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未来をあきらめない

[Part2]「さらば高炉」。CO2出さない製鉄所/スウェーデン


SDGsの到達度(独ベルテルスマン財団の国別ランキング)で2年連続で世界のトップとなったのは北欧のスウェーデン。なぜ、どのように一歩先んじているのか。



喫緊の地球的課題である気候変動。スウェーデン政府が2045年までに温室効果ガスの差し引き排出量をゼロにするとの方針を打ち出したのは今年2月のことだった。これに呼応するように、製鉄会社のスウェーデンスチール(SSAB)は鉱山会社LKAB、電力会社バッテンフォールという二つの国営企業と組んでその45年までに温室効果ガスを一切出さずに鉄をつくるプロジェクトを開始した。日本の製鉄業界の目標が、50年までにCO2排出3割削減であることを考えると、いかにも野心的だ。


「さらば高炉ですよ」とほほ笑むのはSSABの最高技術責任者、マーティン・ペイだ。風力、水力などの再生可能エネルギーだけで水素発生装置を動かし、コークスの代わりに水素で鉄鉱石を還元する。予備研究の結果は良好で、数年内に実験用の還元炉を完成させる予定だという。それに先立って、製鉄所内の大型フォークリフトを来年までに水素を燃料とする燃料電池で動かす計画だ。

CTOのマーティン・ペイ〔左)と副社長のジャコブ・サンドバーグ
photo:Nakamura Yutaka


持続可能な社会を目指す取り組みを企業経営そのものに組み込むことに関して、欧州は世界の先頭をゆく。余業としての社会貢献活動ではなく、ビジネスを通じて社会や環境の課題を解決することを目指すCSR(企業の社会的責任)という概念が育まれたのも欧州だ。特にスウェーデンは、経済的手法を使って気候変動問題に取り組み、成果をあげていることで知られている。1991年にいち早く二酸化炭素税を導入し、温室効果ガスの排出量を減らしながら国内総生産(GDP)を大幅に増やした。官民あげてCSRを推し進める戦略が実った好例だ。




外務省が司令塔に

CSR担当大使のディアーナ・マドゥニック

持続可能な社会への取り組みを外交戦略にしている点でもスウェーデンは目を引く。外務省にはCSR担当大使とアジェンダ2030担当大使がいる。国内外のCSR政策の司令塔となっているCSR担当大使ディアーナ・マドゥニックは「CSR戦略の普及は、人口が日本の10分の1もなく、マーケットを海外に求めざるを得ないスウェーデンの企業の支援になるからだ」と説明した。


例えば在中国大使館では07年からの10年間で、累計約1万人の中国人公務員にCSR研修を実施してきた。海外勤務の経済担当職員にもCSR研修を受けさせる。「持続可能性に配慮できる企業を増やし、外交官がCSRのプロとして海外進出企業を支援できるようになるためだ」とマドゥニック。こうした努力が経済成長率が3%を超え、経済協力開発機構(OECD)加盟国の中で6位(日本は32位)と好調なことと無縁ではないとスウェーデン政府は考えている。

アジェンダ2030担当大使のカイサ・オーロフスゴード

アジェンダ2030担当大使のカイサ・オーロフスゴードは今後の展望についてこう語る。「SDGsの169のターゲットのうち、実現していると評価できるのはまだ2割。しかし、私たちにはやり遂げる意志がある。懸念材料は不安定な国際情勢です。目標を達成しなければ、いま世界が直面しているリスクが現実になるのだということをみなが肝に銘じる必要がある」。自国の繁栄を最優先するナショナリズムの台頭に懸念を示した。


(中村裕)

(文中敬称略)

「民が官の先ゆく新展開も/日本の現在地」に続く)



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