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2017年10月1日号特集「Walls 壁がつくる世界」


えっ、本当? 世界の壁の数を集計したグラフ(02面)を見たとき、目を疑いました。21世紀に入って、急増している。いったいどうなっているの? それを探ったのが今回の特集です。


当初、謎は深まるばかりでした。


自由や民主主義を旗印にする欧米でどんどん壁ができている。なんで?

「壁つくれ」の合唱がわいた米国。すでに1千キロ以上もあるのにどうして?

「ベルリンの壁」が崩れて、自由化が進んだ欧州。その中になぜ次々と壁が?


答えを知ろうにも、壁を体系的に教えてくれる「壁学」のような学問は見当たりません。取材は、移民や地域問題の研究者を訪ねるところから始めました。壁をめぐる世界は予想以上に広く、深く、話は政治や経済、民族や宗教、歴史や哲学、企業に技術、そして麻薬やマフィアへと、とめどなく広がっていきました。


全体像はなかなかつかめませんでしたが、何度も出てくる言葉がありました。


移民、難民、雇用、治安、排外感情、ポピュリズム、官僚、軍需産業――。


一見バラバラのキーワードに関係があるのか、ないのか。あるなら、どういう相互作用があるのか。同僚記者と手分けして現場に向かい、移民や難民、政治家や当局者、地元市民や支援団体、自警団や産業関係者、研究者ら様々な立場の人たちに疑問をぶつけました。


見えてきたのが、07面の「取材を終えて」で書いた、壁が増殖するメカニズム、ともいえる構図です。いろいろな要素が絡み合って、壁をつくる方向に回転していく。ブレグジットやトランプ大統領誕生といった大きな動きとも底流でつながっているようにも見えました。


その先に何があるのか。


見える世界は立場によって違うのかもしれません。でも、現実の一断面が表紙からの一組の写真です。ベロニカ(01面)の視線の先には、弟の赤ちゃん、ソフィア(02面)がいます。目を細めることはできても、抱きしめることはできない――。そんな「壁がつくる世界」、あなたは住みたいですか?


村山祐介(むらやま・ゆうすけ)

1971年生まれ。アメリカ総局員、ドバイ支局長を経てGLOBE記者。約350軒もの歯科が集まる町があったり、国境を越えて通学する子供がいたり。壁の向こうの物語をウェブでお伝えします。



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