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米メディアと日本 歌田明弘・大正大学表現文化学科教授(メディア論)に聞く

World Now 更新日: 公開日:
photo:Mochizuki Hirotsugu

週刊アスキー誌上の連載「仮想報道」で、ここ数年のうちにぐんぐん力をつけてきた米新興デジタル・メディアの動きをフォローした。
アメリカでは激しい競争が起こり、ライバルと差別化するためにスクープや独自ネタを発信する必要性が認識されだした。日本ではニュースアプリがダウンロード数を競ってはいるが、ヤフーは依然として強者の立場を保ち続けている。

米新興デジタル・メディアは広告収入の面でも力をつけてきた。これまでネットでは利用者の興味に応じて広告を表示させてきたが、企業はどんなサイトに広告が出るかわからない。テーマを深掘りした雑誌的なサイトなら、コンテンツがイメージにあっているか分かるので、企業は安心して広告を出せる。テレビ番組のスポンサーになる感覚で、サイト側はこれまでとケタ違いの収入が得られる。また、一般記事と同様の体裁で、一体感のあるネイティブ広告を出しやすい。

経営基盤が安定したサイトは、独自コンテンツをつくる余力が出てくる。また、深掘り型のサイトに横串を通すような総合ニュースサイトを手がけて、傘下のサイトと利用者を行き来させ、アクセスを増やしている。ViceやBuzzFeedがその典型だ。

日本でも、ファッションスナップ(http://www.fashionsnap.com/)や音楽のQetic(けてぃっくhttp://www.qetic.jp/)などジャンルを特化した面白いサイトが出てきている。深掘りしたサイトをいくつも集めて広告メディアとして力をつけ、さらにそれらのサイトに横串をさす総合ニュースサイトまで擁するメディア企業が出てくるとアメリカと似てくる。

ビジネス以外の面でいえば、米国では、国家安全保障局(NSA)による監視活動の実態を明らかにしたスノーデン事件が影響を与えている。ネットの自由が脅かされかねないという危機感を持った人たちがネットメディアを手がけ始めた。日本でも、ビジネス手腕とジャーナリスティックな問題意識の両方をかねそなえた人材が出てくればアメリカのような状況になる可能性はあるだろう。



うただ・あきひろ

1958年生まれ。『現代思想』編集部、『ユリイカ』編集長を経て、現職。電子書籍やネットに関する著書が多い。