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感染症との新たな戦い

[Part3]情報と備え、あらゆるレベルで




世界の感染症の現場から見えてきたのは、「都市化」と「貧富の差」が脅威を大きくしていることだ。道路網や航空網の発達で、かつては地域の限定的な病として終息していた感染症が大都市にすぐ到着する。西アフリカのエボラ出血熱は、首都で感染爆発を起こした。


そして病原体は、まず貧困層に襲いかかる。衛生状態が悪く、医療体制が脆く、人員も予算も不足している地域だ。ジカ熱取材で訪ねた小頭症児エロイージの自宅周辺は今も、下水が垂れ流され、蚊が容赦なく屋内に入ってくる。地元病院では検査が追いつかず、採取した血液を廃棄していた。


「健康への脅威は、いつでも、どこからでも発生しうる。その脅威は国境を識別したりはしない。次のパンデミック(世界的な大流行)がいつ起きるかはわからないが、緊急時の各国の対応能力の格差が世界にとって深刻な弱点となっていることは明らかだ」と、米CDCトップのアン・シュチャットは言う。現代の感染症対応は1国だけではできない。世界が知見と情報を共有し、連携することが不可欠になる。


戦前、物理学者の寺田寅彦は浅間山噴火について〈ものをこわがらな過ぎたり、こわがり過ぎたりするのはやさしいが、正当にこわがることはなかなかむつかしい〉と書き残した。有史以来、人類とともにあり、時に脅威となってきた感染症も同じだろう。


特に、未知のものに直面したとき人は不安をかき立てられる。大切なのは正確な情報と備えだ。政府や専門家は幅広く事態を想定して対策を考える。それをわかりやすく国民と共有することがさらに重要だ。


「自国第一」の潮流が世界に広がっているが、感染症に「対岸」はなくなりつつある。火事が起きた時、自国の備えとともに即座に消火に加わることが求められる時代だ。日本に貢献できる場面は多い。国外の危機対応に積極的に加わることは自国の社会をさらに鍛えることにもつながるはずだ。




取材にあたった記者



小川裕介(おがわ・ゆうすけ)

1982年生まれ。田川、柳井両支局長、西部報道センターなどを経て科学医療部記者。昨年まで警察担当でCDCの「病気の探偵」を追いかけたくなった。


村山祐介(むらやま・ゆうすけ)

1971年生まれ。アメリカ総局員、ドバイ支局長などを経てGLOBE記者。エボラ感染から回復後、患者の待つ病棟に戻った医療関係者たちの姿に感服した。


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