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心の筋トレ

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[Part2]「君の脳は鍛えられる」

チャディー・メン・タン

というわけで、やってきましたサンフランシスコに。シリコンバレーに近いこの街では2月中旬の4日間、マインドフルネスの世界的イベント「ウィズダム2.0」が開催されるのだ。幸い、会場でタン本人を捕まえることができた。


──マインドフルネスをやれば、?歳の僕でも「タラレバ思考」とおさらばできるんですか?


「もちろん。ちょっと実験してみようか。1回息を吸って吐くまでの間、自分のすべての注意力を、自分自身の呼吸に向けてみて」

(……約10秒経過。みなさんもやってみてください)


「どう? 気分が落ち着いたでしょう」


──うーん。ちょっとだけ……。


「これがすでにマインドフルネスの実践なんだ。後悔するには、自分の心を過去に飛ばす必要があるし、不安を感じるには、心を未来に向けなければならない。だけど、君自身の呼吸は『今、ここ』で起きていて、過去も未来も関係ない。だから、君は後悔や不安から解放され、落ち着きを取り戻せるんだ」


「心が過去や未来にさまよい出そうになったら、その都度注意を呼吸に戻せばいい。1回やるごとに、君の脳の注意力は鍛えられ、現在にとどまる能力は高まる」



心を扱うエンジニア


ここでちょっと話を戻すと、実は私はタンの運営する団体と提携する日本の一般社団法人「マインドフルリーダーシップインスティテュート(MiLI)」の指導を受け約1カ月間、初歩的なマインドフルネス瞑想を実践していた。


呼吸に注意を向けるという単調な作業を続けられるのか。半信半疑だったが、始めるとすぐに「意外と気楽にできるもんだな」と実感した。


瞑想をしていると「仕事の段取り、あれで良かったかな」「今日の昼飯、何食べようか」などと、しょーもない考えが次々と湧いてくる。それにはっと気づいて呼吸に注意を戻すと、雑念はすっと消えていく。「自分そのもの」と思っていた思考の大半は、呼吸に意識を向けるだけで消えてしまうはかないものに過ぎない──。それは新鮮な発見だった。


瞑想で雑念を処理しておくと、心にゆとりもでてくる。妻の言葉に過剰に反応することも減り、「話しやすくなった」と喜ばれたほどだ。


だけど、いくら呼吸に注意を向けても消えない「しつこいマイナスの雑念」も存在する。それこそが「タラレバ思考」なのだ。それにどう立ち向かえばよいのか。タンに突っ込んで聞いてみた。やりとりの詳細はウェブオリジナルの記事に書いたので、関心のある人は読んでみて欲しい。


タンの言葉からは「科学的根拠に基づきトレーニングすれば、心の大半の部分はコントロールできる」という強い信念が感じられた。まさに、心を扱うエンジニアだ。だけど、多くの日本人には「心は理屈では扱いきれないのでは」という思いも強いのではないか。


一方で、瞑想体験を通じて実感したのは「心が雑念に支配されていく様子は、ネットサーフィンにはまる過程とよく似ている」ということだった。どちらも、ちょっとしたきっかけで「考えても仕方ないこと」「調べても意味がないこと」に囚われて「心ここにあらず」となり、時間を忘れて没入し、ぐったりと疲れてしまう。


ネット世界の中枢にいるシリコンバレーの人々がそうした危険にいち早く気づき、その対策としてマインドフルネスに着目したとしても不思議ではない。



(太田啓之)

(文中敬称略)

「『つながり』にしおれる」に続く)


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