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被災地と復興庁

「自治体の枠越えた視野が必要」 梶秀樹・筑波大名誉教授






東日本大震災のあった2011年3月の末、私は内閣府に呼ばれ、どんな復興が望ましいのかヒアリングを受けた。その場で言ったのは、今回は阪神淡路大震災とは異なり、被災自治体を主体にした復興はうまくいかないということだった。自治体主体の復興では、元の状態を取り戻す「復旧」になってしまうおそれが強い。人口減や産業の縮小が続いていたのにもかかわらず、震災が起きた時点の人口や産業規模を取り戻そうとしてしまうだろうと。


被災地では農業も漁業も行き詰まっていて、今回の災害を機に、たとえば300以上もある漁港を一定程度集約するなどの選択もあったはずだが、結局は自治体主義が採用されて、漁港の集約も農地の構造改革も進まなかった。自治体に復興を任せていると、発想がどうしても自分の自治体内の復興にとどまってしまい、たとえばどの漁港を残してどれをあきらめるか、といった判断ができない。県でも難しいかもしれない。農業・漁業に限らず、交通・輸送網の整備などでも県や市町村の枠組みを超えた広域的な視野に立った開発ができにくくなった。


今回は国が復興のイニシアチブをとらなければならなかった。だが、復興庁が遅れてできたため、復興の枠組みはすでに大半が決まっていて、それをベースに復興を考えないといけなくなった。しかも基本は自治体主義なので、復興庁の仕事はどうしても自治体のリクエストを認めるかどうかということになってしまう。すでに線路が敷かれていて、その上をどううまく運転するかということが中心になり、本来はこっちに線路を敷くべきだということが言えない。確かに、発足後しばらくして復興庁の評判はよくなり、職員も自治体の手取り足取りよくやっている。が、本当の問題はそこではない。


自治体主義を批判するのは、実は難しい。いまも多少の遅れはあっても、軌道に乗りつつはある。今がそれほど悪いようには見えないという人もいるだろう。しかし、もっと他の方法をとっていれば、より安く、より早く、そして持続可能な復興になったはずだと私は考える。復興構想会議の提言は、安全な街にすることは強調しているが、地域の経済構造をどう改め、立て直していくのかについては書いていない。


これだけ災害が多い国で、復興についての恒久法を持っていなかったこと自体がおかしい。復興庁は10年間の時限組織だが、防災予算も扱う組織として、常設化も検討した方が良いのではないか。

(聞き手・GLOBE編集部 江渕崇)



かじ・ひでき 

1942年生まれ。筑波大学と慶應義塾大学で教授を務めた。専門は都市計画・都市防災







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