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豊かさのニューノーマル

[Part3]モノはもういらない? 取材を前に記者も喧々諤々~豊かさのニューノーマル


豊かさのニューノーマル」取材チームの中でも考え方が大きく食い違った「経済成長」「豊かさ」。成長派の西村記者と、脱成長派の宋記者の対論は、前回の「成長を目指すべきか」から、人口問題や、モノがこれ以上必要かどうかなど、さらに広がっていきました。(構成・GLOBE編集部 大島隆)


――経済成長と人口は表裏一体ですが、人口は横ばいや減少でいいのか、それとも増え続けるべきか、どう思う?

西村宏治記者(左)と宋光祐記者。議論は平行線が続いた=大島隆撮影

西村「ものすごく大きな議論でいえば、宋さんが言うように成長だけでない暮らし方の視点は必要で、環境だとかエネルギーの話をしていった時に、地球規模でどこかで限界がくるわけですよね」


――ただ現状では、人口が減っても経済的に豊かになるやり方があるかというと……。


西村「非常に難しいですね。みんなでお手々つないでゆっくり縮小というのではコンセンサスは得られない。人口減は食い止める必要があると思いますけどね。あと、少子高齢化ですね。このまま(高齢者が多い)逆ピラミッドが続くのは相当厳しい」


「けど、増やせないですよね。産んでくれっていえる世の中じゃないし。言われて産むものでもないし。外堀は埋まっているというか、経済成長、右肩上がりを続けられる要素がどこもない気がして。下げ止まることを射程にしてものを考えるくらいの方が、ポジティブなんじゃないか。今の出生率より上がったとしても、2.0で横一線になるくらいの前提に」


モノはこれ以上必要か


「いま、モノを欲しいという感じじゃだんだんなくなっているじゃないですか。個別にはいっぱい欲しいものはあるけど、昔の三種の神器(テレビ、冷蔵庫、洗濯機)みたいな生活が変わるものってせいぜいスマホくらい。お金をたくさん持っても使う先がモノではなくなってきている」


「西村さんが言ったような、寄付をするとか、高齢でお金を持っている人が若い世代に富を分配するみたいなものも、その人たちの価値観が変わらないと、実現できないんじゃないかと思う。それって経済成長とかお金を儲けるとは違う文脈に価値を置かないと実現しないんじゃないですか」


西村「自発的なものだと寄付だけど、税金でもいいんですよね。たとえば子ども手当みたいなものは上の年代層から取って若い世代に回すということだから、それは社会構造としてやるべきことだと思いますけどね。教育の無償化もそう」


「それから、成長のドライバーになるのはモノじゃなくてサービスでもいいわけですよ。モノだってまだゆきわたっていない人もいっぱいいるわけですよ。家が欲しい、車が欲しいけど買えない人もいっぱいいる」

西村宏治記者(左)と宋光祐記者=大島隆撮影

――成長して、そのパイをそういう人たちにもゆきわたるようにすればいい、と。


西村「いや、別に成長しなくても、みんな仲良く小さくまとまっていくというのであれば、縮小するパイの中で、『私はもうモノはいらないから』っていうんだったら、たとえば稲垣さん(※)みたいにお金を使いたくないというような人は、まだまだモノが欲しいという人に貯金をあげればいいじゃないですか。でも、そうはならないと思うんですよ、たぶん。だったら少しずつ経済が成長して、税や社会保障という制度の中でお金を回すのが、いまのところ最良の道じゃないですか」


稲垣さん:アフロヘアで知られる稲垣えみ子氏のこと。電気をなるべく使わず、「持たない暮らし」を続ける元朝日新聞記者。


トリクルダウンか分配か


「持っていない人にどうやってゆきわたらせるかというときに、分配かトリクルダウン(※)かという二つの道があって、経済成長の看板を下ろさないといつもトリクルダウンになる。じゃあいつ実現するかというと、パイそのものが大きくならないから、結局トリクルダウンは実現しなくて、分配の問題が解決されず格差が広がるように思うんですけど」


トリクルダウン:富める者が富めば、貧しい者にも自然に富が滴り落ちる(トリクルダウンする)とする考え方


西村「僕はその論の立て方自体があまり良くないと思っていて、トリクルダウンか分配か、という話では全くないですよ。経済成長の中で、新自由主義か規制かという議論はあると思いますが。ただこれもバランスの問題で、どっちかという話ではない。マーケットの活力を活かしつつ、社会保障や税で分配を考える。そこは経済成長を目標とすることとは矛盾しない」


この後、経済成長と財政や社会保障のあり方など話は続きましたが、今回はこのくらいで。二人はいま、日本や海外の取材を進める真っ最中。取材を終えて、それぞれ新しい発見や考えが出てきたら、また二人で意見を交換してもらいたいと思います。




改めて、「豊かさのニューノーマル」の取材陣はこちらの一同です。こうした議論をもとに目下、国内外で取材を進めております!


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