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人工知能を愛せますか?

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アルファ碁の強さとは 深層学習で身につけた「大局観」



人工知能(AI)に関する昨年の最大のニュースはなにか。多くの人が、英ディープマインド社の囲碁AI、「アルファ碁」が、世界のトップ棋士をやぶったことをあげるでしょう。20年前にはチェスの世界チャンピオンに勝ち、将棋でもプロ棋士の棋力をつけたといわれるAIですが、盤面が広く、はるかに多様な打ち方ができる囲碁では、「あと10年はかかる」といわれていたからです。

デミス・ハサビスCEOのツイート

この年末年始、ネット上の中国の囲碁サイトで、世界のトップ棋士を相手に連戦連勝した謎の棋士も、じつはアルファ碁の進化版でした。



なぜ、そんなに早く、地力をつけることができたのか。将棋や囲碁のAIに詳しい、公立はこだて未来大学の松原仁教授は、AI技術のひとつ、ディープラーニング(深層学習)を組み込んだことで、アルファ碁が、自分で自分を鍛え上げ、プロ棋士を上回る「大局観」を身につけたため、と分析します。


松原教授によると、同じAIでも、将棋とアルファ碁では、目指したものが違うといいます。この10年間、将棋AIが磨いてきたのは、どこまで先を見通すか、その先読み、深読みの力でした。通常、14~15手先までというプロ棋士の読みに対し、いまの将棋AIは、ときに20手以上先まで読むことができるといいます。この先読み力が、トップ棋士と互角に戦う棋力のもとになっている、というのです。

松原仁教授(撮影・田中郁也)

これに対し、アルファ碁が手に入れたのは、「深く読む能力というよりも、ぱっと盤面をみたときに、どこがいま大事なのかを見極める能力」だと松原教授はいいます。「人間でいえば、直感とか、大局観といわれるものが、何百万回にも及ぶ、AI同士の自己対局で培われ、人間に追いつき、追い越したのです」


それぞれの駒に異なる動かし方のルールがある将棋と違い、囲碁は、白と黒の石で陣地を取り合うゲームです。そんなシンプルなルールであることも、勝つための手順や法則を自分自身で導き出していく深層学習に向いていたと松原教授はみています。


もともと深層学習は、グーグルの「ネコ認識」が注目を集めたように、画像(イメージ)認識が得意分野のひとつです。盤面に置かれた白石と黒石の配置をイメージとして読み取り、ここから陣地を広げるには、どんな手が望ましいかを判断するのは、ある意味、お手のものだったともいえるでしょう。


こうした「自己学習」する能力を身につけた深層学習の登場で、AI技術の役割は、従来とはまったく異なるものになった、とマサチューセッツ工科大のマックス・テグマーク教授(宇宙物理学)は指摘します。

マックス・テグマーク教授(撮影・田中郁也)


「Good Old Fashioned AI(古き良き時代のAI)」、略して「GOFAI」。テグマーク教授がそう呼んでいる従来型のAIの場合、その「知能」とは、「実は、そのプログラムを開発した技術者やプログラマーの『知能』の反映にすぎなかった」と、テグマーク教授は指摘します。


どんな手順で計算し、答えをだすか。音や画像をどう見分けるか。そのルールや原理は、あらかじめプログラムとして書き込まれ、コンピューターに指示されていたからです。だから、1997年、チェスのチャンピオンを破ったのも、「そのプログラムと、コンピューターの計算スピードの賜物だ」というのです。


一方、最新のAI技術は、「プログラマーが賢い必要はない」と教授はいいます。「大量のデータを与え、繰り返し自分で学習させることで、AIは、まるで子供が一から言葉を覚えるように、どんどん賢くなっていく。わたしたちは、知をデザインする技術を手にいれたのです」


しかし、同時に、新たな課題も生じます。「なぜAIがその答えをだしたのか、きちんと検証できない構造を持ち込んでしまった」と、いうのです。「たとえば人間の子供がどうやって言葉を覚えていくか。わたしたちは、脳の中の神経細胞がどう働いているのか、その仕組みを解明できていません。脳細胞の仕組みをまねた深層学習Aも同じです。その内部で、どんな分析、計算、判断をしたか。なぜ、そんな答えを出したのか。よくわからないのです」


急速な進化を遂げたAIは、どんな変化を私たちの暮らしや社会にもたらそうとしているのか。新たに生じた課題はなにか。どう向きあっていく必要があるのか――。8日発行のGLOBE「人工知能」特集は、4人の記者が各地をめぐり、様々な角度から、AIの現状や近未来の姿、課題について考えてみました。ぜひ手にとって、ページを繰ってみてください。 (田中郁也)


 

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