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ビールから高速道路へ/フィリピン・サンミゲルの変身






photo:Tadama Emi

慢性的にひどい渋滞に悩むフィリピンの首都・マニラ。中心部にあるマカティ市で、高速道路「スカイウェイ」の延伸工事が進んでいた。総工費は266億ペソ(約620億円)。事業の中心を担うのはフィリピンのビールメーカー、サンミゲル社だ。


20年前までほぼビール専業だったが、いまでは、フィリピン航空や石油大手のぺトロンを始め、銀行や発電所まで持つ巨大企業集団。今年第1四半期には、電力部門の売上高がビールを追い抜いた。スカイウェイのようなインフラづくりは、お手のものだ。5月14日には、アキノ大統領に対し、マニラ湾を埋め立て首都圏に新しい国際空港を建設する提案書を提出している。総工費は約100億ドル(1兆円)規模に膨らむと見られている。


ビール会社としてのサンミゲルはフィリピンがスペインの植民地だった時代からの歴史を持つ名門企業だ。本社の建物が面している首都圏マンダルヨン市の道路には「サンミゲル通り」と名前がついている。




ビール部門の株式5割弱がキリンに

サンミゲルビール
/photo:Tadama Emi




いまも国内ビール市場では90%を超えるシェアを握る。スカイウェイの工事現場のすぐ近く、住宅街の雑貨屋でビールの種類を尋ねると、店番の女性は「サンミゲルだけよ。他のビールなんて誰もほしがらないもの」と答えた。売れ筋の「サンミゲル・ライト」は320ミリリットル入りで27ペソ。およそ60円だった。


中国やインドネシア、タイなどにも売り込みをかけ、販売量は172万キロリットル(2011年)。日本のサントリーとほぼ同量で、世界のビール会社ランキングでは13位に入る。


だが、現社長のラモン・アンの関心は、ビールからインフラへと完全にシフトしているように見える。「国家の成長のパートナーではなく、エンジンでありたい」というのだ。


アンは、財界の大物エドアルド・コファンコの知己を得たのをきっかけに、90年代終盤にサンミゲルに加わった。コファンコの後を継いでトップに立つと、事業の多角化を視野に資金調達に乗り出す。


ここに目をつけたのが日本のキリンホールディングスだった。東南アジア市場への足がかりを得ようと、02年にサンミゲル株の15・55%を取得。その後も出資を重ね、現在ではビール部門の発行済み株式の48%を持つ。


キリンから出向したビール部門副社長の代野照幸(54)は、「フィリピン経済は年5%程度の成長を続け、ビールの需要も伸び続ける。清涼飲料水市場も未開拓で可能性が大きい」と話す。


地元メディアなどによると、残りの株をめぐって、複数の海外メーカーが買収を持ちかけているという。約20年にわたりフィリピン経済をウオッチしているアナリストの伊佐治稔は、「歴史もあり、安定した収益を約束してくれるビール会社を普通なら手放さない。でもアンなら、やるかもしれませんね」と話した。


(田玉恵美)

(文中敬称略)



 

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