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葬送 - 世界のお墓で考える

[Part1]目印のない墓地(葬送)

先祖の墓をどうすればいいか。自分はどう送ってもらうか。誰もがいつかは直面する葬送。少子高齢化が進むなか、不安が募る問題だ。北欧スウェーデンでは「弔いの進化形」といえる共同墓地が定着している。しかしそこにも、亡き人をどう偲ぶかを迷い、悩む姿がある。



ストックホルム郊外、世界遺産でもある「森の墓地」にある十字架のモニュメント。厳しい寒さのなか、その姿は威厳に満ちていた photo : Talahashi Misako

雪に覆われた大地に立つ高さ7メートルほどの石の十字架。雲一つない青空から太陽の光が降り注ぐ。


3月28日午後1時半。スウェーデンの首都ストックホルム郊外にある公共墓地「スコーグスシュルコゴーデン」を訪ねた。時代を超えたデザインなどが評価されて世界遺産にも登録されている別名「森の墓地」。入り口からしばらく直進した先、なだらかな起伏の向こうに現れたモニュメントの神々しさに、息をのむ。


背後に森が広がっていた。木漏れ日が、薄暗い土の上に点在する無数の墓石を照らす。キリスト教、イスラム教、ヒンドゥー教、ユダヤ教、仏教。女優グレタ・ガルボもここに眠る。気づけば2時間近く、凍った道を歩き回っていた。

ただ、私が目指していた墓地は、この先にあった。日が傾く前に見ておかねばならない。「ミンネスルンド」。「追憶の杜」と訳され、この国で半世紀以上前から法的に認められる匿名の共同墓地だ。遺灰は自然に帰され、管理は遺族ではなく公的機関が担う。


案内板の地図を確認して急ぎ足になった数分後。えっ? 目を疑った。


そこにあるのは何の変哲もない、小高い丘。頂上へ続く小道の登り口に小さな標識が立っているだけだ。どこに祈ればいいかわからない。これまでに7万人以上の遺灰が埋葬され、この墓地で火葬される人の半数がここに入ることを望むという。だが、どうしても墓と思えなかった。〈一体、何を感じればいいのか?〉。私は虚脱感に襲われた。


旅の最終地にスウェーデンを選んだのは、このミンネスルンドが見たかったからだった。死後は家族関係を超え、平等と共同の世界へ─そんな哲学を掲げる墓は少子高齢社会が行き着く先、まさに「進化形」かもしれないと想像した。


死者が匿名の共同墓に入れることが法的に認められたのは1950年代後半。この国は、お年寄りの面倒を見る責任は家族ではなく国が負うと明確に打ち出した。死者に対しても同様で、火葬も埋葬も無料。墓地の維持管理には税金があてられる。


天涯孤独な人や家族が遠く離れて暮らす単身者のほか、「子どもや親戚に迷惑をかけたくない」「無縁墓として撤去されるよりも永久に管理を」と考える人たちはスウェーデンにも多い。こうした層に、死後も続く「連帯」の象徴として幅広く支持され、80年代から急速に普及した。全国数百カ所に広がり、いまも増加傾向にあるという。


「『進化形』の先にあるもの」に続く。



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