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石炭との別れ方

[Part1]20年かけて備えた炭鉱閉鎖

ドイツNRW州にあるトリアネル社のリューネン石炭火力発電所は、2013年に発電を開始した。

Photo: Ishii Toru

欧米の国々では、急速に石炭離れが進んでいる。英国以外にも、フランスは2023年、カナダは30年に石炭火力発電の廃止を決めている。ただ、石炭と別れたいが、なかなか別れられない国もある。その一つが、ドイツだ。

 

温暖化対策に熱心なのに、いまだに質の悪い石炭である褐炭(リグナイト)を大量に使っていて、通常の石炭(ハードコール)と褐炭で発電量の4割を占める。いまのままでは、温室効果ガスの排出を1990年比で20年に40%、30年に55%削減するという国の目標も達成が難しいという。

 

それでも通常の石炭の坑内掘りは、来年で閉鎖されることが決まっている。ドイツ国内で最後の二つとなった坑内掘り炭鉱の一つに入った。

 

ドイツ西部のノルトラインウェストファーレン(NRW)州イッベンビューレン。鎖につかまると、大きな虫かごのようなエレベーターが急降下し始める。地下1230メートルの坑道に到着するまで約2分。子供のころにかいだちょっと薬臭くて香ばしい石炭の匂いがする。

 

案内してくれた炭鉱を運営するRAG財団の広報担当、ステファン・ヒラーマン(50)は、18歳から炭鉱で働いてきたという。「閉鎖が決まるまでは反対の声もありましたが、決まった以上は納得せざるを得ません。重要なのはどう終わらせるかです。私たちは長い時間をかけて準備をしてきました」

 

閉鎖が決まったのは07年だ。当時、国内8カ所の炭鉱で3万2000人が働き、イッベンビューレンには約3000人がいた。

 

従業員や家族のことを考えれば、急に閉めるわけにはいかない。10年間かけて、職業訓練や転職指導を進め、段階的に職員を減らしてきた。現在は約1000人が働いているが、来年以降は水没させた炭鉱の管理をする24人だけが残るという。

 

実は、炭鉱に将来性がないと見た財団は、すでに約20年前から鉱山技師の養成をやめていたという。代わりに金属加工など次の仕事を見つけやすい技術の習得に力を入れてきたそうだ。「解雇は一人も出しませんでした」とヒラーマンは胸を張った。


(文中敬称略)


(「手強いのは競争力のある褐炭」に続く)




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