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韓国のあした

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外国人労働者がいないと回らない

韓国・中小企業の現場から


韓国政府は「雇用許可制」を2004年から始め、原則5年未満の期間で外国人労働者を受け入れています。少子高齢化時代の労働力不足を補うのが目的です。外国人を「実習生」として受け入れている日本より踏み込んだ政策といえるのかもしれません。人口約76万の約1割を外国人労働者で占める安山市の現場を歩きました。(神谷毅)




紙パイプ製造会社の工場で働く外国人労働者


紙パイプ製造会社

代表 アン・ソングン(67)


15人いる社員のうち8人が外国人です。フィリピン、カンボジア、ベトナムなどから来ています。みな誠実に仕事をしてくれます。外国人だからといって差別することはありません。本人が努力すれば、それには報いたいですから。


労働者たちは寮に住み、食事も会社がまかなっている。休みは自由に行動できるので、いろんなところに出かけているようです。大きな利益を出している会社ではありませんが、家族のように一緒にやっている。そんな自負はあります。


うちのような中小企業の工場は肉体的につらい仕事なので、韓国人は働きたがりません。韓国人の社員もいますが、個人主義的で要求が多い。賃金の水準も高すぎる。中小企業は家族単位で経営しているところがほとんどで、大企業からコスト削減を求められることも常にあります。韓国人労働者が求めるような賃金アップは難しいのが現状です。


外国人労働者の滞在期間は原則5年未満ですが、その間に「誠実労働者」として認められれば、一度帰国した後、再び韓国に来て働くことができます。会社の立場としては、仕事に熟練したら、もっといてほしいと思うものです。実際、私たち中小企業の経営者たちは、外国人労働者を割り振る地域の雇用センターに毎年、労働者がもっと長く働けるよう制度を改めてほしいと求めています。


この会社で働くサオ・マップ(32)


2010年にカンボジアのプノンペンから来ました。1回目の期間を終えて、今回の滞在は2回目。カンボジアでは指輪などをつくっていましたが、収入がとても低く、不安定だった。韓国に来れば安定的な収入を得られると聞き、やって来ました。今は月給160万ウォン(約16万円)を受け取っています。カンボジアのころの10倍ほどです。手当を含めると、240万~280万ウォン。このうち6割ほどを実家に送っています。


来て良かったなと思うのは、良い社長に出会い、月給も多いこと。難しいのは、やはり言葉です。あとは辛い料理が苦手。なにしろ料理は真っ赤っかですから。


現実的に言えば、ここにはお金のために来ている。稼いだらカンボジアに帰って家庭を持ちたいです。


自動車部品会社

代表 ユ・グニョン(59)


うちの社員35人のうち外国人は12人です。当初はモンゴル人を雇っていましたが、フィリピン人が真面目に働くと聞き、今はフィリピン人だけにしています。彼らはとても一生懸命、仕事をします。雇用主にとっては、それがすべて。韓国人は手を汚す仕事を避ける傾向がありますが、彼らは違う。とても頼りになります。難しいのは意思疎通ですが、あとはほとんど問題ありません。


仕事は4年もたてばかなり熟練する。そこで期間を終えて母国に帰ってしまうと、会社にとっては大きな損失です。うちのフィリピン人労働者のほとんどは、誠実労働者として認められて2回目もやって来ます。もっと長い期間、雇えるように政府はなんとかしてほしいです。


この会社で働くマーク・サンマテオ(35)


06年にフィリピンのマニラから来ました。今回が2回目。給料は休日に働いて受け取る特別手当を含めると月300万ウォン(約30万円)。フィリピンで働いていたころの10倍ほどです。うち120万ウォンを家族に送っています。


職場で差別はないけれど、仕事が忙しすぎる。休みがしっかり取れないのが、ちょっとね……。休みが取れた日には、寮の部屋で家族とインターネットを通して会話をすることが多いです。


もし制度が変わったら、ずっとここで仕事がしたい。フィリピンにいる妻と娘も韓国に招いて、一緒に住みたい。


外国人住民相談支援センター

事務局長 クォン・スンギル(53)


ここは08年、同様の支援センターとしては全国で初めてできました。インドネシアやベトナム、カンボジア、フィリピンなど14カ国の言葉で相談を受け付けています。相談員のほとんどは韓国人と結婚した女性です。母国語はもちろん韓国語も上手。長く勤めている人が多いので問題を解決する能力も高い。このためか安山市だけではなく全国から外国人労働者が相談にやって来ます。市の外からの相談が約3分の2を占めます。

安山市の外国人住民相談支援センター。各国の言葉ごとに相談するブースが分かれていた


寄せられる相談の多くは労使関係です。ただ、かつてより労使関係は良くなっていると感じます。こんないい話もありました。ある会社のインドネシア人労働者が、がんになった。会社の社長がセンターに相談に来たのでインドネシア大使館に相談すると、亡くなったら搬送できるが患者の場合は自力で帰国して治療するしかないと言う。そこで社長が韓国で手術を受けられるよう費用を払ってくれたのです。


他にも、天井から水が漏れているとの苦情を大家に伝えてほしいなどといった相談も来ます。韓国語ができないと、こんな小さな問題でも外国人にとっては対応するのが難しいからです。このセンターは外国人に関する問題なら、すべて請け負っていると言っていいかもしれませんね。


相談に来るのは労働者ばかりではありません。先日、インドネシア人労働者の男性と、中国人留学生の女性の間に生まれた子どもの無国籍の問題がありました。母親が中国に逃げるように帰ってしまい、父親が子どもをインドネシアに連れて帰ろうとしたところ、無国籍の状態でパスポートがないことが分かった。そうこうしているうちに父親の滞在期間が過ぎ、不法滞在になってしまった。私たちも支援に奔走しましたが解決できないでいたところ、たまたまこの問題が大きく報じられ世論の関心を引いた。インドネシア大使館が一時的なパスポートを発行してくれ、なんとか解決できました。

 

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