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豊かさのニューノーマル

[Part1]大学生「成長なじみない」~豊かさのニューノーマル

いまの時代の豊かさってなんだろう? 1990年代生まれの大学生たちと話してみると、70年代生まれの私たちとの違いがくっきりと浮かび上がってきました。GLOBEは新企画「豊かさのニューノーマル」をスタートさせます。右肩上がりなんてどこの国の話?って思えるほど過去のものとなった今の日本では、都会から地方へ、あるいは日本から新興国へ飛び出す若者が増えています。世界と日本の新しい豊かさのかたちを探してゆきます。(構成・GLOBE編集部 大島隆)


「新しい豊かさ」について一緒に考えた上智大学の学生たち=西村宏治撮影

GLOBEは上智大学新聞学科で、「時事問題研究」という講座を担当しています。9月下旬の初回の授業で、低成長時代の日本を生きる私たちにとっての「新しい豊かさ」とは何だろう、というテーマについて考えました。


まず話してもらったのは、豊かになるには経済成長が必要だという「成長派」の西村宏冶記者(41)です。


「経済は、パイが大きくなるほうが分配はしやすいんです」


経済取材が長い西村記者は、学生に熱く語りました。しかし、学生からの反応はいま一つ。横で聞いていた私の印象としては、西村記者が言っていることがストンと落ちないという感じでした。


私が感じた教室の空気は、学生たちに授業の感想を書いてもらったメモで裏付けられました。本人たちの許可を得て、その一部を紹介すると……。

上智大学の学生たち=西村宏治撮影

「授業で『成長』についてどう思うかと質問がありました。私は『さとり世代』であるため、期待をしないのではないかと思いました」(3年生の益子美琴さん)


成長すれば、パイが拡大して皆が恩恵を受けられる、という説明にも、違和感を抱いた学生が複数いました。


「経済成長、豊かさの概念という議論は、いわゆる金持ちの富裕層の間でなされる議論のように感じます。パイが大きくなった方が一人あたりの分け合う量が増える、とメディアが伝えても、それは一定水準以上の人にしか届きません」「経済的下層の人々は、どうせパイが大きくなっても富裕層のせしめる量が増えるだけ、と肌で感じるのではないでしょうか。豊かである人同士で『いったい豊かさとは?』と話すことも、世界の市場成長のためには不可欠だと思いますが、その枠からあふれてしまっている人たちのことも、取り上げる回があってもよいのかなと思います」(3年生の澤田機さん)


学生には、私たちが考えたタイトル案についても意見を聞きました。その中の案の一つについて、こんなコメントをもらいました。


「経済成長になじみのない私からすると、『うーん……』という感じでした」(丸本七海さん)

上智大学の学生たち=西村宏治撮影

経済成長になじみのない私。


これ、すごいフレーズだと思いました。衝撃すら受けました。


受講している学生の多くは3年生で、1996年前後に生まれています。学生たちが10歳のころ、日本のGDP成長率は1.4%。中学時代には米国発の世界金融危機の影響で、日本経済は2年連続のマイナス成長に陥ります。


一方、1975年生まれの西村記者が10歳だったころのGDP成長率は、6.3%。まだまだ成長を続けていた時代です。


「明日が今日よりも良くなる」時代に育った西村記者と、成長そのものを体験として知らない学生たち。お互いピンとこないのも、無理もありません。西村記者は取材チームのチャットで、こう書きました。


ただ、成長を知らずに生まれ育った学生たちが、成長と共に生きてきた上の世代と比べて、現状に不満を持っているかといえば、必ずしもそうは言えません。 むしろ、豊かな人生や社会のあり方について、違う尺度・価値観を持っている人が多いのでは、と感じています。


新しい世代の「豊かさのニューノーマル」とは。これから、大学生たちとの議論も紹介しながら、掘り下げていきたいと思います。


最後に、バナーにあるタイトル「とりあえずOK時代」は、3年生の上野澪さんが考えた案です。現状への肯定感と将来への漠然とした不安。彼らが生きる時代の空気をうまくとらえた言葉だと思い、使わせてもらいました。22日は衆院選挙の投開票日。若い世代の投票行動からも、いまの時代の豊かさをどう考えるかが、垣間見えるかもしれません。


(つづく)




「豊かさのニューノーマル」の取材陣はこちら。全員1970年代生まれの記者、みんなで悩み、議論しながら取材してゆきます。



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