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韓国のあした

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[Part3]人生をイノベーション




日本人に米国や欧州に転勤してほしいと言うと、「考えさせてください」と答えることが多い。行き先が東南アジアだと「行きません」。韓国人ならどこであろうが一発で「OK」だ。そう話すのは、デロイト トーマツ コンサルティングで副社長を務めるソン・スヨン(53)。


「日本の若者にハングリー精神がないのではありません。韓国より就職活動が厳しくなく選択肢も多いのでキャリアを考える余裕があるのです」。ソンはかつて、サムスン全体をコントロールする「参謀組織」にもいて世界を駆け回っていた。日本での駐在経験もある。そんな彼が日本と韓国の若い社員をみて気づいたことだ。


ソンは7年前、初の韓国人共同経営者としてこの会社に入った。彼の仕事ぶりを知った韓国の大学生が会社に入り始め、今では2000人余りのコンサルタントのうち韓国人は40人を超える。最近は、韓国の政府系機関と組んで日本への就職支援も始めた。「韓国では大卒の半分ほどが就職できない。財閥に入れないと親の方が『就職浪人しろ!』と言うぐらい。韓国の若者が外国に出て必死に働くのは、高度成長していた自分たちの世代とあまり変わらない」


韓国は日本に比べて国内の市場が小さく、外国に飛び出して生きていくしかない面もある。とはいえ、外へと向かう生き方が彼らの人生に「イノベーション(革新)」をもたらしているように見える。




ソウル・シスターズ


アン・テヤン(31)は大学2年生だった2008年夏、フィリピンに渡った。「英語の勉強」と理由をつけたが、本当は違う。「親が離婚し米国に行くお金はない。親や親戚の期待は高いけど、要は先の見えない韓国から逃げたんです」


だが現地になじめず、数カ月後にストレスで倒れる。思い直して下手な英語で片っ端から話しかけて友達を作った。すると「韓流」ファンが多く、韓国の食べ物に関心が高いのに気づいた。


妹を呼び寄せ、金曜に開かれる夜市でトッポッキの屋台を出した。棒状の餅とキャベツなどをコチュジャンで甘辛く炒めた食べ物。用意した100人分のうち、初日に売れたのは2人分だけ。次の週は3人分。元手の400万ウォン(約40万円)はすぐに消えた。


韓流ファンをひきつけるには、どうしたらいいのか。この店に行って姉妹とおしゃべりすれば韓国を味わえるという「物語性」が売りになると気づいた。店名を「ソウル・シスターズ」に変えた。


半年後。長蛇の列ができ、1年半で8店に広げた。大手企業にスカウトされ、韓国料理チェーンの運営を任された。


その職を捨て、16年夏に韓国に戻った。「大手に移ったのは自分を成長させたかったから。そして韓国に戻り、より大きな市場で試してみたかった」。今は海外進出を考える食品企業のコンサルティングや講演に走り回っている。


(神谷毅)

(文中敬称略)

チャールズ・アームストロング教授のインタビューへ続く)



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