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アトピーと生きる

[Part1]「完治の夢」は市場原理とともに

illustration:Nagasaki Kuniko

「米国で新薬が承認されたとニュースで知った。現地で治療を受けることも考えている」


認定NPO法人「日本アレルギー友の会」が5月に東京都内で開いた、皮膚科医と患者が集まった会でのこと。患者の一人が真剣な表情で訴えていた。


この「デュピルマブ」という新薬は、米国では今春から治療に使われている。臨床試験(治験)では、中程度から重度の患者の約4割で、皮膚に出る症状が完全に消えるか、ほとんどなくなった。米当局が「画期的治療薬」と評価したほどだ。


順調にいけば、日本でも来年前半には承認される見通しだ。米国行きには航空券代がかかり、薬代には保険もきかないだろう。それでも今すぐにでも行きたいと考える気持ちは、私にも分かった。


注目を集めている新薬はほかにもある。日本の中外製薬などが開発を進める「ネモリズマブ」だ。


今年3月に発表された臨床試験の結果では、中程度から重度の大人のアトピー患者の6割で、かゆみの程度が50%以上改善した。患者が寝付くまでの時間が短くなり、睡眠の質の改善が確認できた。



内部からかゆみを抑える

アトピーの治療は、薬を肌に塗って症状を緩和させる方法が主だった。対してこの二つの新薬は注射で体の中に入れ、炎症やかゆみに関わるインターロイキンというたんぱく質の働きを妨げるとされる。肌の表面からではなく、内部からかゆみなどを抑える効果が期待できる。


国内外の製薬会社は、注射薬のほかにも、塗り薬や飲み薬などの新薬開発に取り組んでいる。いくつかは5年前後で治療に使われる見込みだ。新生児の全身に保湿剤を毎日塗ることで、発症を抑える効果が高いとする研究結果も出ている。


新薬や研究の進展に期待が高まっている背景には、代表的な塗り薬「ステロイド」への賛否もある。日本でも外国でも、副作用を過度に恐れてステロイドを避けたがる患者がいるからだ。


アトピーは慢性病なので、効果が高い新薬が開発されれば患者はそれを長期間使いつづけることになる。そして先ほどみたように、患者は先進国だけでなく、新興国にも広がりつつある。製薬会社にとっては、新薬を売り込む「市場」が広がっているのだ。


研究が進み、そこに市場原理が加わって「完治の夢」がかなうかもしれない。そんな現代の姿を垣間見たような気がした。


(石原孝)

(文中敬称略)

「米国で『革命』が起きている」に続く)


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