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フランスの果てへの旅

[Part1]遠藤乾×国末憲人(GLOBE編集長)前編


遠藤 今回の選挙には大きな命運がかかっていました。英国のEU離脱、トランプ政権誕生ときて、世論調査でルペンがトップを走るというリアルな文脈があった。そのままルペンが当選したら、EUはもちろん、国際協調というものが決定的なダメージを受けたでしょう。それを何とか土俵際で防いだのです。


国末 そのあたりの危機感が、どうやら市民に共有されていませんね。結局何も起きなかったことで「元々大したことなかった」との意識が支配的です。


遠藤 マクロンについて多くの人があら探しをするのも、その延長でしょう。違う結果だったらどうなっていたかが忘れられている。


国末 今回の主役はやはりルペンですね。


遠藤 ルペンが台頭した背景には、社会に蓄積した停滞感、不安感があります。「自分たちは忘れられている」といった意識も強い。つまり、経済社会的な不平等感と文化的な承認欲求があり、ルペンはその双方を利用したのです。

国末 確かに、物質的な要求だけではありません。「これでいいのか」という屈辱感。そこをルペンが問題にしていた。



極左伸長の謎


国末 極左のメランションもあわや決選進出かというほど支持を伸ばし、20%近く得票しました。ロシアのプーチン政権との連携など非現実的な主張にもかかわらずです。


遠藤 不平等を強調したことで、極右を支持できない若者を引き付けたと思います。本来は社会党支持なのに既成政党に不信感を抱く人々です。

国末 米民主党のサンダース旋風と共通しますね。インテリや学生が支持者の中心で、何らかの不満を表明したい人々。最後はマクロンだとしても、すんなりとは当選させたくない。違う動きを示して、単なる1票でなく色のついた1票を投じたい。


遠藤 その意味では、ルペン支持者の方が真摯(しんし)かもしれません。本気で怒っているのだなあとわかります。


国末 それに比べ、メランション支持者は本当に社会を変えたいのかどうか。


遠藤 変えたいと思っているのは支持者でなく、むしろ彼らを観察するメディアや研究者の側ではないですか。観察者が現状に飽き飽きして、ちゃぶ台返しを期待する。そこに一番の問題がある。デモクラシーは本来、急激な進歩や改良が望めない制度です。より少ない悪を選択するのがせいぜい。飛躍的に良くなることを望むと、判断を間違いかねません。


国末 つまり、民主主義は結構退屈だということですね。ポピュリズム支持の世論の背景には、平凡な日常に退屈して刺激を求める意識があります。硬直した社会を変革する引き金になるとも期待する。でも、EU離脱やトランプ政権を招いて「変化があった」と喜べるかどうか。


遠藤 フランス社会が変革を望むのでなく、その社会を観察する人たちが変化のないことにがっかりしているのでは。「マクロンみたいなのが当選しちゃって」という声の根もそこにある。



次ページへ続く


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