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国境を越える電力

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[Part4]脱原発のドイツ、送電網で壁




欧州大陸を網の目のように結ぶ長距離送電網。その中央に位置するドイツは、東電福島第一原発事故を機に「脱原発」に大きくかじを切ったものの、送電網の整備が追いつかず、苦境に立っている。


南部バイロイトにあるオランダとドイツの送電会社テネット。理事のレックス・ハートマン(60)はため息をついた。「フクシマで再生エネ導入の流れが一気に加速したが、発電所は5年で建っても送電線には15年かかる。スピードが違いすぎる」


ドイツは、再生エネの割合を「2050年に80%以上」とする目標を掲げる。導入は順調に進み、16年の再生エネの割合は過去最高の32.3%に達した。


しかし、風況のよい北部に風力発電所ができる一方、主要産業が集まる南部や西部で原発が停止して電力不足になった。電気を北から南に送ればよいのだが、送電線の容量が足りないのだ。


交流の送電網では、電気は電圧が低い方へ水のように流れていく。当初は、南部に直接送れなかった大量の電気がポーランドやチェコなど東欧諸国の送電網をぐるっと勝手に経由して、再びドイツ南部に流れ込む「ループフロー」と呼ばれる現象が頻発した。



需給バランス崩れると大規模停電


電気は需要と供給のバランスが崩れると大規模停電を起こしてしまう。やりくりを迫られて堪忍袋の緒が切れた4カ国は12年、「ドイツの南北送電が周辺国を脅かしている」と非難し、国際問題となった。ドイツはいま、ポーランドとチェコに電力が流れ出さないよう、国境近くに電流をせき止める設備をつくってしのぐ。


国内では、電気がだぶつく北部で風力発電所に補償金を払って発電をやめてもらう一方、足りない南部では逆に、お金を払って温室効果ガスを出す石炭火力発電所などを稼働させてつじつまを合わせている。連邦ネットワーク庁によると、15年にかかった費用は4億1200万ユーロ(約500億円)と前年の倍以上に膨らんだ。負担するのは電気利用者だ。


世論は、脱原発や再生エネ導入の大方針には賛成しているが、送電線が自分の「裏庭」にできるとなると、話は別だ。景観が台無しになるなどとして地元住民の反対が続き、バイエルン州知事は14年、高架送電網計画の凍結を主張。約700キロを全面地中化する方向で計画を練り直すことになった。費用は倍増する見込みで、「脱原発」が完了する22年には間に合わなくなった。


南部に送れない電気を海底送電線で北欧に送る計画や、余った電気をガスに変えて貯蔵する技術開発も進めるが、即効薬は見当たらない。


(村山祐介)

(文中敬称略)

本編2へ続く







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