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石炭との別れ方

[Part1]化石燃料の「終わりの始まり」

スコットランド国立炭鉱博物館の模擬坑道は地上にある。
Photo: Ishii Toru


化石燃料の「終わりの始まり」


脱石炭は、私たちのいまの社会を支えてきた化石燃料の「終わりの始まり」を意味する。

 

「化石燃料の時代が本当に終わるのだろうか」。2015年12月、国連気候変動会議(COP21)でパリ協定が採択された。私は不思議な気分で会場記者室のモニターを見ていた。

 

協定が掲げる「今世紀後半に世界の温室効果ガス排出を実質ゼロに」という目標は、石油や天然ガスも含めた、化石燃料との別れを意味する。中でも、まずは最もCO2排出量が多い石炭と別れなければならない。同じ熱量を得るために出すCO2の量を比べると、石炭を10とした場合、石油は7.5、天然ガスは5.5となる。

 

パリ協定は「世界の平均気温上昇を、産業革命前に比べて2度より十分低く保つ」と決めた。温暖化は、大量の石炭を使い出した産業革命から始まったということだ。

 

その産業革命を主導した英国はいち早く、石炭との別れを表明した。「25年までに石炭火力発電を全廃する」と発表したのは、パリ協定を決めたCOP21の直前だった。アンバー・ラッド・エネルギー気候変動担当相(当時)は、こんな声明を出した。

 

「石炭は数世紀にわたって私たちのエネルギーシステムで中心的な役割を果たしてきました。でも、最も炭素が多く、大気を汚染する。長期的には持続可能ではありません」

 

英国の電源構成に占める石炭の割合は、3年前には日本とほぼ同じ3割程度だったが、昨年は9.1%にまで減った。今年4月21日は、産業革命以来初めて、24時間、石炭による電気が使われない日になった。

 

最後の坑内掘り炭鉱となったケリングリー炭鉱は、パリ協定が採択されて約1週間後に閉鎖された。イングランド北部の都市リーズ近郊にあり、1970年代には約2500人が働いていたが、人影は消えた。現在も整地作業が続けられている。

 

閉山までここで働いていたトレバー・チャークレー(62)は、父に続いて16歳の時に炭鉱で働き出したという。いまは車で30分ほど離れたイングランド国立炭鉱博物館で、旧坑内を案内するツアーガイドをやっている。

 

「閉山によって、ある人は愛する仕事を失い、ある人は誇りを失い、コミュニティーは崩壊しました。私は幸い、ストレスのない新しい仕事を見つけることができましたが……。英国の地下にはまだ300年分の石炭が眠っていますが、再び炭鉱が開かれることはないでしょう」と彼は言った。


(文中敬称略)


(「悪者扱いに割り切れない思い」に続く)



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