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韓国のあした

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[Part1]根を張る財閥

photo:Lee Kyungiun

10年後、20年後という未来からみれば、今が韓国経済の分かれ道だったと言われるかもしれない。


最大財閥サムスングループの事実上のトップ、李在鎔(イ・ジェヨン、48)は前大統領・朴槿恵の知人らへの贈賄などの罪で2月末に起訴された。


捜査を担う特別検察官の事務所に出頭したときのことだ。韓国では大きな事件や有名人の容疑者が警察署などに行くとき、メディアにさらされる。李も例外ではない。彼は収監者が着る服ではなく私服を選び、コートの袖で手錠を隠した。ただ、腰に巻かれた縄は隠しようもなかった。


一部始終を多くの市民が遠巻きにスマホで撮っていた。彼らの心の内を推しはかるには、まず韓国におけるサムスンの大きさを知る必要がある。


▽売上高は国の予算の5割を超える

▽国の法人税収の約1割を占める

▽大卒の約4割が入社試験を受ける


こんな企業が日本にあるだろうか?


サムスンだけではない。現代自動車、LG、ロッテなど上位5企業グループの純利益は、上位30グループの9割超を占めるという調査もある。韓国は「財閥の国」なのだ。



開発独裁といわれる手法


世界の空港にサムスンやLGのテレビが置かれている。韓国の人たちのプライドをくすぐってやまない光景だ。一方、財閥一族の別世界のような暮らしぶりは、広がり続ける格差の象徴に映る。


「韓流」ドラマには必ずといっていいほど財閥の御曹司が登場し、悲喜劇が繰り広げられる。別世界をのぞいてみたい人たちのあこがれと嫉みの感情に刺さるからだ。李の出頭の様子をスマホで撮っていた人たちも、そんな「ドラマ」を見る心情だったのではないか。


韓国近代化の牽引役は財閥だった。朴槿恵の父、大統領だった朴正熙は少ないお金と資源を効率的に使って成長を遂げようと、少数の企業人を選んで事業を助けた。こうした開発独裁といわれる手法で「圧縮成長」を果たした。


そこで選ばれた現代の鄭周永(チョン・ジュヨン)やサムスンの李秉喆(イ・ビョンチョル)ら財閥の創業者は起業家精神にあふれ、政経癒着を批判されながらも国との関係を利用して財閥を大きくした。


1997年には通貨危機に見舞われる。それでもサムスンはデジタル化の波に乗り、半導体や携帯電話でグローバル企業になった。




「3世」の時代


多くの財閥の創業家にとって、いまは「2世」から「3世」が経営権を世襲しようというさなかだ。逮捕されたサムスンの李も3世。財閥の内情に詳しいある経済専門家は「世襲の法的なハードルを乗りこえたいサムスン、法律に目をつむり利益を得ようとした大統領周辺という『大きな絵』が事件の背景にある」とみる。財閥一族が世襲を果たすために、政権の「配慮」を求めていたという分析だ。


サムスンをはじめとする財閥は先を行く国々を追いかけて成長してきた。だが今や中国に追われ、追い抜かれた分野もある。


生き残りのカギは「イノベーション」にあるはずだが、財閥はイノベーションに不向きのようだ。財閥を研究し多くの一族や幹部と会っている漢城大学教授のキム・サンジョ(54)は「かつての王家のように財閥一族を守るようになり組織が硬直化した。そんな組織からイノベーションを生み出すのは難しい」とみる。


キムは「3世」の時代となりつつあることが財閥の力を弱めているとも語る。「創業者には起業家精神があった。2世は苦しい時代を知りつつ、親を超えようと親が育てた以外の事業に挑んで財閥を大きくした。だが3世は生まれながら『王国』という温室で育ち、チャレンジ精神を失ってしまった。実はこれが韓国経済にとって最も大きなリスクなのかもしれない」


(神谷毅)

(文中敬称略)

「儒教で読み解いてみる」に続く)


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