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自閉症を旅する

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安心、ヘアカット



不安が強かったり、じっとしていられなかったりして散髪が苦手な発達障害の子どもが安心できるよう、障害の特性に配慮してヘアカットに取り組む美容師がいる。理解ある理美容師を増やそうと京都市でNPOを設立。北海道や関東にも試みが広がっている。


京都市伏見区の美容院「ピースオブヘアー」代表、赤松隆滋さん(40)のもとには、関西各地から散髪が苦手な発達障害の子どもが来る。児童館などでも定期的に散髪の会「スマイルカット」を開いている。


11月上旬に伏見区であったスマイルカットに参加した近くの小学4年、恩田喜美恵さん(10)は幼少時から散髪を嫌がった。昼寝の最中に母の知恵子さん(42)が前髪を切るのがやっと。後ろ髪は腰に届いていた。歯科医では暴れて危ないため全身麻酔で治療する。


昨夏にスマイルカットに来た際、赤松さんがまず自分の髪を切って「痛くないよ」と教えたところ、髪を1本だけ切れた。2回目は10本。最近は漫画の登場人物の髪形をリクエストする。


近くの小学2年、岡本真輝君(7)は幼少時、理容室で泣いて暴れ、来店を断られ続けた。昨夏に初めてスマイルカットに参加。赤松さんは30分ほど遊んで緊張をほぐし、時計を示して「針が5を指したら散髪は終わり」と提案した。真輝君は数字に関心があり、そのこだわりに着目したところ、嫌がらず散髪できた。


近くの高校1年、植田燎(かがり)さん(15)は、散髪されながら笑顔を見せた。幼少時から母の千晴さん(42)がカットしたが、いつもおかっぱ。千晴さんは「おしゃれになれてうれしい」と言う。

4年前、発達障害の男児の母親から「散髪を嫌がる」と相談されたのが取り組みのきっかけ。障害の知識がなく散髪を引き受けたところ、男児はバリカンの音でパニックを起こした。


赤松さんはショックを受け、本などで障害を学んだ。発達障害では、見通しが立たないことに不安を感じたり、感覚が過敏だったりする例がある。男児は聴覚が過敏で、耳の近くのはさみの音も苦手なことがわかった。「今から切るね」と声がけをするなどしたところ、次第に慣れた。


大学教授らの助言も受けた。赤松さんは必要に応じ衣服の上からケープを巻いたり洗髪したりする手順を最初に絵カードで説明。見えにくい場所を合わせ鏡で見せることも。口コミで広がり、発達障害の子ども延べ約500人を散髪した。


4月には、美容師仲間や福祉関係者ら約10人とNPO法人「そらいろプロジェクト京都」を立ち上げた。現在は、散髪のコツを盛り込んだ動画を制作中だ。「配慮や工夫によって発達障害の子どもの散髪はできることを伝えたい」という。


活動は広がりを見せている。長男(8)がアスペルガー症候群の北海道浦河町の美容師、木下まりかさん(35)は6月、赤松さんを招き、美容師向けの講習会などを開いた。以後、自身も障害の特性に配慮した散髪に取り組み始めた。


発達障害の園児を指導している横浜市の幼稚園補助教員、山田利絵さん(43)も、年明けから東京や埼玉に住む美容師と一緒に、活動を始める。山田さんが、事前に保護者の希望を聞き、調整役を担う。(太田康夫)



◆キーワード

<発達障害> 生まれながらの脳の機能障害が原因とされる。対人関係などに困難がある「自閉症スペクトラム障害」や、落ち着きがない「注意欠陥・多動性障害(ADHD)」、計算など特定分野が極端に苦手な「学習障害(LD)」などをいう。「自閉症スペクトラム障害」には、自閉症や広汎(こうはん)性発達障害、アスペルガー症候群などが含まれる。


(2014年12月5日掲載)

 

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