RSS

国境を越える電力

この記事をすすめる 編集部へのご意見ご感想

  
ソーシャルブックマーク
このエントリーをはてなブックマークに追加

デンマーク流「風とつきあう秘訣」とは

国営送電会社の副社長に聞く

風力が国内の電力需要の4割超を担うデンマーク。気まぐれな風とどうつきあっているのか。中部フレデリシアにある国営送電会社エナジーネットDKの本社で、副社長ピーター・ヤーカンソン(62)に聞いた。




エナジーネットDKの副社長ピーター・ヤーカンソン=デンマーク中部フレデリシア、村山祐介撮影

――変動が大きい風力発電をどうやって受け入れているのですか。

風が吹かなければ火力で発電したり、大量に輸入したりしますし、風が強くて国内需要を超えるときは輸出しています。ダイナミックな発電と輸出入が、風力を抑制しないで運用できる秘訣です。

そうした調整をしているのは、我々の給電指令所ではなく、電力市場です。無風で価格が高くなれば発電や輸入が促され、逆に強風なら価格は安くなります。電力にマイナスの価格がついて、化石燃料など発電コストの高い電源に停止を迫ることすらあります。


―― 一定の出力で発電し続ける「ベースロード電源」はないのですか。

1年前に中国人記者にも同じことを質問されました。答えはとても簡単です。「ベースロード電源」なんてものはないのです。

15年前、我々の技術者に風力をどこまで受け入れられるか聞けば、3%とか10%と答えたでしょう。今では40%以上で運用しています。多くの国は無理だと言いますが、ツールやノウハウを30年かけて培い、可能だったことを証明できました。政府が責任を持って、これが進むべき道だと示すことが必要です。


――ツールとはどういうものですか。

強い送電網と国際連系線が極めて重要になります。そして価格差に応じた取引を促す国際的な電力市場があることで、インフラを常に効率的に利用できます。柔軟な発電システムも必要です。多くの国では、大規模石炭火力発電所は定格出力の30%までしか出力を下げられないと言いますが、我々はときに5%まで下げます。

風の状態や電力需要の予測も分刻みで更新しています。1時間前の時点で、設備容量の1・5%以内の誤差で風を予測できるようになりました。風の不確実性は、大規模停電への備えとして必要な予備力よりはるかに少ない水準なのです。


――輸出入は誰にメリットがあるのでしょうか。

デンマークがノルウェーから電力を輸入する場合、安い電気を使えたデンマークの電気利用者と、電気を高く輸出できたノルウェーの発電事業者が利益を得ています。逆もしかりです。両国の価格差がなくなった状態では、送電会社が収益を得る仕組みになっています。年間を通じて社会全体に利益をもたらしています。

風力が多いデンマーク、水力がほとんどのノルウェーは、周辺国と連系することで多様性を得ているのです。相互に依存することを受け入れて、隣国を一定程度信頼しないと利益は得られません。でも、一カ国に100%依存することはしません。


――日本では地域間の連系すらあまり進んでいません。

東京電力福島第一原発事故の後、日本のような高度に産業が発達した先進国で、他の地域に余力があったのに連系線が乏しく、電力供給の再構築に長い時間がかかったことを知って大きな衝撃を受けました。

送電会社が地域で分かれる必要はあるのでしょうか。当社も10年余前に合併する前は東西の別々の送電会社でした。ずいぶん長い間、東西を結ぶ連系線をつくろうとするといつも問題が起きて意思決定できなかったのですが、合併したら2,3年のうちにつくることが決まりました。いまでは笑い話です。

(聞き手 村山祐介)


<エナジーネットDK> 電力とガスを独占供給するデンマークの国営会社で、地域の送電とガスの計4社の合併で05年に発足した。15年の収入は約1970億円、従業員約900人。ノルウェーとスウェーデン、ドイツとの間に国際連系線がある。


エナジーネットDKのホームページでは、周辺国との電力輸出入の状況がリアルタイムで示されている。エナジーネットDKのホームページ


電力の輸出入や需要と供給のバランスを監視する中央給電指令所=エナジーネットDK本社、村山祐介撮影
Facabookでのコメント

朝日新聞ご購読のお申し込みはこちら

世界のどこかで、日本の明日を考える 朝日新聞グローブとは?

Editor’s Note 編集長から