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巡礼・インタビュー編(下) 四国八十八ケ所霊場会会長に聞く

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世界遺産登録を「悲願」と語る四国八十八ケ所霊場会会長の大林教善=8月、東京・霞が関で、村山祐介撮影

――現代人が四国遍路にひかれるのはなぜでしょうか。


弘法大師とともに「同行二人」の気持ちで巡拝して、自然のなかで一体となって、「生かされている」という気持ちが生まれるのが魅力の一つです。自分の安心感につながって、また行きたい気持ちになる。百何十回もまわる人もいます。

でも戦後しばらくは、5月の連休が終わると一日3人という状態でした。生活が安定して余裕が生まれ、1973年の弘法大師生誕1200年の節目に大きく増えました。現在もだいたい15万人と思います。車社会になり、四国と本州が3本の橋で結ばれたのも一因でしょう。

――歩く人も増えているのですか。

10年前と比べると5~6倍に増えている気がします。昔から歩いて回るのが四国遍路だという意識がありますし、健康志向も強い。歩けばいろいろな風景が見え、人とのふれあいもあります。初めは車やバスで回って、やっぱり四国遍路は歩きやな、という方もいます。

――うるう年の今年は順路を逆にたどる「逆打ち」をすれば御利益が3倍になる、ともいわれますが、本当ですか。

それは霊場会の立場ではなく、お遍路の中から生まれた信仰の形なんです。逆打ちは昔からありましたが、うるう年と結びついたのはごく最近です。私も知らなかったし、あまり考えたこともなかった。(遍路を始めたとされる)衛門三郎が弘法大師に会えたのがうるう年だったという話から出たものですが、事実かを証明するものはありません。旅行会社もお遍路から生まれた信仰を、ある部分ではうまく取り入れているのでしょう。

――そもそも御利益とはなんですか。

商売繁盛をお祈りして、たちまちにもうかることではありません。四国を回って自然と触れて、草や木や鳥と話をする気持ちになったら、それが御利益です。例えば、水仙の花が一輪咲いている。すてきだなと持ち帰って玄関に挿そうとする人に、「次に歩くお遍路さんに見せてあげないかんからやめよう」という気持ちが起これば、それも御利益でしょう。

逆打ちは、(道しるべが見にくいなど)普通に回るよりは努力が要ります。それがいいと考えるか、大変と考えるか。人生と一緒です。

――世界遺産を目指すのはなぜですか。

古いものの値打ちはいったん壊すと復元できません。1200年の歴史がある四国の道を1200年先に受け継がないといけない。世界遺産になれば、昔のままの形を守る大きな網をかけられます。

世界からいろんな方がお見えになるのも大歓迎です。洋式トイレの整備など受け入れ態勢をいろいろ工夫していく。寺の雰囲気やお遍路が一心に祈りを捧げる姿を見て、心を洗われる気持ちがしたと言う人が増えてくれたらいい。