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韓国のあした

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[Part4]新しいモノ好きが韓国を救う?



韓国のスターバックスはアプリから注文

私は2005年から3年、ソウル特派員を務めた。そのころ携帯電話は日本でいうガラケーだったが、街角や観光地で、女性やカップルがレンズを自分に向けて撮っていた。当時は「自意識過剰な人たちだなあ」と思ったものだ。


知人のほとんどが「サイワールド」というインターネットサイトで互いにつながり、仮想通貨も流通していた。カフェでは、1杯分を支払うにもクレジットカードを使っている人が多かった──。


いずれも今、世界で日常の風景になりつつある。


韓国が最先端だったと褒めそやしたいわけではない。結局、サイワールドはフェイスブックにはなれなかった。しかし新しいモノに飛びつき、とにかくやってみる。それは一つの武器にもなりえる。


韓国のスターバックスでは今、スマホのアプリで店の外から注文と支払いができる。コーヒーの濃さ、ミルクやクリームの量などの細かい注文もOK。スマホには「飲み物を作り始めました」「できあがりました」などのメッセージが届く。店に着いたら並ばずに商品を受け取ることができる。




起業家を育む別の「生態系」


「売り上げの1割ほどがアプリ利用です」。開発したスターバックス・コリアのソ・ギョンジョン(47)はこう話す。オフィス街の店のお昼の時間帯だと、この割合は5割近くに達する。


世界のスターバックスで、アプリの開発・導入は韓国が初めてだった。きっかけになったのは、スターバックスの長い列に一緒に並んでいた社長から言われた一言だ。「この行列なんとかならんか?」


新しいモノに適応することは変化することでもある。そういえば、今回の取材では日韓両国の専門家から「日本と比べて韓国は変わることを恐れない」という話を何度も聞いた。


米グーグルは15年、ソウルの中心部「江南(カンナム)」に、起業家を育てる施設「キャンパス・ソウル」をつくった。英ロンドンやイスラエルのテルアビブにつくったが、アジアでは韓国が初。代表のジェフリー・リムは「モバイル時代にあって韓国は世界の起業家が製品やサービスを簡単にテストできる中心地になりつつある」と言う。組織が硬直化してイノベーションを起こせない財閥が根を張る一方で、韓国には起業家を育む別の「生態系」もありそうだ。



変わってこそ 大きくなってこそ


日韓のIT企業に勤めた経験のある東京工業大学の特任准教授、李中淳(58)は韓国の新しいモノ好きは競争心の表れだとみる。「新しいものに速く適応すれば勝つ。負ければ生き残れない。そんな考え方を持っています」


大げさに言えば韓国には日本のような「老舗(しにせ)」はない。一つの商売でもうければ、その店を売り、それを元手に次の事業にステップアップする。変わってこそ、特に大きくなってこそ社会から認められるからだ。韓国の人に、日本では例えば「和菓子一筋100年」の店が尊ばれると話しても、心にストンとは落ちないだろう。


優劣とか良し悪しの話ではないのだと思う。日本は変化に乏しいかもしれないが、伝統には深みが出る。


韓国は、長い時間をかけて作りあげることが苦手かもしれない。ただ、閉塞感の漂う今日からあしたへと一歩を踏み出せば、社会がダイナミックに変化する可能性は秘めている。





神谷毅(かみや・たけし)

1972年生まれ。経済部などを経てGLOBE副編集長。韓国では好物のキムチチゲ

を腹いっぱい食べた。熟成するほど深みを増すのは、食べ物だけではないと思う。 

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