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日本の家には壁がない?

Photo:Asahi Shimbun

オペラ「蝶々夫人」の冒頭で、米海軍士官が新居となる日本の家に案内され、「これが壁か?」とふすまを不思議がる場面がある。日本の伝統家屋は、柱と柱の間を引き違いの戸や障子などの建具で埋め、これらを外せば、ほぼ柱と屋根だけというつくりになっている。れんがや石を積み上げて造る西洋の「壁の家」に対し、「柱の家」「傘の家」などと建築の世界では言われる。

 

「日本の夏は蒸し暑いので風通しを良くするためだ」と説明されることが多い。だが、日本建築史を専門とする近畿大学教授の川本重雄によると、蒸し暑い東南アジアも含め、壁のない家は、ごく一部を除いて見られないそうだ。

 

壁がないのは気候ではなく、日本人が持つ空間への意識からきているようだ。

 

京都で町家の修復などを手がける米国人建築家ジェフリー・ムーサスは著書『「縁側」の思想』で町家の玄関庭や縁側などに触れ、「町家の造りには何段階もの層があり、それぞれの間に物理的だけでなく、精神的な意味においても『敷居』が設けられている」と述べる。外とも内とも言えない「あいまいな空間」に、壁の役割を担わせているというのだ。

 

このような家に住むのは、今やぜいたくなことだ。壁に囲まれたマンションや小さな家に住むのが当たり前になり、あいまいな空間への意識も変わっていくのかもしれない。


(文中敬称略)


(浅倉拓也)

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