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自閉症を旅する

[Part2]言葉は色を持つ




ダニエル・タメット
photo:Ohta Yasuo

パリのレストランでアスペルガー症候群の英国人作家、ダニエル・タメット(38)に会った。特定の分野で驚異的な才能を発揮する「サバン症候群(*4)」とされ、半生をつづった『ぼくには数字が風景に見える』(講談社文庫)などの著書がある。数字や言葉が色や質感を伴い、風景のように見える独特の感覚の持ち主で、複雑なかけ算や割り算の解答を瞬時にはじき出すほか、円周率の暗唱、アイスランド語を1週間で会話可能なレベルまで習得するなど、驚異的な能力を発揮する。


インタビューは英語だったが、普段はフランス語やアイスランド語を使うことも多いそうだ。「言葉に色や質感があることが言語の習得に役立っている」という。


では、私の名前の頭文字「Y」はどのように見えるのだろう?


「黄色でツルツルしています」


数字は?


「例えば181は光っていて長く、スプーンみたいに丸いものです」


昨年はチェスをテーマに初の小説『ミシェンカ』を書いた。囲碁の対局を描いた川端康成の『名人』に触発されたという。自分の体にぴたりとあうコートを見つけるように、しっくりくる美しい言葉を探しながら執筆する。「私が小説を発表することで、自閉症の人に小説が書けるはずがないという偏見がなくなればいい。私たちが生きやすい社会になるには偏見をなくすことが大切だ」


幼少時、級友から話しかけられても、言葉は雑音のように頭の中を通り過ぎ、言葉のやり取りができなかった。それでからかわれたりいじめられたりした。


そんなつらい時代を家族が支えた。図書館で一人で過ごす毎日だったが、両親は「外で遊べ」と強いることはなかった。「そのままの自分を受け入れてくれた」。アスペルガーの診断は25歳のとき。他人と違うことの説明がつき「ハッピーだった」と言う。

自閉症の人は一般にコミュニケーションに課題を抱えるが、取材ではそんなそぶりは見せなかった。メニューを英訳してくれ、デザートに特大のメレンゲが運ばれてきた時は「雪だるまだ」と冗談を言い合った。高校卒業後、リトアニアで英語教師のボランティアをした経験や、最愛のパートナーとの生活を通じて、世界を広げていったという。


「息子さんは何歳ですか」。別れぎわ、尋ねられた。17歳だと言うと、「まだまだ成長します。父も私の成長を驚いていました」



(太田康夫)

(文中敬称略)

本編3へ続く


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