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いまも日本で働きたいですか?

[Part2]新興市場に韓国が先手――カンボジア

[カンボジア]プノンペンには様々な言語を教える教室がある Photo : Asakura Takuya

国が豊かになるにつれ、海外へ出稼ぎに出る若者は少なくなる。ベトナムにいつまでも頼るわけにはいかない。そこで、人材を求める日本のあっせん業者は、新たな国を開拓する。


その一つがカンボジアだ。東南アジアでも若年人口が際立って多い若い国だ。日本にとって、中国、ベトナムに続く人材の供給源になると見込み、「真面目で素朴」と、業者は売り込む。


だが、カンボジアの若者がいま出稼ぎ先として憧れるのは、日本より韓国だ。その違いは、外国人労働者を受け入れる仕組みによるところが大きそうだ。


韓国もかつて、日本と同じように、実習の名目で、いわば「裏口」から労働力を補っていた。そして日本と同じように、労働者は仲介業者に多額の費用を払って借金を負い、より良い給料を求めて失踪するなどの問題が多く起きた。


そこで韓国が選んだのは、「外国人労働者は受け入れない」という建前にこだわる日本とは違う道だった。04年から「雇用許可制(EPS)」で、外国人労働者を「正面」から受け入れることにしたのだ。


この制度では、募集や採用は、公的機関が窓口になるため、不透明さを指摘される仲介業者の問題はほぼなくなった。


労働者側の負担は、TOPIKという韓国語能力試験で好成績を取るための努力と、そのための学費。韓国語を身につければ、雇用許可制のもとでは最長で10年近く働くことができる。これまで3年限りだった日本より、勉強のモチベーションも高そうだ。プノンペンでは年間5万人以上がTOPIKを受けている。


このためか、プノンペンでは街中でよく韓国語学校を見かけた。王宮近くの教室では、1日3回ある授業で、計約80人が学んでいるという。この教室のカンボジア人マネジャーは「日本で働いた経験がある学生もいるが、行くまでに6500㌦(約74万円)かかり、寮費などを引かれて手取りは月7万~8万円だったらしい。韓国なら月1500㌦(約17万円)以上は稼げる」と話した。


東南アジアには、音楽やテレビドラマを通して韓国に慣れ親しんでいる若者が多い。これも韓国の官民挙げてのコンテンツ戦略が功を奏した結果だ。韓国で長く働いた若者が、韓国の文化になじみ、母国に広める好循環を生んでいるという分析もある。


別の韓国語学校で勉強していたポム・ソックケン(20)は「Kポップの音楽が好き。地元の村では韓国に働きに行った人も多く、給料が良いと聞いている」と話した。カンボジアから雇用許可制で韓国へ行った労働者は、16年は約8300人。この10年で30倍以上になった。同じ16年に日本に向かったカンボジア人実習生は2000人程度にとどまっている。


プノンペンにある韓国産業人力公団・EPSセンター長のパク・テフンは「我が国の制度は透明性が高く、賃金も日本より高い。働くなら韓国がベストだと思う」と話した。


一方、日本にも労働者を送っているカンボジアの人材派遣最大手「ウンリティーグループ」社長のウン・セアンリティーは、新たな市場をねらっていた。中国だ。「工場労働者が不足し始めている中国にも派遣できるよう、いまカンボジア政府と協議している」


中国の動向は、各国の人材派遣業者にとって目が離せない。長年一人っ子政策を続けてきた中国の高齢化は急ピッチだ。間もなく60歳以上の高齢者は2億5000万人になると推計されている。介護人材などの需要は間違いなく高まる。そうなれば、アジアの労働者需給の景観は一変するだろう。すでに多くのフィリピン人が不法滞在で家事労働に就いていると言われ、フィリピン人労働者の合法的な受け入れに向けて両国政府間の協議が始まったと報じられている。


(文中敬称略)


「『開かれた社会』 政治もアピール――台湾」に続く)

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