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豊かさのニューノーマル

[Part2]成長か脱成長か 記者も意見真っ二つ~豊かさのニューノーマル



豊かさのためには経済成長が必要なのか――。


成長を知らずに育った大学生たちと話し、世代の違いを痛感した前回の授業。とはいえ1970年代生まれぞろいの取材チームも、実は一枚岩ではありません。「経済成長派」の記者と、「脱成長派」の記者に、本音をぶつけあってもらいました。(構成・GLOBE編集部 大島隆)


経済成長は必要なのか


――まずは、前回の授業で上智大学の学生から「冷たい反応」を感じた「成長派」の西村宏治記者(1975年生まれ)。経済部で民間企業などを取材してきた記者で、GLOBEでもシリコンバレーなどを取材しています。彼から見た成長とは。学生たちには、パイが大きくならないといけない、という話をしていたけれど?

西村宏治記者=大島隆撮影

西村「この間の授業では、成長したって分け前を富裕層が取っていくだけじゃないか、という意見が学生から出たけれど、じゃあ成長しなかったら富裕層が取っていかないかというと、そんなことはない。どんどん減っていくパイの中で分け前を富裕層が取る社会がいいのか、右肩上がりで、それなりの分配を考えるのか。みんなで仲良く小さくなっていきましょうね、というのは難しいと僕は思っています」


――これに反論したのは、同じ取材チームの1977年生まれ、宋光祐記者。最近、モノをできるだけ持たない「ミニマリスト」を特集した記事を書きました。最近は、ベーシックインカムに関心を持っています。

宋光祐記者=大島隆撮影

「GDPが増えていくのを指して右肩上がりというなら、そうした経済成長の考え方はもう時代に合わない、古いと思うんですね。全体のパイが大きくなった分をみんなで分けるとか、所得が低い人にもゆきわたるようにすることはできるんでしょう。でも日本ではここ20年ほど、パイが過去に比べて大きくならない状態が続いている」


「しかもその間、政治は無策だったわけじゃなく、いろいろ手を打ってきた結果がこれだということを考えると、そもそもGDPを増やすという視点に無理があるんじゃないかと思う。経済成長以外の指標とか考え方、価値観が要るんじゃないかと思います」


西村「成長しなくてもハッピーな道があるのであれば、それで全然いいと思っていますよ。ただ今のところ、残念ながら成長以外の道を見つけるのは、みんなで成長しようという以上に大変な道かもしれない」


「脱成長論は僕が大学生のころからあったけど、実際に素晴らしい道を提示できたかというと、そんなことはない。現状では、みんなで成長しよう、その一つの指標としてGDPを使う方がまだまだ現実的なのかなと思っていますけどね」


「もう一つのポイントは、世界がみんなで成長する中に日本はあるわけです。そこからおりるいい戦略があるならいいけど、残念ながら、ない。成長していく国と深く経済的につながっている以上、日本がそのゲームからおりるのはすごく難しい」


――縮小はしないけど、ゼロ~1%くらいの成長でいいじゃない、という意見については?


西村「ゼロ~1%を狙ってそうなれるかというと難しい。この20年ほど、なんとか成長しようと思ってゼロ~1%で来ているわけですよ」


――上を目指さないと現状維持すら難しいと。


西村「経済成長を目標からおろすのは反対です。成長のための成長はおかしな話で、本末転倒だと思うけど、かといって成長しなくていいということにはならない」


「ゼロ~1%成長をめざすとそれすら維持できなくなるという不安感はわからないでもない。けど、1%以上にいかないのがわかりつつも旗を振るのって空疎というか、逆に弊害が生まれるのではないか。上に上がらないのをみんな半ば知っているのに、もっと伸びるんだというふりだけしてむち打つと、過労死のようなひずみが出るんじゃないですか」

40代前半同士でも、考え方に開きが。西村宏治記者と激論を交わす宋光祐記者=大島隆撮影

「あとは感覚的に、経済成長イコール上昇志向みたいなことでいうと、そんなに上昇志向に共感できる人が今の若い世代にいるんだろうか、と感じる。がむしゃらに上を目指すのには、ついていけないと思うんですよ」


――この間の上智の授業みたいな。


「世代が変わって、あの感覚の人たちが増えていると思うんですよ。まだまだいける、成長しなければといって響くんだろうか。仮に響かないとしたら、旗だけ振っても徒労感が増すというか、無駄が増す気がするというか……」


脱成長論に対しては、前進とか進歩を目指さないと、社会の活力そのものもなくなってしまうんじゃないかという心配もあると思うけれども。


「経済成長を絶対視する視点を捨てることが、『停滞でいい』という話になるわけではない。別の価値観でよりよく生きられる道を探す、ということでは。GDP、経済成長を物差しにするんじゃなくて、違う物差しを探します、と。それをはっきり言う方がいいんじゃないかと思う」


西村「お金って何にでも使える。より豊かな社会のため、寄付することもできる。田舎暮らしで豊かに生きますといっても、貯金が増えていく分には別に困らないでしょう。何にでも使えるという意味で、お金は便利。そこが豊かになっていくこと自体はまったく問題ない。成長しなくていいですよ、違う豊かさがあります、それが何かはあとはみなさん好きに考えてくださーい、というのはどうなのか」


 ◇


互いに譲らず、会議室内に漂う微妙な緊張感。議論はこの後、人口減少などに広がっていきますが、続きは次回に。


この原稿をまとめながら「こんなにチーム内で意見が違って、この企画は大丈夫なんだろうか」とデスクとして不安になってきました……。

対論を司会した大島隆デスク















同世代ながら、経済成長をめぐっては平行線をたどった西村宏治記者と宋光祐記者。それぞれの取材経験などバックグラウンドはこちらからどうぞ。




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