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いまも日本で働きたいですか?

[Part1]日本はあらゆる職場が人手不足

ハノイで技能実習生として日本で働くため日本語を勉強するベトナム人の若者 Photo : Asakura Takuya

日本ではあらゆる職場が人手不足。外国人労働者なしでは、多くの現場がまわらないのが現実だ。だが、働き手が足りないのは日本だけではなくなっている。日本が労働力を頼っているアジアの国々を訪ねてみると、賃金も生活水準も若者の気質も、とどまることなく変化を続けていた。労働者の送り出し国が受け入れ国に変わることだって遠い未来のことではないだろう。日本で働きたい外国人はいくらでもいる――そんな時代ではすでになくなっている。


浅倉拓也(GLOBE記者)

あさくら・たくや 1971年生まれ 大阪社会部を経て現職 日本の外国人労働者や入管問題を取材してきた


[ブータン]日本で介護の仕事につく予定の若者 Photo : Asakura Takuya

経済的な豊かさより「国民総幸福(GNH)」を求めることで有名になったブータン。この、ヒマラヤ山脈の麓の「幸せの国」へ、日本人が働き手を探しに行っているという。


私は外国人労働者の取材を続けてきたが、「なぜブータンにまで」と意外だった。首都ティンプーへ飛んだ。


日本語学校では、和服に似た伝統衣装を着た若い男女が、日本語を勉強していた。彼らは、日本の高齢者施設で介護の仕事につく予定なのだという。


隣の大国インドの援助でこれまで大勢のブータンの若者がインドで看護を学んで帰ってきた。だが、ブータンの国立病院には全員を雇用する財政的な余裕はなく、多くが職にあぶれてしまう。大きな産業がないブータンで、若者の失業は深刻な問題になっている。


その話を友人から聞いて興味を持ったのが、神奈川県で技能実習のコンサルティングをしていた李達夫(65)だ。

技能実習とは、日本の技術を学ばせるという名目で外国人を受け入れる制度だが、「単純労働の外国人は受け入れない」という建前を崩さない日本では、労働力を補っているのが実態だ。業種は、製造、建設、農漁業などが主だった。


そこに昨年11月、「介護」が加わった。対人サービスの業種は初めて。厚生労働省は、介護人材は2025年に38万人が不足すると推計する。ニーズは高いはずだが、日本語能力などに不安を抱く関係者は多い。


技能実習は、働き手にとって決して条件がいいものではない。「介護を担える優秀な人材が集まるだろうか」。李も不安を感じていたが、外国で看護を勉強したブータンの若者たちに、可能性を見いだした。


16年度に希望者から11人を選抜。ブータン労働人材省が日本語を学ぶ1年間分の費用を負担した。「我々はただ日本へ出稼ぎに送り出すのではなく、彼らに日本人の勤勉さを体験してほしいんだ。私の息子は30歳にもなって、私が職場で仕事を始めても、まだ寝ている」。雇用人材部長のシェラブ・テンジン(54)の期待は高い。


ところが、問題が起きた。日本の国会審議の都合で、技能実習の「介護解禁」が遅れたうえ、日本語能力に関する規定などが当初の想定と違った。手続きが整わず、学生たちは足止めをくらったかたちになっている。


「毎日、不安で祈っています」。学生の一人レグデン(25)は言う。兄と同居しながら日本語学校に通って1年半近く。「両親には小言を言われ、友人には会うたびに『いつ行くの』と聞かれるんです」


この間に、労働人材省には、ドイツの病院と高齢者施設、さらにシンガポールの病院からも看護師の求人があった。ドイツの施設は、月給1800ユーロ(約24万円)で昇級ありと、日本よりはるかに良い条件だった。レグデンがインドで共に看護を学んだ仲間を含む、数十人の派遣が決まった。日本語学校の一人も、ドイツに鞍替えしようとしたが、国費で日本語を学んでいるという理由で認められなかった。


ブータンの若者は英語を日常的に話し、人材として人気がある。労働人材省のウェブサイトには中東のショッピングモールの販売員やドライバーなど、各国の求人が公開されている。100人単位の募集もある。


「ブータンには世界中から良いオファーが来る。世界の中で日本の位置が変わったことを、政治家たちはわかっていない気がする」。日本語学校長の青木薫は言った


(文中敬称略)


「憧れの日本暮らし 広がるギャップ――ベトナム」に続く)


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