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100歳までの人生設計

[Part3]自己責任社会では難しい「100歳までの安心」

Photo : Endo Hiroki


太田 啓之


今回の取材で訪れた国々のありようは「100歳まで幸せに生きられる社会」に向けて貴重なヒントを与えてくれる。


健康な高齢者は社会を支える側に回ること(シンガポール)。家族や職場だけではない新たな人間関係を作れる場を設けること(フィンランド)。どんな最期を迎えるか、本当に自己決定できる環境を整えること(オランダ)。いずれも日本でも取り組み可能な課題だ。


一方で、社会保障のありようについては、シンガポールの「低負担・低福祉」に対し、フィンランドとオランダは「高負担・高福祉」と対照的だ。


高齢化が進むほど、個々人の健康・経済状態のばらつきは大きくなる。「自分が何歳まで健康で、何歳で死ぬのか」予測できる人はいないから、自己責任で高齢期に備えるには限界がある。「超高齢社会で安心を得るには、支え合いが不可欠」というのは、道徳ではなく、経済的合理性から導き出される結論なのだ。


シンガポールの「福祉に頼らず生涯働く」という方針は、努力目標にはなり得ても、だれもが実現できるわけではない。国の経済は維持できても、「普通の人が100歳まで幸せに生きられる社会」をつくれるとは思えない。


日本では消費税率の引き上げが大幅に遅れ、国の借金は天文学的数字に達する。人々の老後への不安は膨れあがり、貯蓄意欲は高まっても政府が目指す消費の拡大は進まない。このままでは社会保障の削減は避けられず「自己責任型社会」の傾向がさらに強まるだろう。


フィンランド、オランダは「高負担による支え合い」を重視しつつ、経済的にも順調だ。現地では「フィンランド人はあまり貯蓄をしない」という話も聞いた。彼らにとって税金とは「国が行うサービスの対価」であり、払うに値する安心を与えてくれるものなのだ。


日本では「税は国から一方的に取られるもの」という意識が強い。そこからどう脱却し、支え合いのために使えるお金=財源を増やしていくか。日本が「100歳まで幸せに生きられる社会」をつくる最大の鍵はここにある。

(おおた・ひろゆき 1964年生まれ。公的年金、医療保険など社会保障報道を手がけ、現職


特集「100歳までの人生設計」ほかに取材にあたった記者 高橋友佳理

たかはし・ゆかり 1982年生まれ。国際報道部、社会部などをへてGLOBE記者。60歳を「New 40」と考えると、焦ることはないと少し安心 同時に今しかできないこと、を考えた


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