歴史好きという方もいますね。「ここで千利休が水をくんだのか」とか、そういうことを楽しめる人たちです。「日本らしさ」へのあこがれがあるんだと思いますよ。


――観光から、移住へという流れもあるんでしょうか。

それも、あるんじゃないですか。消費する観光、たとえばお祭りを見に行くことから、移り住んだからこそ味わえる、お祭りをつくる側とかかわりを持つようになっていくこともあると思います。


――京都って、よそ者に冷たいとか、入り込むのが難しいイメージですよね?

それって、ぼくは実は京都の戦略じゃないかと思っているんです。京都の「逆ブランディング」ですね。つまり、入り込むのが難しいと思わせることで、ブランド価値を上げているんじゃないですか?難しいなら、それなりの覚悟のある人しか集まってこないでしょうし、簡単に手の届かない存在だからこそ、行きたいという人が出てくる。


――財をなすと京都に別荘を持ちたくなる、という感じでしょうか。分かる気はしますが、それでも、よそものは暮らしにくくないですか?

京都とひとくちに言っても、面積はかなり広いです。中心部も都会ですから、暮らし方は選べます。イケズとか、難しい人間関係があるとか言いますが、そういうところに入っていくことを選ばなければ、ドライに暮らせます。カラッと暮らしたいなら、そういう場所を選べばいいんですよ。


でも、いろんな方が言っていますが、京都は「大きな田舎」でもあると思っています。これだけの都市なのに、行事や地域に対する大人たちの熱量がすごいんです。そういうものに触れると、地元の人間関係も大事だと感じてきます。

昨年12月のイベントでは、小さな商いを手がける移住者たちが経験を振り返った=京都市下京区

――たしかに、町内対抗の運動会などもやっていますね。地域の子どもたちに、無料の英語教室を開いているような町内会もあります。

都市の中心部で、そこまでやっているところは少ないんじゃないでしょうか。少なくとも、東京ではあまり聞かなかったですね。私もいまは京都市内に住んでいますが、夏に地域のお地蔵さんをおまつりする地蔵盆という伝統行事があります。子どもたちが集まる行事ですが、そういう行事に参加すると、地域のほかの子どもたちや、親御さんたち、あるいは町内のひとたちと知り合える。すると翌日から、通りで会うひとがどこの誰ということが分かるようになる。そんな行事を通じたコミュニティーづくりが、実は地域の治安を守ることにもなっているんだということが、住んでみて腹に落ちるようになりました。地蔵盆だけではなくて、お祭りも多いですし、そういうことをまだまだやれる、そういう地域の熱量が、観光では味わえない、住んでみて分かる京都の魅力だと思います。


――そうしたことにひかれて移って来る人も多いですか?

それは、移ってきて感じることじゃないでしょうか。以前、京都が好きで移住してきた新潟出身の女性がいたんですが、彼女も京都でそういう大人たちを目の当たりにしたんです。みんながあんまり地域のことに積極的なんで、衝撃を受けたんですね。一方で私たちは、移住者どうしのコミュニティーづくりのために、同じ出身地の人の会合を開くことがあるんですが、そんな時は地元話で盛りあがります。すると「これまで気づいていなかったけど、新潟にも色々いいところがあるんじゃないか」という話になってくる。彼女も最終的には新潟に戻って、いまは「新潟移住計画」というプロジェクトを手がけています(笑)。


――京都経由で、地元に戻っていくイメージですね。

そうですね。京都にはもうひとつ、学生の街という側面があります。京都市の人口の1割は学生ですし、その半分以上は京都以外から集まっていると言われています。ですからイメージとは違って、実はよそものの多い街とも言えるんです。


私たちのプロジェクトは、あくまで「移住したい」という人の応援ですが、そこでは、実は京都を終のすみかにする必要はないんじゃないか、とも思っています。京都である程度暮らし、地域づくりとか、地域のあり方を学んでもらって、それを地元に持って帰る。そういうことのお手伝いもできるんじゃないでしょうか。都市でありながら、そんな地域づくりを学べる。それも、京都の大きな魅力かもしれません。


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