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国境を越える電力

「電力網は温暖化対策の中核担う」

国際エネルギー機関(IEA)ファティ・ビロル事務局長インタビュー

時代のニーズと技術の進歩で、かつてない力をまとった電力網。その可能性と課題について、欧米や日本など29カ国が参加し、エネルギー政策の分析、提言を担う国際エネルギー機関(IEA)の事務局長、ファティ・ビロル(58)に電話で聞いた。


2015年9月に東京都内でインタビューに応じたときの、ファティ・ビロルIEA事務局長=村山祐介撮影

――電力網が国境を越え、海をまたいで国々を結んでいます。現状をどう見ていますか。

電力網は、電力の安定供給と割安な調達、そして地球温暖化対策の目的を達成するための国際的な取り組みにおいて、中核を担っています。電力というと、多くの人たちはまず発電所のことを思い浮かべますが、実際には、2015年の世界の電力分野の投資約6820億ドル(約76兆円)のうち、発電は6割ほど。国と国、また国内を結ぶ電力網にも4割が投じられています。国と国、地域と地域で電力をやりとりするには、もっともっと多くの投資が必要です。

電力の国際連系線は、規模が大きくなればなるほど恩恵も大きくなります。大容量の連系線は電力の供給と需要の不均衡を整えて、効率化するのにとても有益です。太陽光と風力といった再生可能エネルギーを活用したり、遠隔地にある資源を取り入れたりすることにも大きく役立ちます。

一方で、国と国の相互依存がとても強くなることは、一カ国で何かが起きると他の国々が影響を受けやすくなるということも意味します。

――日本は周辺国と電力網で結ばれていませんが、民間ベースでは事業化の調査が進み、ロシアもサハリンから北海道への電力輸出に意欲を示しています。日本には何をもたらすのでしょうか。

日本は国内のエネルギー資源が限られた国です。純粋に技術的な観点で見れば、周辺国との電力網の連系は大いに可能性があります。高圧の国際連系線は、新しく発電所ができたのと(電力を調達するという意味では)同じような機能を果たします。こうした国際連系線が安全面での心配を大きく高めるものではありません。

しかし、日本は国際連系線のコストと利点について、再生エネを電力網に取り込んでいくための他の方法と比べながら、慎重に検討すべきだと思います。

国際連系は重要な経済的利益をもたらす半面、経済活動の極めて重要な構成要因である電力が連系することで、地政学的な課題に直面するかもしれません。

――電力調達における依存度が高まると、政治的に利用されかねないという指摘もあります。

ロシアは有数の原油とガスの生産国で、水力発電もしている国際的なエネルギーシステムの要です。日本とロシアは隣国ですので、日ロ間でエネルギーの取引が増えるのは自然なことです。

しかし、電力の国際連系にあたっては、エネルギーと経済の側面だけではなく、戦略的、地政学的な面からの検討も必要です。輸出国に経済と社会生活が依存し過ぎると、輸入国にとっては長期的で深刻な課題をもたらしかねません。

どんな二国間関係であっても、晴れの日があれば雨の日もあります。国際連系を考えるときは、雨の日のことも考えなくてはなりません。

(聞き手・村山祐介)


<国際エネルギー機関>第1次石油危機を受けて、米国の提唱でエネルギーの安定供給を目指して1974年に設立された。経済協力開発機構(OECD)メンバーの29か国が加盟し、エネルギー政策の評価や提言、市場分析、緊急時対応を担う。事務局はパリで、職員は約250人。

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