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韓国のあした

[Part2]軽やかに国を出て北欧へ



コペンハーゲンで暮らす写真家のヨ・ジヒョンさん

スウェーデンの首都ストックホルム。2月中旬の日曜の朝、弱い日差しの中を中心部から地図を片手に20分ほど歩いた。閑静な住宅街の建物にかかっていた水色の幕にはハングルで「ストックホルム韓人教会へようこそ」。階段を上ると2階から韓国語の賛美歌が聞こえてきた。1987年の開設。韓国出身者約100人が通うプロテスタントの教会だ。礼拝に参列する人の数は、この数年で2倍に増えたという。


北欧への移住を夢見る韓国人が増えている。


大手財閥LGで研究職だったイム・チャングォン(38)は2009年、会社を辞めてスウェーデンへ渡った。「忙しいときは週末も休めず、友達の結婚式にも出席できなかった。『月火水木金金金』で働いた。このまま韓国にいても未来はない、と思った」


イムは100人に1人という狭き門をくぐり抜けて、スウェーデンの大学院の博士課程に入学。電子工学の博士号を取って、スウェーデン政府が出資する研究機関に就職し、永住権も取った。


夕方5時には家に帰る。長期休暇は年に30日取れる。「韓国は24時間働き続けて製品を早く市場に出すことで成長を続けてきた。スウェーデンでは同僚も取引先も残業しないから、残業しても仕事にならない」と、イムは韓国にいた頃とは一変した生活の様子を説明した。



競争社会よりも社会福祉の充実した国へ


税金や社会保障の負担は重いが、教育や子どもの医療費は無料。払った分の恩恵は受けていると実感する。政権に近い一部の人物が税金を私物化している母国とは大違いだ、と彼は思う。今後もスウェーデンで暮らし続けるつもりだ。


韓国の人口は5062万。一方で、外国で暮らす韓国系住民の数は韓国外交部の「在外同胞現況(15年)」によると、計718万人にのぼる。


日本の植民地支配下では日本や中国へ。朝鮮戦争後は米国やカナダなど英語圏への移住が多かった。その傾向にこの数年、変化が生じている。韓国外交部によると、韓国から米国への移住を申告した人の数は10年の1万2447人から15年には2210人になった。一方で、ノルウェー、デンマーク、スウェーデン、フィンランドの北欧4カ国で暮らす韓国系住民の数は07年から15年にかけて、2123人から5016人へと倍増している。


こうした傾向は、韓国と同じ競争社会である米国よりも、社会福祉の充実した北欧にあこがれる世相を反映した面もあると見られている。




高いハードル


韓国で芸術系の名門大学、弘益大を卒業し、ソウルで韓紙を使った照明を作る工房に勤めていたパク・ソッキ(44)は4年前、スウェーデンに移住した。収入は減ったが、後悔はしていない。最大の理由は長男(10)の教育だ。「韓国では、隣の子を蹴落としてでも一番になろうと競い合う。スウェーデンは違う。テストの成績よりもグループで取り組む課題の成果が重視される。実際に社会に出れば、同僚と助け合いながらみんなで成果を出すことの方が重要ではないですか?」


ただ、北欧への移住は簡単ではない。ノルウェーの首都オスロに移住してエネルギー会社で働くキム・テフン(34)は、「北欧就職研究所」というウェブサイトを個人で開設し、就職相談を受け付ける。登録者は7000人を超えるが、情勢は厳しい。「地元企業に就職するためには、ノルウェー語などの現地語が必要。国際的な企業への就職は欧州連合(EU)出身の人が優先され、中国人やインド人とも競争になる。世界的な景気低迷で就職口は減る一方。ウェブサイトで相談を受けて、うまく就職できたと報告してくれた人は、まだ一人もいない」


(左古将規)

(文中敬称略)

「人生をイノベーション」へ続く)



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